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助成金とは?申請~受給の手順&コツとメリット・デメリット

助成金とは

中小企業や個人の方は、本業を頑張ることに注力している一方、労働環境の整備がおろそかになっていることが多いです。経営者の方が非正規社員のキャリアアップや男性の育児休暇取得に無関心だと、優秀な従業員が離れていってしまうかもしれません。

しかし、労働環境に手を回せるほど儲かっていないと悩んでいる方も多いでしょう。そこで活用したいのが「助成金」です。助成金は原則として返済する必要がないお金で、企業の労働環境の整備に使うことができます。

この記事では、助成金とは何か、どのように申請すれば良いのかを解説していきます。自力で申請できそうにないという方も、助成金の申請代行を行う社会保険労務士に依頼すれば大丈夫です。

助成金とはどんな制度?

助成金

助成金とは、国や地方公共団体、民間団体から支出される、原則として返済不要の支援金です。助成金の種類は、雇用促進や人材育成、労働環境向上を目的としたものが多いです。

これらの目標に対応するための設備導入費用や研修費用といった経費の一部を、助成金でまかなうことができます。目的は助成金ごとに決まっているので、どんな事業にも使えるお金ではないことを理解しておきましょう。

また、助成金は申請要件を満たしている事業主なら、審査に落ちることはありません。後述する「補助金」と違って、応募者同士の競争がないからです。

ただし、書類の不備等で審査に落ちる方は大勢います。自分で書類を作成する場合は、不備がないように気をつける必要があります。

補助金との違い

補助金も国や地方公共団体、民間団体から貰える返済不要の支援金で、助成金と非常によく似ています。実際、団体によっては助成金と補助金を同じものとして扱っていることもあります。

一般的には、補助金は審査が設けられており、採択されれば受給できます。審査に落ちると受給できません。助成金と違って応募者同士の競争があるため、不備のない書類で申請しても審査に落ちてしまうことがあるのです。

以上の違いを踏まえると、補助金よりも助成金の方がもらえる確率が高いです。まずは、助成金から申請したいと思う方も多いでしょう。

それでは、助成金を受給するための条件について解説していきましょう。

助成金を受給するための条件

助成金を受給するためには、主に3つの条件に該当する必要があります。他にも助成金ごとに細かな条件が設けられていることがあるため、詳しくは助成金の公式ホームページや資料等で確認してください。

  • 雇用保険に加入している
  • 必要な帳簿や記録を整備している
  • 適切な労務管理をしている

雇用保険に加入している

助成金を受給するためには、雇用保険適用事業所の事業主であることが条件です。助成金の財源には、主に企業が納める雇用保険の保険料が使われているためです。

法人も個人も、31日以上の雇用見込みがあり、週20時間以上の勤務を行う従業員を1人以上雇っている場合は、雇用保険に加入する必要があります。従業員を初めて雇ったら、「事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークに提出しましょう。

2人目以降を雇う場合、雇う都度「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

必要な帳簿や記録を整備している

雇用に関する助成金の申請の際、従業員の労働状況がわかる書類の提出が必要となります。次の記録を記録し、保管しておきましょう。

  • 従業員のタイムカードやICカード、パソコン使用時間などの記録
  • 賃金台帳の作成

その他にも、従業員の労働時間がわかる書類があれば保管しておきましょう。労働基準法第109条に基づき、最低でも5年間は保管します。

適切な労務管理をしている

書類の保管だけでなく、現場での適切な労務管理も重要です。

よくある悪い例が、タイムカードを定時で打刻した後に残業しているケースです。客観的に始業時刻と終業時刻を示すはずのタイムカードが、嘘の記録になってしまいます。

ありがちではありますが、嘘が記録された資料を助成金申請で添付した場合、不正受給になる可能性があります。抜き打ちの実地調査などでバレるので、書類をごまかさないようにしてください。

不正受給を行うと、助成金を返還しなければならないだけでなく、不正受給額の20%を追加で支払ったり、最低5年間は助成金の申請ができなくなったりするなどのペナルティが与えられます。また、不正受給を行った事業者として事業者名が公開されるので、融資を受けにくくなるなどのデメリットが生じます。

助成金の申請~受給の方法

助成金を受給するための条件がわかったら、次は具体的にどのような流れで申請から受給までを行うのかを解説していきます。

ただし、説明するステップの中には非常に難しいものもあります。無理して1人でやろうとするのではなく、助成金の申請に詳しい社会保険労務士に相談するなどして、申請を進めていきましょう。

  • 取組の実施計画を作成する
  • 就業規則の確認・変更を行う
  • 計画書を届出て実施する
  • 助成金の支給申請を行う
  • 助成金を受給する

取組の実施計画を作成する

助成金の申請では、どのように労働環境を向上させるかの計画が重要です。助成金は従業員の労働環境を整えるための支援金だからです。

申請する助成金によって目的が異なるため、目的を押さえて計画を作成しましょう。例えば、人材開発支援助成金なら非正規社員への研修計画が考えられます。

育児休暇の取得を促すための助成金なら、男性・女性社員が育児休暇を取りやすくするための環境をどのように整えるかなどを考えます。

就業規則の確認・変更を行う

助成金の種類によっては、申請要件を満たすために就業規則の変更が必要な場合があります。そのような場合、就業規則の変更を行い、労働基準監督署に届け出ましょう。

計画書を届出て実施する

キャリアアップ助成金など、計画書の添付が必要な助成金の場合、計画書を作成して労働監督署に届け出ます。

助成金の支給申請を行う

各種の変更や届出ができたら、助成金の申請を行います。必要な書類に記入し、添付書類を用意します。

なお、助成金ごとに提出期限が決まっています。期限を過ぎた書類は認められないので、必ず期限内に申請できるよう、スケジュールを逆算して進めましょう。

ここまでの流れを見てきて、「自分一人で申請するのは難しいのではないか?」と思われた方も多いと思います。助成金の申請には就業規則の変更などの難しい仕事も伴いますし、そもそも決まった締め切りまでに書類を作ることも大変です。

助成金の申請書の作成は、社会保険労務士などが代行することができます。他にも、有益なアドバイスをもらえるといったメリットがあります。申請に関して不安がある方は、社会保険労務士など助成金の専門家に相談してみるのがおすすめです。

助成金を受給する

助成金の申請をした後、書類が受理されれば助成金を受給することができます。申請要件を満たしていれば誰でももらえる支援金なので、書類に不備がない限り助成金はもらえるでしょう。

助成金を受給するメリット

助成金を申請する流れがわかったら、改めて助成金を受給するメリットについて解説していきましょう。返済不要な資金が手に入るなどの大きなメリットがあるので、ぜひ助成金は獲得して活用したいところです。

ここでは、助成金を受給する3つのメリットを解説していきます。

  • 返済不要な資金が手に入る
  • 公的融資を受けやすくなる
  • 労働環境を整備できる

返済不要な資金が手に入る

助成金は原則として返済する必要がないので、返さなくて良い資金が手に入るメリットがあります。銀行などの融資は返済する必要がありますが、助成金はありません。

したがって、もらえるならもらっておいた方が良いと考えることができます。助成金の申請要件に当てはまっているなら、申請しない手はないでしょう。

公的融資を受けやすくなる

助成金を受給していると、公的融資を受けやすくなるメリットがあります。なぜかと言うと、助成金を受給していること自体が企業の信頼性を示すため、信用力の証明になって融資の審査に通りやすくなるのです。

助成金を受給できている事業主は、雇用保険に加入して保険料を納めており、労働環境を改善する意欲があると客観的に判断されるのです。また、助成金を受給できない反社会的勢力などでも無いことがわかります。

したがって、助成金を受給できること自体が企業の信用を高める効果につながります。返済不要のお金をもらうだけでなく、信用力を高めることもできるので、ますます助成金を申請しない手はないでしょう。

労働環境を整備できる

後回しになりがちな労働環境の整備ができることも、助成金を受給する大きなメリットです。

特に中小企業だと、ギリギリの予算と人員で仕事を回していることも多く、労働環境の整備にまで手が回らないことが多いでしょう。労働環境の整備は、それ自体が利益を生むわけではないので、時間やお金をかけられない企業も大勢います。

しかし、助成金をもらえばお金の問題は軽減されるのではないでしょうか?利益が少なくて労働環境の充実にまで手が回らない企業も、助成金をもらえれば取り組める場合があるでしょう。

実際、労働環境の整備は企業にも良い影響をもたらします。仕事に慣れた従業員が辞めにくくなったり、新たに優秀な人材を雇ったりすることができるからです。

後回しになりがちな労働環境の整備ですが、助成金をもらって着手し、良い人材を会社に定着させましょう。

助成金を申請するデメリット

助成金は受給できればメリットだらけですが、申請段階では申請するのが難しいなどのデメリットがあります。ここからは、助成金の申請においてどのような点が大変なのかを解説していきます。

これからお伝えする内容を読み、「自分一人では難しそうだな……」と感じたら、社会保険労務士などに助成金の申請を代行してもらうのがおすすめです。

  • 申請に専門知識が必要な場合がある
  • 書類の不備で審査に落ちることがある
  • 追加書類の提出など手間がかかることがある

申請に専門知識が必要な場合がある

助成金を申請するにあたり、ホームページやパンフレットで申請要件や必要な書類を調べることになります。しかし、ホームページやパンフレットには法律用語などの専門用語がたくさん登場するため、慣れていない人は読むだけでも大変です。

例えば、相談が多い「雇用調整助成金」の支給要件として、以下の取り組みを行っていることが含まれています。一回読んだだけで意味がわかる方は少ないのではないでしょうか?

「判定基礎期間」における対象労働者に係る休業または教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/40(大企業の場合は1/30)以上となるものであること

この文を読んだだけでは、「判定基礎期間とは?」「大企業とそうでない企業との違いは何?」などの疑問が生まれるばかりで、意味を理解するところまで到達できないという方も多いでしょう。

専門用語が大量に登場するため、不慣れな人は申請する前にギブアップしてしまうこともあります。申請するまでに難しい書類と格闘しなければならないことが、助成金申請における一つのデメリットと言えるでしょう。

書類の不備で審査に落ちることがある

難しいホームページやパンフレットを何とか読み解いて申請ができたとしても、書類の不備で審査に落ちることがあります。書類を準備したのに、助成金をもらえないのでは意味がありません。

助成金は申請要件を満たしていれば誰でももらえる支援金ですが、書類の不備で落ちてしまい、受給できないケースが実は多いです。申請に慣れていない方で、必要な書類の添付を忘れたり、書類への記入漏れなどがあったりして、助成金を受給できなかったというケースはよく相談されます。

「自分は添付書類を忘れたりしない」と思っている方ほど注意が必要です。ホームページやパンフレットを確認していただくと、「想像していたよりも大量の書類が必要なことがわかって驚いた」と仰る方もいます。

助成金申請ですべての書類をしっかり完成させて提出するのは、学校の課題の提出と違って非常に難易度が高いのです。

追加書類の提出など手間がかかることがある

助成金の種類によっては、一度書類を提出した後に追加書類の提出を求められることがあります。提出し終わってやっと本業に集中できるというときに、「追加で〇〇の資料を提出してください」と言われたら、また助成金申請に労力を割かなければなりません。

本業がおろそかになってしまい、助成金のために会社を経営しているような状態になってしまいます。

このように、助成金は申請する段階が非常に大変であることが伝わったかと思います。自分一人ですべての仕事を抱えるのではなく、助成金申請のプロである社会保険労務士に相談するなどして、負担を軽減しましょう。

助成金を受けるためのコツ

書類の不備などで受給できなかった、といったことが起きないよう、助成金を受給するための申請のコツについても解説していきます。これから解説する3つのコツを押さえておけば、審査に落ちたり不正受給になったりする可能性は低くなります。

  • 計画・用途を具体的に書く
  • 無理な計画は書かない
  • 期限内に確実に申請する

計画・用途を具体的に書く

助成金は労働環境を向上するために使うお金であり、申請時にも助成金をどのように使って労働環境を整えていくのか、計画や用途を説明する必要があります。計画や用途を具体的に書くことで、審査員にわかりやすい申請書になるため、助成金を受給できる可能性がアップします。

つまり、「育児休暇が取りやすい環境を整える」といった抽象的な計画ではなく、「育児休暇の取得率を〇%に向上させる」といった具体的な計画を立てます。後から振り返ったときに成果を評価しやすい計画を立てると、自然と具体的な計画になっていきます。

助成金で何を行い、何がどのように変わるのかを具体的に書くことで、審査に通りやすい書類を作りましょう。

無理な計画は書かない

よくある悪い例が、「助成金をもらうために良い感じのことを書いておこう」と考え、実現不可能な計画を立ててしまうことです。無謀な計画を立てて助成金を申請し、受給してしまうと、不正受給と見なされるリスクがあるので、無謀だとわかって計画を作ることはやめましょう。

計画は自社にとって実現できる範囲内で立てれば十分です。自社の資本だけでは実現できないものの、助成金を使えば実現できる計画を立て、申請時にしっかりとアピールしましょう。

期限内に確実に申請する

それぞれの助成金には申請期限が決められているので、期限内に申請しなければなりません。期限を少しでも過ぎてしまうと書類を受け付けてもらえないため、スケジュール管理は非常に重要です。

期限までに申請を終わらせるためにも、就業規則の変更のような業務が伴う助成金の場合、早い段階で動かなければなりません。それでも不明点を調べているうちに時間が経ってしまい、申請期限ギリギリ、もしくは間に合わなくて申請のための努力が水の泡になってしまうこともあるでしょう。

申請に慣れていない人が申請しようとすると、書類の不備に加えて期限内に間に合わないという問題も発生しやすいです。そのため、助成金申請に慣れている社会保険労務士に申請を代行してもらうことをおすすめします。

助成金の申請を代行してもらうメリット

厚生労働省の助成金の申請書の作成支援やサポートは、専門家である社会保険労務士(社労士)に依頼することができます。専門家にサポートしてもらうことで助成金を受給できる確率が上がるメリットがあるため、相談することをおすすめします。

なお、助成金の申請書作成代行にかかる費用の目安は次のとおりです。

 

着手金 成功報酬
着手金あり 2万~5万円 助成金入金額の10~15%
着手金なし なし 助成金入金額の15~25%

 

そこまで高額な費用ではないと感じられるのではないでしょうか。着手金として数万円と、助成金が入金されたらその中から成功報酬を支払えば良いので、一般的には企業の経営を圧迫するほどの支出ではないと言えます。

  • 自分の労力をかけず済む
  • 支給される可能性の高い書類を作成してもらえる
  • 他の助成金を紹介してもらえる

自分の労力をかけず済む

助成金の申請書の作成を代行してもらったり、専門家のアドバイスをもらったりすることの最大のメリットが、自分の労力が少なくて済むことでしょう。

先ほどお伝えしたとおり、助成金申請は膨大な専門用語や細かい書類との戦いですが、不慣れな経営者や社員が担当するには負担が大きすぎます。しかし、助成金申請に強い社会保険労務士にとっては通常業務なので、サクサク申請を進めることができます。

社会保険労務士などに申請書作成の代行を依頼すれば、経営者や社員は本業に集中することができます。本業で利益を上げつつ助成金もゲットできるよう、助成金申請は代行を利用しましょう。

支給される可能性の高い書類を作成してもらえる

社会保険労務士などに助成金の申請書作成を代行してもらうと、クオリティの高い書類を作ってもらえるので、支給される可能性が高くなります。

助成金は申請要件を満たしていればもらえる支援金であるため、本来であれば支給率は100%になります。しかし、不慣れな人が作ると書類の添付漏れなどの初歩的なミスが起こるため、支給されないケースもあるのです。

助成金申請に慣れている社会保険労務士などに代行を依頼すれば、このような初歩的なミスは防ぐことができます。支給される可能性を高めるためにも、プロに相談した方が良いでしょう。

他の助成金を紹介してもらえる

社会保険労務士などに申請代行を依頼する際、他に使える助成金を紹介してもらうことができます。調べても自力では見つけられなかった助成金を教えてもらえるため、専門家に相談する大きなメリットであると言えます。

他にも使える助成金が見つかれば、併用して高額の助成金を受給することも可能です。助成金は返済不要ですし、高額なほど経営が助かると感じる方多いのではないでしょうか。知らなかった助成金を教えてもらうためにも、社会保険労務士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

助成金の意味や申請方法、メリット・デメリットなどを解説してきました。助成金は返済する必要がない支援金なので、受給して労働環境の整備に役立てましょう。

しかし、申請するのが難しいというデメリットがあります。助成金の申請書作成の代行やサポートを行っている社会保険労務士などに相談し、確実に申請して助成金を獲得しましょう。

「補助金バンク」には、助成金に強い社会保険労務士など専門家が多数登録しています。助成金の申請を考えているなら、「補助金バンク」で社会保険労務士を探してみてください。

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この記事を書いた人
安田 史朗
この記事を書いた人
安田 史朗
社会保険労務士法人イージーネット 副代表 社会保険労務士 中小企業診断士
事業者には区別しづらい「助成金」と「補助金」の両方に精通しており、多くの中小企業に助成金・補助金の提案~支援を行っている。補助金の審査員経験もあり、士業向け「補助金コンサルタント」養成講座の講師として後進の育成にも力を注ぐ。

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