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【2022】キャリアアップ助成金とは?各コースの特徴・支給金額と申請手順&コツ

キャリアアップ助成金

労働力人口が減少し新規採用が困難になる中で、企業が優秀な人材を確保するための手段として非正規社員のキャリアアップがクローズアップされています。キャリアアップ助成金は、非正規職員の戦力化を図る企業にとってメリットが大きくおすすめの制度です。

今回の記事では、7コースもあるキャリアアップ助成金について、「正社員化コース」を中心にその内容と申請方法を解説します。ご自身の会社で活用可能か検討してみてください。

キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金とは、有期契約社員や派遣社員などの非正規社員のキャリアアップ施策を行った企業を支援する助成金です。まずは、助成金の目的や特徴、助成金の種類などについて確認しましょう。

キャリアアップ助成金の目的と特徴

キャリアアップ助成金の目的は、国が強力に推進する非正規社員の雇用の安定です。非正規社員の正社員化や待遇改善とともに、同一労働同一賃金の実現に向けた正社員と非正規社員の格差の是正を目指し、これらに取り組む企業を支援するのです。

キャリアアップ助成金は7コースありますが、支援内容は次の3つに大別できます。

  • 正社員化支援
  • 処遇改善支援
  • 人材育成支援

また、人材の有効活用によって、国は低迷する日本企業の労働生産性を計画的に確実に向上させようとしています。そのため、キャリアアップ助成金には下記の特徴があります。

  • 事前に計画書を提出し、計画を達成した企業だけが助成を受けられる。
  • 生産性要件を達成した場合など、成果によって加算がある。
  • 結果をみての支給となるため、実際に支給を受けるのは計画実施後になる。

つまり、キャリアアップ助成を受けるには、プロセスも必要ですが結果がより重要で、結果次第で受給の可否や受給できる金額が決まるという特徴があります。また、助成金は後払いになるので資金繰りには注意が必要です。

キャリアアップ助成金の7つのコース

前述の通り、キャリアアップ助成金には下記の7コース(令和2年度)があります。全コースとも非正規社員に対する措置が対象です。

  • 正社員化コース:正規雇用に転換
  • 賃金規定等改定コース:賃金アップ
  • 健康診断制度コース:法定外健康診断制度の新設(令和3年度は諸手当制度共通化コースへ統合)
  • 賃金規定等共通化コース:正社員との賃金規定の共通化
  • 諸手当制度共通化コース:正社員との諸手当制度の共通化
  • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース:賃金アップと社会保険への新規加入
  • 短時間労働者労働時間延長コース:労働時間延長と社会保険への新規加入

助成金の対象となる事業主(受給条件)

助成金の対象となる事業主の要件は、キャリアアップ助成金の全コース共通で下記の通りです。

  • 雇用保険に加入している事業所
  • キャリアアップ管理者(※1)を置いていること
  • キャリアアップ計画(※2)を作成し、労働局の認定を受けていること
  • 賃金台帳等、書類を整備していること
  • 計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

(※1)下記リンクのガイドラインで定めるキャリアアップ管理者で、キャリアアップの取組みに必要な知識・経験を有すると認められる者。

(※2)同ガイドラインで定めるキャリアアップ計画で、助成事業実施前に作成が必要。

参考:厚生労働省「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」

上記条件を満たした事業主への助成額は、企業規模(中小企業と大企業)で異なるので、業種別の中小企業の範囲を下記で確認しておきましょう。

(中小企業の範囲)

業種 資本金の額・出資の総額 常用雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給金額と注意点

次に、キャリアアップ助成金の正社員化コースについて、具体的な支給要件と支給金額を解説します。支給金額は企業規模と生産性要件の達成状況によって異なります。

生産性要件については下記リンクで確認ください。

参考:厚生労働省「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」

正社員化コースの支給金額

正社員化コースは、就業規則や労働協約などに基づき有期雇用社員等を正規雇用社員等に転換、直接雇用した場合に支給される助成金です。対象となる有期雇用社員等は下記の通りです。

  • 雇用期間6ヶ月以上の有期雇用社員(雇用期間3年以内)
  • 雇用期間6ヶ月以上の無期雇用社員(6ヶ月以上勤務した有期雇用労働者を含む)
  • 6ヶ月以上勤務した派遣社員
  • 人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)による研修を修了した有期雇用社員

また、正規雇用社員等には勤務地限定正社員や職務限定正社員、短時間正社員などの「多様な正社員」を含むため、幅広い有期雇用社員等に適用できます。

支給金額

中小企業 大企業
有期社員→正規社員 57万円(72万円) 42万7,500円(54万円)
有期社員→無期社員 28万5,000円(36万円) 21万3,750円(27万円)
無期社員→正規社員 28万5,000円(36万円) 21万3,750円(27万円)

( )内は生産性要件達成の場合

さらに、所定の要件を満たした場合、上記の支給金額に下記の加算があります。

(加算額)

加算要件 加算額
派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者または多様な正社員として直接雇用した場合 1人当たり28万5,000円

(36万円)

母子家庭の母等または父子家庭の父を転換等した場合

(有期社員→正規社員)

1人当たり9万5,000円

(12万円)

母子家庭の母等または父子家庭の父を転換等した場合

(有期社員→無期社員、または、無期社員→正規社員)

1人当たり4万7,500円

(6万円)

勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換または直接雇用した場合 1事業所当たり9万5,000円

(12万円)

【7万1,250円(9万円)】

( )内は生産性要件達成の場合、【 】内は大企業の場合

正社員化コースの注意点

正社員化コースの「対象となる有期雇用社員等」とキャリアアップ助成金の全コース共通の「対象となる事業主」について概要を前述しましたが、実際にはかなり詳細な規定があります。

詳細は厚生労働省ホームページ「キャリアアップ助成金のご案内」で確認してください。

特に注意が必要なのは「対象となる事業主」について次の2つです。

  • ①正社員等への転換後に所定の賃金アップがあること
  • ②転換日前後の6ヶ月間に会社都合の離職(解雇など)がないこと

①については、転換後6ヶ月間の賃金を転換前6ヶ月間の賃金と比較して、次のいずれかの賃金アップが必要です。

  • 基本給や定額支給の諸手当(賞与を除く)を含む賃金の総額を3%以上増額(令和3年度より5%→3%へ緩和)
  • 令和2年度までは賞与を含めて5%以上の増額で認められるケースがありましたが、4/1以降の転換より賞与は増額に含めないこととなります。

つまり、賞与を除く定額給与が3%以上アップしていることが助成金の支給要件になるのです。

②については、「解雇すると助成金はもらえない」と聞いた人も多いでしょうが、転換日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年間の解雇等が対象となるので覚えておきましょう。

たとえば、10月1日に正規社員に転換した場合、同年4月1日から翌年3月末日までの間に解雇等があるとキャリアアップ助成金の対象外の事業主となります。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請手順・受給までの流れ

実際にキャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請する方法や流れについて解説します。申請書類や添付書類のチェックリストは、こちらのサイトで確認できます。

助成金受給までの流れは下記の通りです。

  1. キャリアアップ計画を作成・提出し認定を受ける
  2. キャリアアップ計画を実施する
  3. キャリアアップ計画実施後に支給申請する
  4. 支給審査に通れば助成金を受給できる

助成金受給までの流れ

ステップ①:キャリアアップ計画を作成・提出し認定を受ける

最初に行うことが、キャリアアップ計画の作成です。主な記載内容は次の通りです。

  • キャリアアップ管理者の氏名・配置日、主な業務内容
  • 計画期間(3年から5年)
  • 実施するコース(「正社員化コース」を選定)
  • 対象者
  • 目標(計画実施によって達成する具体的な目標)
  • 目標を達成するために講じる措置
  • キャリアアップ計画全体の流れ

計画は有期雇用社員等を含む全労働者の代表から意見を聴いて作成し、管轄の労働居に提出し認定を受けます。認定前に実施した施策は、助成金の対象にならないため注意しましょう。

ステップ②:キャリアアップ計画を実施する

キャリアアップ計画の認定を受ければ、いよいよ計画を実施します。就業規則や賃金規定の改定などは下記に留意しましょう。

  • 半数労働組合の意見聴取や改定後の周知など、正規の手順で改定を行う。
  • 改定内容は正社員化コースの要件を満たすか慎重に確認する。

改定した就業規則や賃金規定に従って、所定のキャリアアップ施策(正社員化や給与アップなど)を実施します。実施途中で計画に変更が生じた場合、必ず変更届の提出が必要です。

計画通りに実施しなかったり、変更が生じたのに変更届を出さなかったりした場合は、助成金が支給されないことがあるのでしっかりと確認しましょう。

ステップ③:キャリアアップ計画実施後に支給申請する

キャリアアップ計画を実施した後に、管轄の労働局に支給申請します。実施後というのは、正社員化や給与規定の改定などを行い6ヶ月の給与を支払った日を起点とします。申請期限は、6ヶ月目の給与を支払った日から2ヶ月以内です。

ステップ④:支給審査に通れば助成金を受給できる

支給申請後の審査に合格すれば、支給決定通知書が交付され助成金を受給できます。

受給後も会計検査院の検査対象となる場合があり検査に協力が必要です。また、労働局に提出した支給申請書、添付書類の写しなどは、5年間の保存が義務付けられています。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)を受給するためのコツ

キャリアアップ助成金の申請から実際に受給するまで1年以上の時間がかかりますが、本当に受給できるかどうかは支給申請後の審査までわかりません。時間と費用をかけて結局もらえなかったということのないよう、次のポイントを押さえることが重要です。

キャリアアップ計画の策定を慎重に行う

キャリアアップ助成金受給の1つ目のコツは、計画の策定を慎重に行うことです。計画書を作成・提出して認定されるのは意外と簡単ですが、提出した計画通りにキャリアアップ施策ができなければ助成金を受けられないからです。

計画策定のチェックポイントは次の通りです。

  • 計画は効果が見込めるか?実現可能か?(対象者がいるか?)
  • 助成金の対象外となる労働法規などの違反がないか?
  • 計画作成時に就業規則や法定帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)などが整備されているか?

また、キャリアアップ施策実施後に提出する支給申請書の内容や必要書類を確認して、計画をチェックしましょう。「支給申請に必要な要件を誤って理解していた」「計画書提出時は不要でも支給申請時に必要な書類を見落とした」などのミスを防ぐことができるからです。

前述の通り、実施途中で計画に変更が生じた場合、変更届の提出をすることも重要です。

必要書類をしっかりと揃える

助成金受給の2つ目のコツは、必要書類をしっかりと揃えることです。特に、支給申請時に修正のきかない書類は致命傷になりかねません。計画段階の賃金規定が整備されていなくて計画実施時に行った改善策が確認できない場合などは、助成金を受けられなくなってします。

前述の「必要書類チェックリスト」を再確認しましょう。また、専門家に申請サポートを依頼するという選択肢もあります。正社員化コースの場合は必要書類が最大23種類もあり、チェック漏れを防ぐには相当の時間と労力を要します。

当社「補助金バンク」を活用すれば、面倒な手続きを行わなくて済み、チェック漏れなどによって助成金がもらえないという事態を回避できます。

スケジュール管理を徹底する

助成金受給の3つ目のコツは、スケジュール管理を徹底することです。事前準備・計画・実施・支給申請の手順や計画実施の手順を間違えると、助成金をもらえないこともあるからです。

「正社員化コース」の場合、事前準備から申請までの手順は下記の通りです。

  1. 対象となる労働者を6ヶ月以上雇用。計画提出前に、労働組合等の労働者代表の意⾒を聴いて計画を策定。同時に、現行の就業規則などが整備されているかを確認(不備があれば整備の上、労働基準監督署に届出)
  2. キャリアアップ計画書を労働局に提出
  3. 正社員等への転換制度を新設(キャリアアップ計画書提出前に規定を設けていても問題ありません)
  4. 転換制度を盛り込んだ就業規則などを労働基準監督署に届け出
  5. 転換制度に基づいて正社員転換等を行い給与支払
  6. 6ヶ月給与支払い後、2ヶ月以内に支給申請

もし、労働局がキャリアアップ助成金の認定をする前に正社員転換等を行えば、助成金は支給されません。また、助成金は施策実施後の後払いであるため、受給までの資金計画も重要なポイントです。

助成金の最新情報を収集する

助成金の支給要件や支給額は見直しがあるので、最新情報を収集することが重要です。見直し後の規定を満たさなければ助成金がもらえないため、注意が必要です。

参考までに、令和3年度の予算案(決定していません)での見直しポイントを紹介します。

  • キャリアアップ助成金の予算が前年の1,231億円から739億円に大幅減額
  • 障害者正社員化コースが新設(1人当たり最大120万円)
  • 派遣労働者を正規雇用で直接雇用する場合の加算を新設(1人当たり最大36万円) など

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請でよくある失敗例

キャリアアップ助成金の申請から実際に受給するまで1年以上の時間がかかりますが、本当に受給できるかどうかは支給申請後の審査までわかりません。よくある失敗例3パターンを紹介するので、反面教師としてみてください。

申請期限や手順に関する失敗例

申請期限や手順に関する失敗例は、次のようなものがあります。

  • 支給申請期限(6ヶ月目の給与支払いから2ヶ月以内)が過ぎていた。
  • 計画の認定前に、正社員転換を行ってしまった。
  • 転換後の賃金アップが5%を満たしていない(令和3年度より3%)
  • 賞与で5%アップを達成しようとしたが、契約社員も賞与対象のため認められない(令和3年度からは賞与での増額は認められない)。

支給申請期限は1日でも遅れると申請できません。また、実施手順を誤った場合も受給できないケースがあります。

必要書類に関する失敗例

必要書類に関する失敗例は、次のようなものがあります。

  • 就業規則の記載に不備があった
  • 雇用契約書、賃金台帳などに不備があった

就業規則については、改定後だけでなく改定前のものについても不備のため助成金が受給できないケースがあります。長年、就業規則を見直していない場合は要注意です。

また、労働組合などとの事前の協議、労働基準監督署への届け出、従業員への周知も必要です。

事業主の資格に関する失敗例

事業主の資格に関する失敗例は、次のようなものがあります。

  • 労働保険料を納入していない
  • 過去1年間に労働関係法令の違反を行った

労働関係法令の違反とは、残業代の不払い(過小支払い)や36協定違反、雇用保険の加入漏れなどです。また、正社員化した従業員を解雇した場合も助成金は支給されません。

これら3パターン以外にも、要件未達などで助成金がもらえないケースもあります。チェックポイントはたくさんありますが、始めて助成金を申請するときは、すべての手続きを完全に行うのは難しいかもしれません。必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は有期雇用社員等を正規雇用社員等に転換、直接雇用した場合に支給される助成金です。
この助成金の特徴は、事前に認定を受けた計画を達成した企業だけが助成を受けられること、生産性要件の達成で加算があること、助成金の支給は後払いになることです。

助成金を確実に受給するには、慎重に計画を策定し計画通りに施策を実施すること、必要書類をしっかり揃えること、スケジュール管理を徹底することが重要です。

受給まで1年以上の期間を要し受給要件も厳格なため、申請サポートを利用することも有効です。面倒な手続きを省きたい場合は「補助金バンク」のご利用を検討ください。

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この記事を書いた人
安田 史朗
この記事を書いた人
安田 史朗
社会保険労務士法人イージーネット 副代表 社会保険労務士 中小企業診断士
事業者には区別しづらい「助成金」と「補助金」の両方に精通しており、多くの中小企業に助成金・補助金の提案~支援を行っている。補助金の審査員経験もあり、士業向け「補助金コンサルタント」養成講座の講師として後進の育成にも力を注ぐ。

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