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【2022】新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金とは

新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金

新型コロナウイルス感染症の影響は瞬く間に広がってしまい、緊急事態宣言に伴ってまず従業員を休業させたという企業も多くありました。そのため、「テレワークを実施させたかったけれど社内制度が整備されていなかった」「せっかくテレワークを導入し従業員に働いてもらうならフレックスタイム制を導入したかったが、社内整備がまだ整っていなかった」という状況がありました。

そこで、この機会を通じて雇用環境の整備が促進されるよう新たな奨励金である「新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金」が設けられたのです。

新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金の概要

東京しごと財団では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を理由として、国が実施する「雇用調整助成金」等を活用し、非常時における勤務体制づくりなど職場環境整備に取り組む企業に奨励金の交付を行っています。新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金の対象は東京都内にある事業者に限られており、その金額は1事業所あたり10万円となっています。なお交付は、1事業所につき1回限りです。

交付要件

概要でもお伝えしたように、新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金では、国が実施する「雇用調整助成金」等を活用したこと、職場環境整備に取り組んだことが必要です。したがって、下記(1)〜(2)のいずれにも当てはまることが要件です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、昨年度(2020年度)はおよそ半分の事業者が雇用調整助成金を利用しています。そのため、多くの事業者が職場環境の整備に取り組むことで、この奨励金の対象になります。

交付要件

  • (1)「雇用調整助成金」又は「緊急雇用安定助成金」、「産業雇用安定助成金」、「両立支援等助成金」のうち、新型コロナウイルス感染症小学校休業対応コース、介護離職防止支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)または育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」のいずれかの交付決定を受けていること
  • (2) 非常時における雇用環境整備に関する現状分析及び具体的な取り組み計画を作成し、取り組み期間中(当奨励金交付決定日から1ヶ月以内)に実施すること

そして、上記(2)を実施後、実績報告期間中(この奨励金交付決定日から2ヶ月以内)に実績報告を行うことで、奨励金が支給されます。

交付対象事業主

交付対象は、以下の(1)~(8)すべての要件に該当する中小企業等であることが求められます。そして、以下の要件は、奨励金の申請日から奨励事業終了後の実績報告日に至るまでの全期間を通じて、いずれもすべてを満 たしている必要があります。

交付対象事業主

  • (1)東京労働局管内に雇用保険適用事業所があること、都内にある労働者災害補償保険適用事業場の事業主であること。ただし、東京都が実施した新型コロナウイルス感染症対策雇用環境整備促進事業において、既に奨励金の 交付を受けた事業所については申請できません。
  • (2)雇用調整助成金等について令和2年1月24日以降、新型コロナウイルス感染症の影響を受 けたことを理由として東京労働局長(産業雇用安定助成金は都道府県労働局長)から支給決定 を受けていること。又は、学校休業対応助成金について、厚生労働省雇用環境・均等局長から支給決定を受けて いること。
  • (3)非常時における雇用環境整備に関する現状分析及び具体的な取り組み計画を作成し、取り組み期間中(交付決定日から1ヶ月以内)に計画を実施すること。
  • (4)東京都政策連携団体、事業協力団体又は東京都が設立した法人でないこと。
  • (5)法人都民税及び法人事業税(個人事業主の場合は、個人都民税及び個人事業税)の未納がないこと。なお、未納とは、納税義務があるにもかかわらず納付していないことをいいます。
  • (6)交付申請日の前日から起算して過去5年間に重大な法令違反等がないこと。
  • (7)労働関係法令を遵守していること。例えば地域別、産業別の最低賃金額や、時間外労働の割増賃金に違反していないこと、時間外・休日労働に関する協定(36協定)を締結することなどが該当します。そして令和2年4月1日から交付申請日の前日までの間において労働基準法に定める時間外労働の上限規制を順守していること、年次有給休暇について年5日を取得させる義務に違反していないことなどは法改正が行われたばかりですので確認が必要です。
  • (8)暴力団員等、暴力団 及び法人その他の団体の代表者、役員又は使用人その他の従業員もしくは構成員が暴力団員等に該当する者でないこと。

ただし、公益財団法人東京しごと財団の理事長が適正と認めない場合は、交付対象とならないことがあります。

新型コロナウイルス感染症による経営への影響を受けたこと

新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことも、この奨励金の要件となっています。

しかし、「雇用調整助成金」または「緊急雇用安定助成金」「産業雇用安定助成金」「両立支援等助成金 (新型コロナウイルス感染症小学校休業対応コース)」「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」も、新型コロナウイルス感染症による経営への影響を受けたからこそ支給される助成金です。これらのいずれかの交付決定を受けているのであれば、新型コロナウイルス感染症による経営への影響を受けたことも満たすはずなので、あまり気にしなくて大丈夫でしょう。

取り組み事業

非常時における雇用環境整備に関する事項について、以下の流れで取り組んでください。交付申請した事業所は、計画書「非常時における勤務制度の整備」に係る具体的な取り組み計画を、社内にプロジェクトチームを設置した上で検討しましょう。このプロジェクトチームは、必ず社内の2名以上で構成し、実施しなければなりません。

新たに取り組む内容は、(取り組み1)、(取り組み2)、(非正規社員に対する取り組み)の3つに分けられます。

取り組み事業

(取り組み1):休業手当に関する取り組みです。正規社員・非正規社員ともに就業規則への規定が必須となります。

(取り組み2):テレワーク(在宅勤務制度)を原則とした、非常時における新たな勤務制度の導入です。既に導入済みの場合や業務の内容になじまない等、導入が適さない場合は、時差出勤勤務制度、 フレックスタイム制度、非常時に取得可能な有給の特別休暇制度のいずれかの制度の導 入もしくは試行で取り組むことが可能です。

(非正規社員に対する取り組み):非正規社員(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者等)も正規社員と同じ勤務制度の導入が必要です。

交付決定日から1ヶ月以内に、検討した制度について導入もしくは試行しましょう。そして、交付決定日から2ヶ月以内に導入もしくは試行した結果を財団へ報告するとともに、報告書の写しを配布(掲示)し、全従業員に明示してください。

勤務制度の整備は事業者ごとに異なると思いますが、休業手当に関する取り組みを実施する場合には就業規則の改定も必要となります。この就業規則の改定についても実施し、同様の対応をすることが求められます。

なお、テレワーク制度を導入し(既に導入済みの企業も含む)就業規則を改定した後は、東京都が実施する「テレワーク東京ルール実践企業宣言」へ登録することとされています。

奨励金手続きの全体像

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を理由として、国が実施する雇用調整助成金等を活用した事業者も多かったと思います。新型コロナウイルス感染症だけでなく、今後の非常時における勤務体制づくりなど職場環境整備を、今のうちに着手しておきましょう。

環境整備によって新たに取り組む内容は、次の3つに分けられます。

環境整備によって新たに取り組む内容

  • (取り組み1): 休業手当に関する取り組み
  • (取り組み2):非常時における新たな勤務制度の導入
  • (非正規社員に対する取り組み)

取り組みに関する計画を策定し、東京しごと財団に申請し、奨励金交付決定から実際に取り組むという流れになります。申請に進む前に、現状分析を行い、非常時における雇用環境整備計画を大まかに策定しておくとスムーズでしょう。

申請の流れ

  • (1) 令和3年10月31日までに、財団へ新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金交付申請書及び非常時における雇用環境整備計画書を提出
    • この計画書をもとに審査が行われ、財団から新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金交付決定通知書が送付されます。
  • (2) 非常時における雇用環境整備の取り組み実施
  • (3) 財団へ新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金実績報告書及び支払金口座振替依頼書を提出
    • 交付決定日から2ヶ月以内に取り組みを終了させ提出してください。

財団から新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金額の確定通知書が送付され、さらに財団から新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る雇用環境整備促進奨励金の振り込みが行われます。

申請に必要な書類

申請に必要な書類は、交付申請時に提出する書類と、実績報告時に提出する書類に分けられます。その他、交付申請の撤回、事業実施計画の中止、申請事業主に係る変更が生じた場合に提出する書類もあります。

交付申請時に提出する書類

  • (1)事業実施計画書兼交付申請書
  • (2)非常時における雇用環境整備計画書
    • この計画書では、計画だけでなく現状分析として「非常時における事業継続体制の確保」「非常時における勤務制度の整備」「非正規社員に対する取り組み」「その他非常時対応として確認しておくべき事項」に関して回答を求められます。
  • (3)雇用調整助成金等や学校休業対応助成金などの支給決定通知書の写し等
  • (4)誓約書
  • (5)法務局で発行された印鑑証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
    • 個人事業主の場合は、代表者の方の居住する区市町村で発行されたものとなります。
  • (6)法務局で発行された納税証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
    • 個人事業主の場合は、代表者の方の居住する区市町村で発行されたものとなります。
  • (7) 会社概要がわかる書類として、履歴事項全部証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
    • 個人事業主の場合は、個人事業の開業・廃業等届出書の写しとなります。

この他に、提出書類セルフチェックリスト(交付申請時)が必要となり、提出代行者が申請する場合や控えに受理印を押印されたものを希望する場合には「事業実施計画書兼交付申請書」の控えや返信用封筒が求められます。

実績報告時に提出する書類

  • (1)実績報告書
  • (2)非常時における雇用環境整備報告書
    • 取り組みを証明する書類を下記の(取り組み1)(取り組み2)のとおり添付しましょう。
      • (取り組み1):正規社員及び非正規社員それぞれ、休業手当の支払いについて規定された就業規則
      • (取り組み2):試行時及び試行以前の勤怠管理簿等
    • 導入もしくは試行を行った証明として、以下のアもしくはイのいずれか
      • ア:改定後の就業規則又は就業規則改定案
        • (取り組み2)について改定した就業規則か、又は就業規則改定案
        • 正規社員及び非正規社員のそれぞれについて提出が必要
      • イ:出勤簿、タイムカード、勤怠システムの記録等
        • 制度利用者1名分の始業時間と終業時間、労働時間等が記録された「試行時の勤怠管理簿」及び「試行以前の勤怠管理簿」
  • (3) 支払金口座振替依頼書
  • (4) 振込口座の通帳又はキャッシュカード等口座名義人(カタカナ)が記載されているものの写し

その他、提出代行者が申請する場合や控えに受理印を押印されたものを希望する場合には、「実績報告書」の控えや、返信用封筒が求められます。

申請受付期間

令和3年4月30日(金)~令和3年10月31日(日)までとされています。以前は令和3年6月30日までとなっていましたが、令和3年10月31日(日)の消印有効と延長されました。

この期間内に、事業計画書兼交付申請書を提出しなければなりません。つまり、非常時における雇用環境整備計画はそれ以前から考えておく必要があります。

非常時と聞くと、新型コロナウイルスの影響を思い浮かべるかもしれませんが、地震や台風なども想定して考えておく必要があります。また、就業規則の変更の有無など、今回の雇用環境の整備にともなって必要となる手続きも確認しておくと、申請後によりスムーズに進めることができるでしょう。

まとめ

奨励金の金額は1事業所10万円であり、交付は1事業所につき1回限りです。奨励金の金額は小さい方でしょうが、対象となる国の助成金制度で受給実績があれば対象となりますし、積極的に奨励金の取得をしてほしいところです。

手続きの難易度としては、この奨励金は簡単な部類に入るでしょう。そして奨励金の金額が少額なためスポットで受託する専門家を見つけるのは苦労するでしょうし、仮に見つかったとしても報酬を支払うと手残り金額がかなり少なくなってしまいます。そのため、顧問の社労士がいる方は相談されると良いでしょうが、そうでない方は自社での奨励金申請がおすすめです。

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この記事を書いた人
安田 史朗
この記事を書いた人
安田 史朗
社会保険労務士法人イージーネット 副代表 社会保険労務士 中小企業診断士
事業者には区別しづらい「助成金」と「補助金」の両方に精通しており、多くの中小企業に助成金・補助金の提案~支援を行っている。補助金の審査員経験もあり、士業向け「補助金コンサルタント」養成講座の講師として後進の育成にも力を注ぐ。

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