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【2022】医療機関が使える補助金は?受給までの流れと活用可能な補助金一覧

医療機関向けの補助金

厚生労働省の発表によると、病院の2020年度の損益率(収入に対する利益の割合)は民間、国立、効率など全体の加重平均で1.2%の黒字であり、20219年度の2.0%より改善したようです。ただし、黒字になった理由はコロナ関連の補助金を受給できたからであり、補助金を除いた損益率は全体でマイナス5.6%の赤字だったとのことで、補助金頼みの病院経営となっている現状があります。

2022年に入ってもオミクロン株の蔓延により、患者の受診控えや手術件数の減少の可能性があり、補助金に頼らざるを得ない経営状態が続くかもしれません。

そこでこの記事では、補助金制度の概要や申請から受給までの流れ、医療機関が活用できる補助金一覧など、補助金に関する情報を網羅的に解説していきます。お伝えする内容をぜひ参考にして補助金申請にチャレンジし、コロナ禍に負けない経営環境を築いてください。

補助金とは

補助金とは、国や地方自治体が掲げる政策や事業を進めるため、それらの内容に沿った事業に取組む事業者をサポートするために資金の一部を支給する制度です。主に国や地方自治体が管轄するもので、「事業拡大」や「設備投資」などの活動の支援のために支給されます。

補助金が支給されることで国や地方自治体の政策が推進され、その効果を大きくしていくことが目的とされています。補助金の特徴として、以下の5つが挙げられます。

  • 返済が不要
  • 対象経費が決まっている
  • 審査がある
  • 全額が補助されない場合がある
  • 後払いが原則

返済が不要

補助金制度の最大の特徴が、返済が不要という点です。

日本政策金融公庫や銀行などの金融機関からの借入は、利子を加算して返済しなければいけません。その点、補助金は返済する必要のないお金ですから、これまで資金難を理由に挑戦できずにいた事業に取り組みやすくなり、事業拡大や売上回復につなげることができます。

対象経費が決まっている

補助金制度には、補助金ごとに対象となる経費があらかじめ決められています。支出した費用のすべてが対象となるわけではないため、自己資金で賄う費用が発生する場合もあり得ます。

それぞれの補助金の募集要項には、補助対象となる経費や補助の割合、支給される金額(補助金額)の上限などが記載されていますので、事前に確認しておきましょう。

審査がある

補助金を受給するためには、補助金の事務局による審査を通過(採択)する必要があります。申請する資格があっても、受給できない可能性があるのです。

全額が補助されない場合がある

審査には、「事前の審査」と「事後の検査」があります。事前の審査を通過したとしても、補助事業完了後に提出する必要書類(補助事業実施後に成果や収支実績などをまとめたもの)の内容によっては、補助金が減額されるなどの措置が取られる場合もあるのです。

後払いが原則

補助金制度の多くは、後払いが原則です。補助金を受給できるのは、補助事業完了後の検査を経た後です。受給した補助金で補助事業を開始するわけではないことに注意が必要です。

補助金は補助事業完了後に受給することができるので、補助事業に必要な設備投資費用やサービス利用料等は、いったん立て替える必要があります。また、補助事業中の運転資金も自身で賄わなければなりませんので、補助事業に入る前に資金繰りについても計画を立てておくと良いでしょう。

補助金を受給するまでの流れ

続いて、補助金の申請をしてから受給するまでの一連の流れについて解説します。補助金の申請から受給までは、一般的に次のような順番で進みます。

  • 申請可能な補助金制度を探す
  • 申請をする
  • 採択される
  • 補助事業を開始する
  • 補助事業終了後に実績報告をする
  • 補助金を受給する

申請可能な補助金制度を探す

補助金は、国や地方自治体が政策や目標ごとに、さまざまな分野で募集が行われます。それぞれ目的や仕組みが異なりますので、医療機関とマッチする補助金を探しましょう。

申請をする

申請したい補助金が見つかったら、公募要領を確認の上、費用書類一式を揃えて、事務局に提出し申請します。以前は書面による提出が多かったですが、最近では「jGrant(Jグランツ)」というシステムを使った電子申請が主流になっています。

補助金の申請で意識しておきたいのが、事業計画書は時間をかけて作り込む必要があるという点です。

補助金の審査は申請書類、主に事業計画書をもとに行われます。ですから、事業計画書の作成には時間と手間がかかっても、より良いものを作成しなければならないのです。

事業計画書の内容については、「データに間違いはないか」「誰が読んでも理解できるか」という点を意識して作成することが必要です。そのために、「専門用語を使いすぎない」「図や表など資格的に伝わりやすい資料を添付する」などの工夫をすると良いでしょう。

採択される

無事に審査を通過(採択)したら、事務局から連絡があります。採択後は補助金を受け取るための手続き(交付申請)が必要となり、その内容が認められる(交付決定)と補助事業を開始できます。採択されたら補助事業を開始できるというわけではないことに注意しましょう。

補助事業を開始する

策定した事業計画をもとに補助事業を開始します。実施後に事業内容の変更が生じた場合は、事前に所定の手続きを取ることで変更が可能です。

また、補助事業開始後に事業が問題なく進んでいるかなどの確認のため、事務局による中間審査(監査)や状況報告が行われる場合があります。

補助事業終了後に実績報告をする

補助事業が完了したら、その成果や効果を報告書にまとめて事務所に報告します。その際には、補助金の対象となる経費について支払い実績のわかる領収書や契約書等の証拠書類も提出する必要があるため、それらの書類はしっかりと保管しておきましょう。

補助金を受給する

実績報告の内容が検査され、事業計画に沿った内容で正しく実施されたことが確認されると、補助金額が確定し、補助金の支払いが行われます。

ちなみに、補助金の対象経費となった領収書などの書類は、補助事業の終了後5年間の保管義務があります。誤って廃棄しないように気をつけてください。

また、定期的に事業の状況報告や収益納付が必要な場合がありますので、補助金受給後も当初の事業計画に沿った事業運営を徹底しましょう。

医療機関が活用できる補助金一覧

ここからは、実際に医療機関が活用できる補助金を5つ紹介します。

  • 新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関緊急支援事業補助金
  • 看護職員等処遇改善事業補助金
  • 事業再構築補助金
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • IT導入補助金
  • 新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関緊急支援事業補助金

新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関緊急支援事業補助金とは、新型コロナ患者の病床と人員を確保するため、新型コロナ患者の即応病床を割り当てられた医療機関に対して、新型コロナ対応を行う医療従事者を支援して受入体制を強化するためのサポートをする補助金事業です。

対象経費は、新型コロナウイルス患者の対応を行う医療従事者の人件費や、賃金・光熱水費・備品購入費など、新型コロナウイルス患者の受け入れに係る費用全般です、

補助金額は1床あたり4,500円と定められていますが、補助対象となる病床数には規定で上限が決められています。

新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関緊急支援事業補助金は対象者が限られているため、申請に際して懸念点が出てくるかと思います。まずは厚生労働省の該当ページを確認し、専門のコールセンターへ問い合わせてみましょう。

看護職員等処遇改善事業補助金

看護職員等処遇改善事業補助金とは、令和3年11月19日に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に基づき、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を1%程度(月額4,000円)引き上げるための措置を、令和4年2月から前倒しで実施するために必要な経費を都道府県に交付する制度です。

対象となる職種は看護師、准看護師、保健師、助産師などの看護職員です。ただし、看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルも医療機関の判断によっては対象となります。

申請・交付スケジュールは令和4年4月から受付、6月から補助金の交付が開始されますので、厚生労働省の該当ページを確認の上、事前に準備を進めておきましょう。

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、コロナ禍での売上減少を受け、新分野へ進出したり業種を転換したりするなどの思い切った事業再構築にチャレンジする中小企業等をサポートする補助金制度です。法律上収益業務はできないため通常の医療法人は事業再構築補助金の対象外ですが、公益性の高い医療を担う社会医療法人や個人開業医は対象となります。

事業再構築補助金は予算規模が大きいことが特徴で、令和4年度は6,123億円が計上されています。後ほど紹介するものづくり補助金の予算規模が2,001億円ですので、いかに突出しているかがわかります。

補助金額は通常枠で100万円から最大8,000万円に設定されており、予算規模同様に高額です。

医療機関関連の採択結果の一部を紹介しましょう。事業再構築補助金において、どのような取組みが採択されているのか確認してみてください。

  • 健康増進とフレイル予防を導くオーラルヘルス+セルフケアサービス事業
  • 医師の知見と指導で在宅太りを解消する瘦身サービスの構築
  • シニア世代への口腔内治療と人生の最後までのメインテナンスに特化した歯科医院への業態転換
  • 歯根データを活用した革新的マウスピース矯正治療の導入
  • 歯科医療業でのノウハウを活かしたデンタルエステ事業への新展開

なお、事業再構築補助金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

ものづくり補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)は、今後複数年にわたって相次いで直面する働き方改革やインボイス導入等の制度変更に対応するため、中層企業や個人事業主が取り組む革新的サービスや試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等をサポートする補助金制度です。

医療法人はものづくり補助金の対象外ですが、個人開業のクリニックや歯科医院は対象となっています。実際に採択結果を見てみると、個人経営の歯科医院や動物病院の採択事例が多く見受けられます。

採択結果の一部を紹介しましょう。

  • 最新型動物用MRI導入によるCTと連携した県内初の高精度検査サービスの実施
  • 「噛み合わせ」を意識した治療の徹底と対人接触機会の減少を目的としたCAD/CAM設備一式導入
  • たった1日で白い人工歯を使った治療が完了する革新的歯科サービスの開発
  • 口腔内スキャナの導入によるデジタル化による患者様の負担軽減と感染対策、質の高い診断・治療の提供
  • インプラント新治療法の実践とリモート連携強化を実現する治療プロセスの構築

ものづくり補助金にはいくつかの申請枠が設けられていますが、多くの個人クリニックや歯科医院が該当する通常枠の場合、750万円から1,250万円(従業員数により変動)の補助金を受給できます。採択事例で紹介したように高額な機器の購入費が対象経費となるため、設備投資を検討中であれば申請を検討するべき補助金制度です。

なお、ものづくり補助金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や個人事業主がITツールの導入費用をサポートしてくれる補助金制度です。

事業再構築補助金やものづくり補助金では、医療法人は補助の対象外となっていました。その点、IT導入補助金では補助対象になっています(常時使用する従業員の数が300人以下という制限あり)。もちろん、個人開業医は対象です。

医療分野では、患者の管理や訪問診療への対応、会計業務にかかる時間の削減のために、電子カルテやレセプト管理、会計業務の効率化に対応するITツールを導入するケースが多く見受けられます。

令和4年度のIT導入補助金の補助金額は、ITツールが350万円まで、PC・タブレットが10万円、レジ等が20万円となっています。

なお、IT導入補助金についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

各自治体の補助金

ここまで国が主導する補助金制度を紹介してきましたが、全国の自治体が実施する補助金制度も活用することができます。補助金額こそ国の主導する補助金に比べて小さいものの、自治体とのやり取りがスムーズだったり、補助金支払いまでの期間が短かったりと補助金を申請するメリットが多いからです。

自治体が実施する補助金については、自治体ごとに申請要件が異なりますので、まずは「どんな補助金制度があるのか」や「申請要件に合致しているか」などをお住まいの地域の自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

補助金を活用する際の注意点

最後に、補助金を活用する際の注意点をお伝えします。

支出の時期に注意する

補助金では、補助事業の期間を定めることが一般的です。その補助事業期間に支出した経費以外は経費として認められず、補助を受けられない場合があります。たとえば、事業期間が6月1日から11月30日だとしたら、5月31日以前や12月1日以降に支出したものは補助を受けられないということです。

補助事業完了後の支出はほぼないと思いますが、採択後から交付決定の間に設備投資したりサービスの利用を始めたりしないよう注意しましょう。

補助事業終了後の事務処理を必ず行う

補助金の流れを説明する際にもお伝えしたように、補助金を受給するためには補助事業完了後に実績報告書を提出し、その内容を認められなければなりません。

その際の実績報告書をいい加減に作ったり、事業計画書にない経費を支出していたりすると、補助金の支払い拒否や補助金額の減額措置が取られます。補助事業終了後の事務処理は適正に行いましょう。

まとめ

補助金関連の情報と、医療機関で活用したい補助金制度について解説しました。

冒頭でお伝えしたように、多くの医療機関が補助金頼みの経営になっている現状があります。しかし、コロナ禍が契機となり促進された国や地方自治体の補助金事業をうまく活用することで、事業を軌道に乗せることができるはずです。

初めて補助金の申請をする場合などは、専門家や認定支援期間に相談するのも有効な手段です。専門家に相談することで自社の事業に合った補助金制度が見つかったり、申請書作成のサポートをしてもらえたりと、補助金受給までスムーズに進められます。

補助金申請の専門家が多数在籍している当サイト「補助金バンク」も、補助金についてご相談を受け付けています。相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人
野竿 健悟
この記事を書いた人
野竿 健悟
株式会社トライズコンサルティング 代表取締役 中小企業診断士
補助金に精通しており、自ら申請をご支援し、高採択率の実績を持つ。元システムエンジニアであり、知見を活かしたシステム開発の補助金申請の支援実績多数。

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