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経営力向上計画とは?税制優遇や融資などメリット多数!申請方法を解説

経営力向上計画

「経営力向上計画」を策定し、国の認定を受けると、税制優遇や融資などさまざまなメリットを受けることができます。対象となる中小企業等の皆さんは、ぜひ策定と申請を検討してみましょう。

この記事では、経営力向上計画が認定されるとどのようなメリットがあるのか、申請はどのような方法で行うのかなどについて解説していきます。

経営力向上計画とは

「経営力向上計画」とは、人材育成やコスト管理、設備投資などを行って自社の経営力を高めるために策定し実施する計画のことです。中小企業者等が経営力向上計画を作成して国に対して申請し、認定されると補助金の優先採択や税制の特例を受けられるメリットがあります。

計画申請においては、認定経営革新等支援機関にサポートしてもらうことができます。税理士や中小企業診断士などの専門家や商工会議所、地域金融機関などに相談してアドバイスをもらいながら、計画を策定したり申請を行ったりすると良いでしょう。

経営力向上計画の認定を受けるメリット

国から経営力向上計画の認定を受けると、以下のようなメリットがあります。

  • 中小企業経営強化税制
  • 登録免許税・不動産取得税の特例
  • 補助金の優先採択
  • 融資など資金調達の支援

この記事では、概要について解説していきます。詳しい支援内容などは、経営サポート「経営強化法による支援」(中小企業庁)から「税制措置・金融支援活用の手引き」を確認してください。

中小企業経営強化税制

経営力向上計画が認定されると、計画に基づいて一定の設備を新規取得して指定の事業に使う場合、即時償却または取得価額の10%の税額控除を選択適用することができます。即時償却による経費を計上または税額控除を選べるため、当年度の法人税(個人事業主の場合は所得税)の支払いが緩和されるメリットがあります。なお、資本金3,000万円超1億円以下の法人の税額控除は取得価額の7%となります。

設備の内容によって、A~Cまでの3つの類型に分けて申請を行います。

  • A類型:生産性向上設備
  • B類型:収益力強化設備
  • C類型:デジタル化設備

詳しくは「税制措置・金融支援活用の手引き」でご確認ください。また、どの類型に当てはまるかによって申請に必要な書類などが異なるので、「経営力向上計画策定の手引き」を確認しましょう。

登録免許税・不動産取得税の特例

経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等は、他者から事業を承継するために土地や建物を取得する場合、登録免許税・不動産取得税の軽減措置を利用することができます。合併や会社分割、事業譲渡を通じて他の中小企業者等から不動産を含む事業用資産等を取得する場合に使える特例です。

登録免許税と不動産取得税について、通常税率と経営力向上計画が認定された場合の税率は、以下の表のとおりです。

〇登録免許税

登記の種類 通常税率 計画認定時の税率
不動産所有権移転の登記 事業に必要な資産の譲受けによる移転の登記 2.0% 1.6%
合併による移転の登記 0.4% 0.2%
分割による移転の登記 2.0% 0.4%

〇不動産取得税(事業譲渡の場合のみ)

取得する不動産の種類 税額 計画認定時の特例
土地・住宅 不動産の価格×3.0% 不動産の閣下宇の6分の1相当額を課税標準から控除
住宅以外の家屋 不動産の価格×4.0%

以上のとおり、税額の軽減を受けることができます。

補助金の優先採択

一部の補助金の審査において、経営力向上計画が認定されていることは加点要素となるため、採択されやすくなります。例えば過去のものづくり補助金の審査では、経営力向上計画の認定取得が加点項目となりました。

ものづくり補助金などの申請を考えている方は、経営力向上計画の策定も同時に進めていくと良いでしょう。

融資など資金調達の支援

経営力向上計画が認定されると、以下のような金融支援を受けることができます。

  • 日本政策金融公庫による融資
  • 中小企業投資育成株式会社からの投資
  • 日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
  • 日本政策金融公庫によるクロスボーダーローン
  • 中小企業基盤整備機構による債務保証
  • 食品等流通合理化促進機構による債務保証
  • 中小企業信用保険法の特例

会社の規模によって活用できる支援策が異なるので、詳しくは「税制措置・金融支援活用の手引き」でご確認ください。

経営力向上計画の認定を申請できる事業者

経営力向上計画の認定を受けられる「中小企業者等」とはどのような事業者が含まれるのかを解説していきます。

まず、中小企業等経営強化法第2条第2項に定められるとおり、中小企業者等とは以下の規模の事業者です。

会社、個人事業主、医業・歯科医業を主たる事業とする法人 社会福祉法人、特定非営利活動法人
資本金 右欄の上下どちらかで判断 10億円以下
従業員数 2,000人以下 2,000人以下

以上に該当する中小企業者等は、経営力向上計画の認定を受けることができます。ただし、希望する税制措置や金融支援によって対象となる規模に違いがあるため、支援措置が必要な方は「支援措置活用の手引き」を確認して、自社が該当するか調べましょう。

また、企業組合や協業組合、事業協同組合等も経営力向上計画の認定を受けることが可能です。

経営力向上計画の申請手順

経営力向上計画をどのように申請するのか、手順を解説していきます。必要な書類は少なく、記入も難しくはないのですが、迷うことがあれば税理士や中小企業診断士などの専門家に相談しましょう。

  • 手引きと申請書を入手
  • 自社の事業分野を確認
  • 経営力向上計画の策定と申請書の作成
  • 申請書類の準備
  • 書類の提出
  • 審査・認定

手引きと申請書を入手

まずは、経営力向上計画に関する資料を入手しましょう。経営サポート「経営強化法による支援」(中小企業庁)から、手引きと申請書をダウンロードします。手引きには、経営力向上計画の概要や、申請書にどのようなことを書いたら良いのかといった指示が掲載されています。

申請書の書き方の例は、農業や建設業、食料品製造業など業種別に分かれて掲載されています。申請書の作成においては、「申請書様式類」も参考にすると良いでしょう。

自社の事業分野を確認

申請書には、自社の事業分野と事業分野別指針名を掲載する必要があるので、わからない方は調べておきましょう。日本標準産業分類(総務省)から日本標準産業分類を確認し、自社の事業がどの分類なのか調べられます。

申請書には、該当する中分類(2桁)と細分類(4桁)のコードと項目名を記載します。計画が複数の分野にまたがる場合、コードを列挙しましょう。

事業分野に事業分野別指針がある場合、事業分野別指針も記載します。定められていない場合、事業分野別指針は空欄で構いません。

経営力向上計画の策定と申請書の作成

経営力向上計画の策定と申請書の作成を行います。どのように計画を策定したら分からない方も、申請書の項目を見ながら考えていくと進めやすいでしょう。現状認識や経営力向上の目標などの項目があるため、計画策定においてヒントになります。

まずは現状認識として、以下の3つの項目について現状を整理していきましょう。

  • 自社の事業概要
  • 自社の商品・サービスが対象とする顧客・市場の動向、競合の動向
  • 自社の経営状況

自社の規模や顧客数、市場の規模やシェア、自社の強み・弱み、その他ベンチマークとしている指標の推移などを書き出すことで、何を改善するべきなのかを考えましょう。

次に、経営力向上の目標を記入します。現状と計画終了時の目標を数値、伸び率を数値で記載するため、経営力の向上を客観的に示すことができます。

どのような指標を使うかは、事業分野別指針によって異なります。事業分野別指針を基に、以下の3つの指標から適切なものを選びましょう。

  • 労働生産性
  • 売上高経常利益率
  • 付加価値額

目標設定ができたら、達成するために何を行うのかを策定し、申請書に記入していきます。どのような取り組みを行うか、必要な資金はどのように調達するかなどを考え、記入していきましょう。

計画策定と申請書の作成は基本的には以上ですが、「改善のイメージはあるけど、文章で表現できない」「自社の現状分析の方法が分からない」などの悩みがあり、計画づくりが進まない方もいらっしゃると思います。中小企業診断士などの専門家に相談し、客観的なアドバイスをもらうと良いでしょう。

申請書類の準備

経営力向上の申請書類は、上記で作成した申請書を含めて以下の5つです。

  • 申請書(原本)
  • 申請書(写し)※都道府県に提出する場合のみ
  • チェックシート
  • 返信用封筒
  • 転送用封筒 ※都道府県に提出する場合のみ

返信用封筒は、A4の認定書を折らずに返送できるサイズのものを用意します。返送用の宛先(多くの場合は自社の住所や会社名、担当部署名になると思います)を記載し、切手を貼りましょう。切手は申請書類と同程度の重量のものが送付できる金額となります。

都道府県を経由して国に申請する場合、上記のとおり申請書の写しと転送用の封筒も必要になります。転送用封筒には提出先となる省庁を宛名に記載します。

また、以下の税制措置・支援措置を受ける場合、他にも添付する書類が必要になります。

〇経営強化税制A類型の税制措置を受ける場合

  • 工業会等による証明書(写し)

〇経営強化税制B類型・C類型の税制措置を受ける場合

  • 投資計画の確認申請書(写し)
  • 経済産業局の確認書(写し)

〇事業承継等について支援措置を受ける場合

  • 業承継等に係る契約書(又はそのドラフト)
  • 事業承継等に係る誓約書
  • 被承継者が特定許認可等を受けていることを証する書面(認可承継の特例を受ける場合のみ)
  • 借対照表・損益計算書(経営者の個人保証を不要とする中小企業信用保険法の特例による金融支援を受ける場合のみ)

以上の書類を用意し、提出の準備をしましょう。

書類の提出

事業分野ごとに提出先が異なるので、どこに提出すれば良いのかを経営サポート「経営強化法による支援」(中小企業庁)の「事業分野と提出先」という書類で確認しましょう。

窓口ごとに宛名や住所が掲載されているので、経営力向上計画申請の書類一式を郵送しましょう。

経済産業局及び一部の省庁が窓口の場合は、電子申請を行うことも可能です。経営力向上計画申請プラットフォームから申請しましょう。経済産業局が窓口の場合は、政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)から電子申請することもできます。

審査・認定

提出された書類を基に経営力向上計画の審査が行われ、合格すれば認定となります。

なお、審査の結果、認定されないケースもあります。審査に落ちてしまうと申請のためにかけた手間がもったいないので、認定支援機関のサポートを上手に活用し、専門家から的確なアドバイスをもらいながら計画を策定していくと良いでしょう。

経営力向上計画の認定事例

実際に経営力向上計画が認定された企業は、どのように経営力を向上させたのでしょうか?認定された企業の事例をいくつか紹介するので、経営力向上に取り組むメリットをイメージし、経営力向上計画の策定につなげていただければと思います。

小売業者A

小売業者Aはスーパーマーケットを展開する小売業者で、業種は各種商品小売業です。地域に密着したスーパーとして営業してきましたが、以下のような取り組みによって生産性の向上を行いました。

  • 今まで出店の無かった商圏への新規出店
  • 新規店舗にPOSシステムを導入する設備投資

POSシステムを用いて新規店舗周辺の顧客の趣向と消費動向を分析することで、小売業者Aは地域の商品の特徴に応じた商品開発などを行うことができました。

また、新規店舗の出店にあたって経営強化税制に基づく税制優遇を活用しています。ショーケースやベーカリーオーブンといった設備を導入し、顧客ニーズに対応した店舗づくりに役立てているそうです。

新規店舗の出店やそれに伴う設備への投資は、非常に大きなコストとなります。税制優遇を活用することでコスト負担を緩和した事例と言えます。

老人福祉・介護事業者B

事業者Bは、高齢者を対象とした宅食事業と障害を持っている人の就労支援事業を行う、老人福祉・介護事業を主とした会社です。軽度の障害がある人を対象に介護人材を育成する私塾を新たに開講するなど、積極的に事業を展開しています。

介護の現場にはタブレット端末を導入し、専用の介護ITシステムを導入しています。職員が手書きで書類を作成する負担を軽減し、業務の効率化を図りました。

また、通所型介護事業で必要なとなる機械浴用の設備の導入も、職員の負担の軽減に結び付いています。

既存の事業で得たネットワークを活かして訪問介護や通所型介護事業に進出することにより、より多くの社会問題の解決と収益の拡大の両方を目指すことができています。

自動車部品・付属品製造業C

事業者Cはトラックをはじめとする商用車の金属部品を製造する、自動車部品・付属品製造業の会社です。新たにタブレット端末、アプリ、ITシステムを導入することで報告業務を効率化し、現場の情報を社内で共有できるように改善しました。

人手が多くかかっていた製造工程には新たな産業ロボットを導入し、生産性の向上を目指しています。中小企業等経営強化法に基づく固定資産税の軽減措置を利用し、設備投資を行いました。

他にも認定事例は多数あります。他の事例も知りたい方は、「中小企業等経営強化法認定計画事例集(経済産業省)」をご覧ください。

まとめ

経営力向上計画とそのメリットを中心に解説しました。税制優遇や融資、補助金の審査における加点といったメリットがあるため、対象となる中小企業等の方は計画の策定と申請を検討されてはいかがでしょうか。

申請書の書き方に不明点がある場合や、どのように計画を策定したら良いのかわからないといった場合は、中小企業診断士などの専門家に相談しましょう。補助金バンクには専門家が多数登録しているので、身近にいて頼れる専門家を探し、相談してみましょう。

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この記事を書いた人
野竿 健悟
この記事を書いた人
野竿 健悟
株式会社トライズコンサルティング 代表取締役 中小企業診断士
補助金に精通しており、自ら申請をご支援し、高採択率の実績を持つ。元システムエンジニアであり、知見を活かしたシステム開発の補助金申請の支援実績多数。

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