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中小企業や個人事業主の方からは、「生産性アップのために導入したい機械があるけれど、自社の資産だけでは到底手が届かない」といった悩みをよく聞きます。自力で頑張ろうとする姿勢は素晴らしいですが、ものづくり補助金を活用してみてはいかがでしょうか?
ものづくり補助金は経費の一部を補填するために国からもらえるお金です。返済不要なので、融資よりも先に検討したいところです。
しかし、ものづくり補助金は申請書類を作るのが大変であり、採択率も4割程度という難関でもあります。そこで、この記事ではものづくり補助金の概要から採択されるためのポイントまで、幅広く解説していきます。設備投資の資金面等でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
※以下、2021年2月時点の情報です。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者を対象に交付される補助金です。生産性向上のための新しいサービスの開発、試作品の開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資やシステム開発を支援する目的の補助金です。
ちなみに、ものづくり補助金の正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。製造業のようないわゆる「ものづくり」の企業だけでなく、サービスの提供を行う企業なども含まれるため、ほとんどの企業が対象となります。「自分の会社は製造業ではないから、ものづくり補助金は使えない」と思っている方も、もう一度考え直していきましょう。
中小企業・小規模事業者が申し込めるものづくり補助金は、「一般型」「グローバル展開型」「ビジネスモデル構築型」「低感染リスク型ビジネス枠」の4種類です。グローバル展開型は、支援される経費に海外旅費が含まれる点が異なります。
ものづくり補助金の対象となる企業
先ほどお伝えしたように、ものづくり補助金を申請できるのは製造業に限りません。小売業、卸売業、サービス業なども補助金の対象となります。
なお、「一般型」「低感染リスク型ビジネス枠コロナ特別枠」「グローバル展開型」は日本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する中小企業者および特定非営利活動法人が対象となります。グローバル展開型の①類型については、事業実施場所が海外でも対象となります。
「ビジネスモデル構築型」の場合、中小企業の経営革新を持続的に支援可能な法人が対象となります(法人格を持たない任意団体や地方公共団体、個人事業主は対象外)。
その他、以下の条件を満たしている必要があります。
1. 補助金を申し込む時点で創業している
申請書には創業・設立日を記載する必要があるため、補助金は創業後に申し込みましょう。法人なら会社設立後、個人事業主なら開業届を提出後に申し込みができるようになります。
2. 中小企業・小規模事業者に該当している
ものづくり補助金は中小企業・小規模事業者が申し込める補助金です。以下の表に該当する事業者の場合、申し込むことができます。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業または情報処理サービス業、その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
その他サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
ただし、上記に該当する事業者でも実質的には大企業が支配しているケースなど、申請できない場合もあります。
3. 賃上げに関する事業計画の策定・実行
ものづくり補助金を申請するには、以下の3つの条件を満たす3年から5年の事業計画を策定して従業員に公表し、実行する必要があります。
- 付加価値額:+3%以上/年
- 給与支給総額:+1.5%以上/年
- 事業場内最低賃金:地域別最低賃金+30円
補助金の上限・補助率
ものづくり補助金の上限は以下の表のとおりです。
上限 | 補助率 | |
一般型 | 1,000万円 | 中小企業者:2分の1
小規模企業者・小規模事業者:3分の2 |
グローバル展開型 | 3,000万円 | 中小企業者:2分の1
小規模企業者・小規模事業者:3分の2 |
ビジネスモデル構築型 | 1億円 | 大企業:2分の1
大企業以外の法人:3分の2 |
低感染リスク型ビジネス枠 | 1,000万円 | 一律:3分の2 |
例えば、中小企業が一般型を利用し、対象となる経費が2,000万円あった場合、補助率は2分の1なので1,000万円を補助金でまかなうことができます。
低感染リスク型ビジネス枠
新型コロナウイルスの影響でビジネスの非対面化を進めるなど、事業の見直しを余儀なくされた企業も多いでしょう。ものづくり補助金にも対人接触を減らす製品やサービス開発のための「低感染リスク型ビジネス枠」が設けられているので、ぜひ活用しましょう。
通常枠だと中小企業の補助率は2分の1ですが、低感染リスク型ビジネス枠だと補助率が3分の2にアップします。ただし低感染リスク型ビジネス枠は、補助対象経費全額が、以下のいずれかの要件に合致する 投資である必要があります。
- 物理的な対人接触を減じることに資する革新的な製品・サービスの開発 (例:AI・IoT等の技術を活用した遠隔操作や自動制御等の機能を有する製品開発、オンラインビジネスへの転換等)
- 物理的な対人接触を減じる製品・システムを導入した生産プロセス・サービス提供方法の改善 (例:ロボットシステムの導入によるプロセス改善、複数の店舗や施設に遠隔でサービスを提供する オペレーションセンターの構築等)
- ウィズコロナ、ポストコロナに対応したビジネスモデルへの抜本的な転換に係る設備
- システム投資
- ※キャッシュレス端末や自動精算機、空調設備、検温機器など、ビジネスモデルの転換に対して大き な寄与が見込まれない機器の購入は、原則として、補助対象経費になりません。
もし、低感染リスク型ビジネス枠で不採択の場でも、通常枠で再審査されます。したがって要件を満たすのであれば、まずは低感染リスク型ビジネス枠で応募してみましょう。
ものづくり補助金で申請できる費用
ものづくり補助金は返済する必要がないので、受給すれば経費の一部を補助金でまかなえるメリットがあります。
ものづくり補助金の対象は、機械装置の導入や原材料費など基本的な費用も含まれています。以下の8項目が補助の対象となり、低感染リスク型ビジネス枠のみ広告宣伝・販売促進費も対象になります
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
- 広告宣伝・販売促進費(低感染リスク型ビジネス枠のみ)
- ものづくり補助金の活用事例
ものづくり補助金を活用して経営が改善した事例を紹介していきましょう。
例えば、あるカフェではクッキー生地で食べられるコーヒーカップを開発し、補助金を活用して「可食容器製造機械」を導入しました。機械の導入によって生産力が上がり、またコストも抑えることができ、売上が大幅アップしています。
果樹園を経営する農家では、補助金を利用して「急速冷凍機」を導入しました。機械の導入によって果物の鮮度を保って長期保存ができるようになったため、全国や海外にも販路を拡大することができ、売上が大きく上がっています。
上記はいずれも経済産業省のミラサポというホームページを参照しました。他にも活用事例を検索することができるので、気になる方はご参照ください。
このように、自社の資金だけでは導入が難しい大きな機械も、補助金を使えば手が届くかもしれません。補助金は返済不要なので、申請できるのに申請しないのは損と言えるのではないでしょうか。
ものづくり補助金を申請する際に注意すべき点
ものづくり補助金は、上述した条件を満たす事業主なら誰でも申請することができます。しかし、申請する前にいくつか押さえておきたい注意点があるので、確認していきましょう。
注意点を理解せずに申請すると、「こんなはずじゃなかった」と後悔してしまうかもしれません。気を付けた方が良い盲点もあるので、詳しく解説していきます。「自力で申請するのは難しいな」と感じる方には、申請サポートを利用するのもおすすめです。
- 電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要
- 「補助事業期間」が決められている
- 補助金は後払い
電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要
ものづくり補助金はWeb上で申請できますが、そのためにはGビズIDプライムアカウントを取得している必要があります。まだ取得していない方は、「ものづくり補助金総合サイト」を見て取得を行いましょう。
審査で落ちる可能性もある
ものづくり補助金は審査を経て採択される仕組みです。申請した人が全員もらえるわけではないことは、理解しておきましょう。公募要領に掲載されている審査項目に沿って採点されるため、ポイントを押さえた書類づくりが必要です。
ものづくり補助金の採択率は4割程度となっており、半分以上は審査に落ちてしまっています。審査に落ちる原因の多くは、書類の不備やアピール不足です。
ものづくり補助金を獲得するためには、審査員に事業が評価される書類づくりが重要です。後ほど採択されるためのポイントも解説しますが、補助金の申請書作成の代行を依頼するなど採択率を高める工夫をしましょう。
「補助事業期間」が決められている
補助金には「補助事業期間」が決められています。ものづくり補助金の場合、交付決定後から最大で10ヶ月間となります。
補助事業期間とは、補助金の対象となる期間のことです。つまり、期間中に事業を行い、支出した経費が、ものづくり補助金の対象となります。
補助事業期間が始まる前の支出や終わった後の支出に対しては、補助金は支払われません。補助事業期間を理解して事業を行わないと、補助金を有効活用できず損をしてしまうかもしれないので、気を付けましょう。
補助金は後払い
ものづくり補助金は後払いです。補助事業期間が終わり、事業が完了したことを報告し、検査を経てから補助金を請求する流れとなります。
すなわち、補助事業期間中の経費は一旦は自社で立て替える必要があります。ものづくり補助金が支払われるタイミングは、補助事業期間が終了してから3ヶ月から半年後となるケースが多いです。
いったんは立て替える必要があるため、資金繰りの計画に注意しましょう。
ものづくり補助金に採択されるためのポイント
先ほどお伝えしたように、ものづくり補助金の採択率は4割程度となっており、半分以上は審査に落ちてしまっています。そこで、ものづくり補助金に採択されるための書類づくりのポイントを解説していきます。
- 加点項目を押さえる
- 社内の専門用語は使わない
- 客観的な数値で証明する
- 図やグラフを使用する
加点項目を押さえる
ものづくり補助金の公募要領には、審査でどのような項目が評価されるかが掲載されています。加点項目について概要を抜粋すると、次のとおりです。
項目 | 概要 |
---|---|
成長性加点 | 有効な期間の経営革新計画の承認を取得した(取得予定の)事業者 |
政策加点 | 創業・第二創業後間もない事業者(5年以内) |
災害等加点 | 有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した(取得予定の)事業者 |
賃上げ加点等 | ①事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」、又は、「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者
②被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合 |
以上の項目について加点してもらうためには、エビデンスとなる添付書類が必要です。どのような書類を添付すれば良いのかわからない方は、中小企業診断士や行政書士など専門家に相談してみましょう。
社内の専門用語は使わない
意外と多いのが、社内の専門用語を申請書で使用しており、審査に落ちてしまうケースです。しっかり申請書を書いたつもりでも、審査員がわからない専門用語を使っているため、評価しようがなくなってしまっているのです。
審査員になるのは社外の人物ですし、あなたの業種に詳しいとは限りません。ご自身の事業のことをわかっていない中小企業診断士や企業コンサルタントでもわかるような言葉を使って申請書を書きましょう。
客観的な数値で証明する
取り組み内容や事業の効果は数値を用いて説明しましょう。
例えば、「この機械を導入すれば生産性が10倍向上し、従業員の負荷を下げて売上を上げることができる」のように具体的に記載します。「この機械を導入すれば生産性が上がる」だけしか書かない方もいらっしゃいますが、どれくらい向上するのかを数値で説明しないと説得力に欠けてしまいます。
同じように、すべての項目で何か示せる数値はないか検討しましょう。市場にニーズがどれくらいあって販路拡大は何倍ほど見込めるのかなど、数値で具体的に示した方が説得力の高い申請書が完成します。
図やグラフを使用する
文章による説明だけでなく、図やグラフを多用するのも、審査に通りやすい申請書づくりで重要なポイントです。文章だけが書いてある書類よりも図やグラフを多用した書類の方が読みやすく、専門外の審査員にとってわかりやすいからです。
これらの3つのポイントを押さえれば、読みやすく審査に通りやすい書類が作れるようになるでしょう。しかし、これらのポイントを押さえるだけで確実に審査に通るとまでは言い難いです。
補助金申請は狭き門なので、採択率を上げるためにも申請に慣れている申請サポートを活用するのがおすすめです。初心者が悪戦苦闘しながらようやく作り上げた書類よりも、採択されやすい書類を迅速に作成してもらうことができます。
ものづくり補助金の手続きの流れ
最後に、ものづくり補助金を受給する流れを解説していきます。次の流れで手続きを進めていくので、申請する前にざっとで構わないので把握しておきましょう。
- 締め切りまでに申し込む
- 採択の通知を受ける
- 交付申請し交付が決定する
- 補助事業期間が開始する
- 事業の報告を行う
- 補助金が確定し請求・支払いがなされる
締め切りまでに申し込む
補助金は公募期間が決められているので、期間中に申請する必要があります。ものづくり補助金の公募も期限があるので、締め切りまでに書類を作成して申し込みましょう。
「もう間に合わないかもしれない」と思った場合は、申請サポートに相談しましょう。自分で作るのは難しい書類ですが、補助金申請のプロなら迅速に作成できる場合があります。
採択の通知を受ける
提出した書類を基に審査が行われ、結果が通知されます。無事に採択の通知を受けたら、以降の手続きを正しく行えば基本的には補助金を獲得できます。
交付申請し交付が決定する
採択の通知を受けたら、交付申請を行います。「交付申請書」と「経費見積書」を提出し、交付が決定します。
注意したいのが、採択の通知を受けただけではものづくり補助金をもらうことはできない点です。事業者から交付申請を行わないといけないので、忘れずに手続きしましょう。
補助事業期間が開始する
交付が決定すると、補助事業期間が始まります。
先ほども触れたように、補助事業期間の前や後の事業の経費は対象になりません。補助事業期間中の経費が補助金の対象となるので、期間がいつからいつまでなのか確実に把握しておきましょう。
事業の報告を行う
補助事業期間が終了したら、事業の報告を行います。「補助事業実施報告書」と「使用経費の支払証明書類」を提出すると、事務局が確定検査に入るので、補助金額が決定します。
補助金が確定し請求・支払いがなされる
補助金額が決定したら、事業者に「補助金額確定通知」が送られます。事業者から請求を行うと、補助金の支払いが行われます。
以上がものづくり補助金の申請から受給までの流れです。しかし、交付申請や補助金の支払いの申請は事業者がアクションしなければならず、複雑だと感じる方も多いでしょう。
申請後にアフターサポートしてくれる補助金申請サポートを利用すれば、「交付申請を忘れていた!」といった事故も防げます。手続きを忘れずに進めるためにも、申請サポートの利用をおすすめします。
まとめ
ものづくり補助金の概要や申請方法について解説してきました。ほとんどの中小企業・小規模事業者が使える補助金なので、ぜひ活用を検討したいところです。
しかし、採択率が4割程度と低めであり、審査に落ちてしまう可能性もあります。特に補助金申請に詳しくない方が自力で作った書類だと、審査員から高い評価を得られず、審査に落ちてしまうことが多いです。
そこで、補助金申請には申請サポートの利用をおすすめします。「補助金バンク」では補助金申請の経験が豊富なプロが申請をサポートするため、採択率が高い書類を作ることができます。
申請サポートを利用すれば、経営者や従業員が本業に集中できるメリットもあります。ものづくり補助金の申請サポートは、ぜひ補助金バンクにお任せください。