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【2022】農業に活用できる補助金は?メリットと押さえておきたいポイント

農業向け補助金

国や地方自治体が農業経営者向けに実施している補助金制度は数多くあります。補助金は経営発展を目指す際に活用したい制度ですが、補助金に馴染みのない農業者にとっては「農業に活用できる補助金はある?」「補助金はどんなものに使える?」「補助金はどうすればもらえる?」といった疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。

そこで今回は、補助金の概要や活用するメリットの解説、そして農業者が活用すべき補助金制度の紹介まで網羅的にお伝えします。補助金の利用を検討している農業者の方にとって参考になる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

補助金とは

補助金とは、国や地方公共団体が策定した政策目的に沿った事業を行う企業や個人に対して、資金面でサポートするために給付されるお金のことです。まずは、補助金の概要について紹介します。

助成金との違い

補助金と似た制度に「助成金」があります。

補助金と助成金の最も大きな違いは、補助金は受給するために審査を受ける必要がありますが、助成金は申請要件さえ満たしていれば受給できる点です。補助金に比べて受給できる金額は小さいものの、申請要件さえ満たせば受給できる点は大きなメリットといえます。

項目 補助金 助成金
管轄 経済産業省 厚生労働省
目的 事業の継続・促進 雇用促進・人材育成
補助金額 数十万円〜(助成金より大きい) 数十万円〜数百万円(補助金より小さい)
審査 あり。要件を満たしていても採択されない可能性がある。 なし。要件を満たしていれば、受給できる可能性が高い。
公募期間 短期間(1週間〜3ヶ月程度) 長期間(通年)

交付金・給付金との違い

助成金の他にも、「交付金」や「給付金」といった国や自治体から金銭が交付されるされる制度があります。

交付金は、補助金と同じように国や地方自治体が特定の目的を持って企業や団体に金銭を支給する制度です。助成金と同じく審査はなく、申請要件を満たしていれば受給できます。補助金は補助事業の完遂のために必要となる経費の何割かが支給されるのに対し、交付金は申請が受理されれば基本的に満額受給できる点が大きな違いです。

一方の給付金は、特定の目的は定義されておらず、補助金や助成金以外の広義な目的に使用されることが多い制度です。給付金も交付金と同様に審査はなく、申請要件を満たしていれば受給できます。

給付金は主に緊急事態の際に設けられ、補助金が企業は個人事業主を対象にしているのに対し、給付金は一般の国民も支給対象となることがあります。

目的と申請要件が決まっている

冒頭でもお伝えしたように、数多くの補助金制度が実施されていますが、各補助金にはそれぞれ目的や主旨が定められており、その目的等に応じた事業の全部または一部の費用が支給されるシステムとなっています。

また、それぞれの目的に従った申請要件が設定されているため、その要件に合致しない場合には申請することができません。

対象となる経費が決まっている

補助金は、対象となる経費(使い道)が決まっています。購入した機械設備や導入したサービスのすべてが補助の対象となるわけではないため、支出する前にどういったものが対象となるのかしっかりと確認しておく必要があります。

審査がある

補助金を受給するためには、補助金事務局の実施する審査を通過(採択)されなければなりません。

先ほど紹介した「助成金」は、申請要件さえ満たせば受給できるのに対し、補助金は申請要件を満たしても受給できない場合があるのです。

採択率は補助金によって数%から90%程度まで幅がありますし、同じ補助金でも公募回数によって差が見られる場合があります。補助金を確実に受給するためのポイントは最後に詳しくお伝えしますので、参考にしてください。

返金が不要

日本政策金融公庫や金融機関からの借り入れの場合は、借入金に利子を加えて返済しなければなりません。万が一事業が失敗した場合でも返済を続けなければならないため、資金面の問題は新規事業への取り組みに二の足を踏ませる大きな要因です。

その点、補助金は返済する必要がないため、これまで資金面の問題でチャレンジできなかった新規事業への取り組む心理的ハードルはかなり低くなるはずです。

後払い

補助金を受け取れるのは、補助事業が完了し、事業が適正であったと事務局から認められた後です。つまり、設備機器やサービスの購入費や補助事業中の運転資金については、いったん自身で建て替えなければなりません。

ですから、資金繰りについてしっかりと計画を立てる必要があります。補助金頼みの事業計画にならないよう注意しましょう。

補助金を活用するメリット

お金を受給できる以外にも、補助金制度は活用することで受けられるメリットがあります。主なメリットは次の3つです。

  • 今後の事業方針が明確になる
  • 思い切った投資ができる
  • 金融機関とのパイプができる

今後の事業方針が明確になる

補助金を受給するためには、その補助金制度の目的に沿った事業計画を策定する必要があります。「自社の強みを活かせる事業は何か」「どれくらいの期間で完遂できるか」「資金繰りをどうするか」などの多くのポイントを基に事業計画を練り込んでいくので、その過程で自社の今後の事業方針が明確になっていくのです。

事業方針が明確になれば、資金も人的資本もそこに注力することができるので、収益が伸びやすくなるはずです。

思い切った投資ができる

多くの農業経営者や個人農家は経営資源が限られているので、新たな事業を始めたいと考えていても資金の問題で二の足を踏んでしまうこともあるでしょう。しかし、補助金が活用できれば、万が一思ったような成果が得られない場合でも支出した経費の一部は戻ってくるので、新規事業にチャレンジしようとする心理的なハードルはかなり下がるはずです。

チャレンジしないと失敗することはありませんが、成功することもありません。補助金を活用することで、成功の第一歩を踏み出しやすくなるのです。

金融機関とのパイプができる

補助金が受給できるということは、提出した事業計画が国や地方自治体が定めている基準をクリアし、認められたということです。いわば、国や地方公共団体からお墨付きをもらえた状態ですので、対外的な信頼度は上がります。信頼度が高まることで、金融機関からの融資も受けやすくなるのです。

補助金は補助事業が終わった後の後払いですので、補助事業を実施している間の運転資金が必要になることもあるでしょう。そのような場合に、金融機関から運転資金を借り入れ、その後しっかりと返済していくことで、金融機関とのパイプができていくはずです。

農業で活用したい補助金一覧

それでは、ここからは農業分野で活用したい補助金を5つ紹介していきましょう。それぞれの補助金の目的や特徴を解説しますので、ご自分のニーズに合った補助金を見つけてみてください。

  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金
  • 自治体独自の補助金

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新分野の事業を始めたり、主となる事業の業種を転換したり、思い切った事業の再構築にチャレンジする中小企業や個人事業主を支援する補助金制度です。新型コロナウイルスによって売り上げが減少した事業者の、事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等への取り組みが対象となります。

農業分野で対象となる経費は、農作物の加工や農作物を利用した料理の提供などの、二次・三次産業分野で必要となる設備費です。単に農作物を植えたり収穫したりするための機械設備や、農作物を生産すること自体は一次産業と見なされ、事業再構築補助金の対象外となるため注意が必要です。

補助金額

事業再構築補助金の補助金額は最大1.5億円で、他の補助金制度と比べて高額に設定されています。

企業の種類 応募枠 従業員数 上限額 補助率
中小企業または中堅企業 通常枠 20人以下 100万円〜2,000万円 中小企業:2/3(6,000万円超は1/2)

中堅企業等:1/2(4,000万円超は1/3)

21〜50人 100万円〜4,000万円
51人〜100人 100万円〜6,000万円
101人以上 100万円〜8,000万円
回復・再生応援枠(新設)・最低賃金枠 5人以下 100万円〜500万円 中小企業者等:3/4

中堅企業等:2/3

6〜20人 100万円〜1,000万円
21人以上 100万円〜1,500万円
大規模賃金引上げ枠 101人以上 8,000万円超〜1億円 中小企業者等:2/3(6,000万円超は1/2)

中堅企業等:1/2(4,000万円超は1/3)

中小企業 グリーン成長枠(新設) 100万円〜1億円 1/2
中堅企業 100万円〜1.5億円 1/3

農業分野の採択事例

実際に採択された事例を見ることで、農業分野においてどのような取り組みが採択されやすいかの傾向をつかむことができます。直近の第4回の採択結果のうち、農業関連のものには、たとえば次のようなものがあります。

  • 稲作農業に工業を組み合わせることによる付加価値・競争力向上新事業
  • 地域資源の有効活用により有機肥料のペレット化とITを活用した農業生産サービスへの展開
  • 農業生産法人からドローンスクール運営への思い切った業種転換
  • 農業機械販売・修理業における経営資源を活用した「草刈機専門ショップ」開業計画
  • 介護×農業 野菜栽培を取り入れた新しいデイサービスのカタチ

これら以外にも、農業分野において採択された事例は多くあります。詳しくは事業再構築補助金の公式サイトで確認してみてください。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者補助金とは、小規模事業者(農業の場合、常時使用する従業員が20人以下)が対象で、チラシやホームページによる広告費や、新しい農業機材やドローンの購入などの機械装置費等の一部を補助してくれる制度です。

小規模事業者補助金の活用を検討するにあたって注意して欲しいのが、収入がJAを通じた販売のみの個人の農業従事者は対象にならないという点です。小規模事業者補助金を申請できる農業者は、下記に該当していなければいけません。

  • JA以外の道の駅や物産館などに農作物を卸している
  • インターネットや直売などで農作物を直接販売している
  • 個人で事業を行っていない

また、農事組合法人や農業協同組合も対象外となることには注意が必要です。

補助金額

小規模事業者持続化補助金の補助金額と補助率は次の表のとおりです。

応募枠 補助上限 補助率
通常枠 50万円 2/3
成長・分配強化枠 200万円 2/3(赤字事業者は3/4)
新陳代謝枠 200万円 2/3
インボイス枠 100万円 2/3

農業分野の採択事例

小規模事業者持続化補助金で採択された農業分野の取り組みには、たとえば次のものがあります。

  • 農業体験・宿泊強化とりんご・加工商品の販売による売上向上事業
  • スマート農業導入で生産性の向上と省力化でプレミアム葡萄開発
  • 世界基準のみかんの果皮を活用して持続可能な農業を実現する
  • 酒粕肥料でサスティナブルな農業と日本酒造りを目指す
  • いちご狩りから通販事業への転換

その他の採択事例は、小規模事業者持続化補助金の公式サイトで確認してみてください。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が今後直面する働き方改革やインボイス導入等の制度変更に対応するため、新サービスの開発や生産性の向上を行うための設備投資等を支援する補助金制度です。

正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、資本金3億円以下、または常時使用する従業員の数が300人以下となる法人や個人の農業者が対象です。ただし、農事組合法人や農業協同組合は対象外となることには注意してください。

補助金額

ものづくり補助金の補助金額と補助率は次の表のとおりです。

従業員規模 補助上限金額 補助率
第9回締切まで 第10回締切以降
5人以下 1,000万円以内 750万円以内

中小企業:1/2以内

小規模事業者、再生事業者:2/3以内

6人〜20人 1,000万円以内
21人以上 1,250万円以内

農業分野の採択事例

ものづくり補助金で採択された農業分野の取り組みには、次のようなものがあります。

  • AIによる最適生育環境自動学習型スマート農業システム
  • 農業用ドローンを活用した茶や梅に対応した革新的・農薬防除システムの確立
  • 最新の農耕設備導入により、有機農業の生産性向上、省力化を実現
  • 大型選別機導入により生産農家の負担を軽減し農業を次世代につなげる
  • 農業のスマート化・ゼロカーボン化に対応する灌水用自動加圧ポンプ・電源装置等の試作開発
  • 農業6次化、早生樹の炭化・健康食品事業化計画

ものづくり補助金の公式ページにある採択結果一覧を見ると、上記のとおりスマート農業機器や最新の農耕設備、また加工機械の導入による生産性の向上を目的とした事業計画が採択されている傾向が見て取れます。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、農業に限らずさまざまな業種を対象に、生産性の向上や生産管理または作業管理など、生産性の向上や付加価値向上につながるITツールの導入にかかる費用を支援する補助金制度です。対象となる農業者は資本金3億円以下または常時使用する従業員の数が300人以下の法人または個人です。

IT導入補助金の特徴として、ものづくり補助金や持続化補助金では対象外となる農事組合法人や農業協同組合組合ですが、IT導入補助金では対象となる点が挙げられます。補助の対象となる経費は、IT導入支援事業者によりあらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費(ソフトウェア費、導入関連費等)です。

補助金額

IT導入補助金には「通常枠(A・B類型)」と「デジタル化基盤導入枠」があり、それぞれの補助金額と補助率は次の表のとおりです。

令和3年度補正予算(デジタル化基盤導入枠)(2,001億円の内数)
類型名 デジタル化基盤導入類型 複数社連携IT導入類型
補助額 ITツール PC等 レジ等 a. デジタル化基盤導入類型の対象経費⇒左記と同様

b. それ以外の経費⇒補助上限額は50万円×参加事業者数、補助率は2/3(1事業あたりの補助上限額は、3,000万円((a)+(b))および事務費・専門家費)

~50万円以下 50万円超~350万円 ~10万円

~10万円

補助率 3/4 2/3 1/2
対象経費

ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料2年分)、ハードウェア購入費、導入関連費

【複数社連携IT導入類型のみ】事務費・専門家費

農業分野の採択事例

IT導入補助金で採択された農業分野の取り組みには、たとえば次のものがあります。

  • 農泊事業活性化のために予約システムを導入
  • loTを使って米作りの肝である水管理をセンシング&自動化

自治体独自の補助金

各地方自治体が、その地域の農業者に向けて運営している補助金制度も数多くあります。国の機関が支給する補助金に比べて補助金額は低い場合が多いですが、申請要件が緩かったり、支給までの期間が短かったりといった利点があり、活用しやすいという特徴があります。

また、自治体によっては補助金だけではなく助成金や交付金制度を設けている場合もありますので、お住まいの自治体に確認してみてください。

補助金を受給するためのポイント

補助金は審査を通過してはじめて受給できるものですが、その採択率は決して高くありません。この記事を読んでいる方の中にも、補助金の申請に難しさを感じて断念した方がいるかもしれません。

そのような方は、これから紹介するポイントを押さえておくことで、採択率を上げることができるはずです。

補助金情報にアンテナを張る

補助金の活用を検討中であれば、補助金関連の情報にアンテナを張っておきましょう。

補助金には数百以上の種類があり、補助金ごとに申請できる条件や分野が異なります。目にした補助金制度が「農業も対象となる補助金なのか」「補助金を農業にどのように活かせるのか」といったことをまず確認する必要があるのです。

補助金ごとに定められている審査要領には、その補助金制度の目的、どういった事業・経費が対象となるかなどの情報が記載されています。ですから、審査要領を読み込み、自社が申請基準を満たしているか、補助金を活用して新規事業を展開できそうかといった点をじっくりと検討してください。

また、補助金の特徴の一つに公募期間が短いという点が挙げられます。補助金には申請できる期間(公募期間)が定められており、その期間を過ぎて申請しても受け付けてもらえないのです。

補助金の公募期間は、おおむね3ヶ月から4ヶ月程度に設定されています。その間に申請要領を読み込み、事業計画の策定や事業スケジュールの検討、資金繰り等を検討しなければならないのです。

ですから公募期間は必ずチェックし、「気づいたら公募期間が過ぎていた」ということがないように気をつけましょう。

補助金申請のプロに相談する

短い公募期間で採択される事業計画を策定するのは、補助金申請に慣れていない方にとっては大変な作業です。初めて申請書を作成する場合は、わからないことや不安になることもあるでしょう。

そのような場合は、補助金申請の専門家に相談すると良いでしょう。専門家に相談することで、次のようなメリットを受けられるからです。

  • 事業計画書を作成する手間が省ける
  • 採択率が上がる

事業計画書を作成する手間が省ける

補助金によっては、A4用紙で10枚前後の事業計画書を作成しなければならない場合があります。専門家に相談した場合、サポートを受けられるため、申請書の完了までスムーズに進みます。

また、申請書の作成を専門家に任せたり、作成の時間を短縮したりすることで、自身の仕事に集中できる点も大きなメリットといえます。

採択率が上がる

専門家のサポートを受けて作成した申請書は、専門家の経験を活かし、補助金を通すためのポイントを踏まえ、かつわかりやすく説得力のあるものに仕上がっているため、採択される確率も上がるのです。

これらのメリット以外にも、専門家に相談することで希望する条件や目的に合った、自身では見つけられなかった補助金を案内してもらえる場合もあります。報酬を支払う必要はありますが、専門家に相談することで、新規事業をより確実にスムーズに行えると考えれば、必要な経費と考えて依頼する方が賢明だといえるでしょう。

まとめ

補助金制度の概要と申請する際のポイントの解説から、農業経営者・農業従事者が活用するべき5つの補助金制度を紹介しました。補助金は審査こそありますが、そのぶん補助金額が大きいですし、返済をする必要のないお金なので、受給できれば事業経営にとって大きな助けとなるはずです。

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この記事を書いた人
野竿 健悟
この記事を書いた人
野竿 健悟
株式会社トライズコンサルティング 代表取締役 中小企業診断士
補助金に精通しており、自ら申請をご支援し、高採択率の実績を持つ。元システムエンジニアであり、知見を活かしたシステム開発の補助金申請の支援実績多数。

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