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設備投資や低炭素化など、国や自治体の政策目標に合わせて、さまざまな補助金があります。でも種類が多すぎて、どの補助金が自社に合うのかわからない……そんな事業者の方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、中小企業におすすめの補助金を4種類紹介します。
補助金と助成金について
国や地方公共団体からもらえるお金には、「補助金」や「助成金」があります。違いを意識している人は少ないですが、厳密にいうと助成金と補助金は異なります。具体的には、それぞれ次のような特徴があります。
補助金の特徴
補助金は、経済産業省などが販路開拓や新製品開発、生産性向上などのため実施しています。代表的なものには、後ほど紹介する「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」などがあります。
いずれも採択審査があり、採択率は3割~6割程度であり、申請しても必ずもらえるとは限りません。
助成金の特徴
助成金は、主に厚生労働省が雇用や人材教育等のために実施しています。代表的なものには、「雇用調整助成金」「キャリアアップ助成金」等があります。
補助金と異なり、助成金は従業員の処遇改善など要件を満たせば、ほぼもらうことができます。
中小企業におすすめ①:ものづくり補助金
中小企業向けの代表的な補助金に「ものづくり補助金」があります。ものづくり補助金は、その名のとおりものづくりのための設備投資を支援する補助金ですが、製造業でなくても応募できます。
対象者
中小企業、小規模事業者、特定非営利活動法人が対象です。社会福祉法人や医療法人等は対象になりませんが、個人開業医であれば対象になります。また、個人事業主も対象になります。
対象となる取り組み
対象となる取り組みは、中小企業が行う革新的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資です。したがって、単なる既存事業の設備更新等では対象になりません。
なお、ものづくり補助金は、申請にあたり3~5年で次の項目を達成する計画を作成しなければなりません。
- 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加する
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加する
- 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
付加価値とは、営業利益と減価償却費、人件費を足した金額です。給与支給総額と事業場内最低賃金については、3~5年後に達成できなければ、補助金の返還が求められる場合があります。
補助金は返済不要ですが、無条件に交付されるのではなく、雇用の安定や税収増といった政策目標達成への貢献が義務づけられているともいえるでしょう。
補助金額
補助金上限額は、次のとおり常勤従業員人数によって異なります。
応募枠 | 従業員人数 | 補助金上限額 | 補助率 |
通常枠 | 5人以下 | 750万円 | 原則1/2※ |
6人~20人 | 1,000万円 | 2/3 | |
21人以上 | 1,250万円 |
※小規模事業者、再生事業者は2/3
なお、通常枠の他に「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」の4つの応募枠があり、それぞれ上限額や応募要件が異なります。
申請方法
ものづくり補助金の公募は、4半期ごとに実施されています。公募が開始されたら、次のとおり申請書類を作成し、Jグランツというシステムから電子申請で申請します。
申請手続きで最も骨が折れるのが、事業計画書の作成です。事業計画書は、様式自由で分量のみA410枚以内と決められています。採否は事業計画書に基づく書類審査のみで決定されるので、いかに審査項目を網羅しつつ、わかりやすく書けるかがポイントとなります。
項目 | 内容 |
Jグランツのアカウント申請 | 電子申請に必要なJグランツのアカウントを取得する。 |
申請書類の作成 | 応募書類となる事業計画書を作成する。事業計画書はA4サイズ10枚以内で、自社の強みや特長、補助事業で行う取り組みの優位性などを記載する。 |
電子申請 | 事業計画書および決算書などの添付資料をJグランツシステムに登録して電子申請する。 |
中小企業におすすめ②:事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスで苦境に陥った事業者を支援する目的で2021年度より新設されました。
単なる支援ではなく、抜本的に事業を見直して再構築し、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応し、日本経済の構造転換を促すことを目的とする壮大な目標が掲げられています。そのぶん補助金上限額は8千万円(通常枠)と、他の中小企業向け補助金とは桁違いの大きさです。
対象者
対象者は以下の要件を満たす中小企業・中堅企業です。
- 2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること
対象となる取り組み
対象となるのは、次の要件を満たす取り組みです。
経産省が示す事業再構築指針に沿って事業計画を作成すること
事業再構築指針とはいわば事業再構築のガイドラインです。「新分野展開」「業態転換」「事業転換」「業種転換」「事業再編」の5つの類型が示されており、いずれも新商品の開発や新しい製造方法の導入など、何らかの新規事業への挑戦が求められます。
事業計画は認定経営革新支援機関等と策定すること
認定経営革新等支援機関とは、中小企業を支援できる機関として経済産業大臣が認定した機関です。当社補助金バンクにも、認定経営革新等支援機関が登録されています。
また、補助金額が3千万円を超える場合は、金融機関の確認書も必要になります。事業者だけでなく、認定経営革新等支援機関や金融機関など外部の伴奏支援を受けながら計画作成を進めることが求められます。
事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加する
事業再構築補助金においても、ものづくり補助金と同様に3~5年後に付加価値を年率平均3%以上増やす計画を作成する必要があります。ただし、一部の応募枠を除き、ものづくり補助金のような返還要件はありません。
補助金額
事業再構築補助金も、従業員の人数によって上限額が異なります。
応募枠 | 従業員数 | 上限額 | 補助率 |
通常枠 | 20人以下 | 100万円~4,000万円 | 中小企業者等:2/3(6,000万円超は1/2) |
21~50人 | 100万円~6,000万円 | 中堅企業等:1/2(4,000万円超は1/3) | |
51人以上 | 100万円~8,000万円 |
なお、通常枠の他に「回復・再生応援枠・最低賃金枠」「大規模賃金引上げ枠」「グリーン成長枠」があり、それぞれ上限額や応募要件が異なります。
申請方法
事業再構築補助金も、電子申請を行います。ものづくり補助金と同様に、公募は四半期に一度実施されます。
事業再構築補助金の申請手続きにおいて一番大変なのは、申請書類の作成です。こちらの分量は、ものづくり補助金の事業計画書を上回る15枚です(補助金額が1,500万円以下の場合は10枚)。認定経営革新支援機関の伴奏支援を受けながら計画作成をするので、随時相談しながら進めると良いでしょう。
項目 | 内容 |
Jグランツのアカウント申請 | 電子申請に必要なJグランツのアカウントを取得する。 |
申請書類の作成 | 応募書類となる事業計画書を作成する。事業計画書はA4サイズ15枚以内で、自社の強みや特長、事業再構築の必要性、補助事業で行う取り組みの優位性などを記載する。 |
電子申請 | 事業計画書および決算書などの添付資料をJグランツシステムに登録して電子申請する。 |
中小企業におすすめ③:IT導入補助金
続いて紹介するのは、IT導入補助金です。IT導入補助金は、その名のとおりITツールを導入する際の費用の一部が交付される補助金です。
従来はITツールの購入費のみを対象としていましたが、2022年度はインボイス制度への対応等のため、PCなどハードの購入費も対象になります。
対象者
対象者は、中小企業、小規模事業者の他、個人事業主や社会福祉法人、医療法人、学校法人などが該当します。
対象となる取り組み
対象となるのは、業務効率化やDXのために導入するITツール等の費用で、ITベンダーなどのIT導入支援事業者が事前に登録したツールの中から導入するツールを選びます。ソフトウェアやクラウドサービス利用料だけでなく、導入に必要なコンサルティング費用、教育費用、保守費用等も対象になります。
また、2022年度にはインボイス対応を見据えた「デジタル化基盤導入枠」が創設されました。デジタル化基盤導入枠では、従来対象とならなかったPCなどハードの費用も一部対象になります。
補助金額
応募枠は、従来からあった通常枠(A・B類型)に加えて、インボイス対応も見据え、企業間取引のデジタル化推進を目的とするデジタル化基盤導入類型が新設されました。デジタル化基盤導入類型では、補助率が高いだけでなくPC、タブレットなどのハード購入費も対象になります。
また、クラウド利用料も最大2年分対象になるなど手厚くなっています。
A類型 | B類型 | デジタル化基盤導入類型 | ||
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大1年分補助)・導入関連費等 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分補助)・導入関連費等 | ||
補助率 | 1/2以内 | 3/4以内 | 2/3以内 | |
上限額・下限額 | 30万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 | 5万円~50万円以下 | 50万円超~350万円 |
<デジタル化基盤導入類型のみ>
ハードウェア購入費 | PC・タブレット・プリンター・スキャナーおよびそれらの複合機器:補助率1/2以内、補助上限額10万円 |
レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万 |
申請方法
IT導入補助金と他の補助金の申請方法の大きな違いは、詳細な事業計画作成が不要で、比較的申請手続きの負荷が低いことです。
交付申請手続きは、IT導入支援事業者との二人三脚で進めます。IT導入支援事業者はITベンダーなどで、導入ツール選定のサポートなどを行います。公募もほぼ毎月のように実施されており、申請しやすくなっています。
項目 | 内容 |
Jグランツのアカウント申請 | 電子申請に必要なJグランツのアカウントを取得する。 |
IT導入支援事業者の選定 | ITツール導入のアドバイザーとなるIT導入支援事業者を選定 |
ITツールの選定 | IT導入支援事業者からの提案等を受けて、導入するITツールを選定 |
電子申請(交付申請) | Jグランツより必要事項を登録、交付申請する。 |
中小企業におすすめ④:小規模事業者持続化補助金
最後に紹介するのは、小規模事業者持続化補助金です。その名のとおり、従業員20名以下(製造業の場合)の小規模事業者や個人事業主しか申請できません。
従来の補助金額は50万円でしたが、2022年度は最高200万円まで交付される特別枠が設定されています。
対象者
対象者は、以下の小規模事業者または個人事業主です。
<小規模事業者>
業種 | 常勤従業員数 |
製造業その他・宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
卸売業・小売業・サービス業 | 5人以下 |
対象となる取り組み
対象となるのは、小規模事業者が自社の経営を見直し、経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取り組みです。
補助金額
補助金額は、通常枠であれば上限50万円ですが、インボイス枠を除く特別枠では最高200万円まで支援してくれます。
通常枠 | 特別枠 | |||||
賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 | インボイス枠 | ||
補助率 | 2/3 | 2/3 | 2/3 | |||
上限額 | 50万円 | 200万円 | 100万円 |
申請方法
小規模事業者持続化補助金の公募は、四半期に1回程度実施されます。
小規模事業者持続化補助金では、Jグランツによる電子申請だけでなく郵送での申請も受け付けてくれます。ただし、電子申請すれば審査で加点されるため、電子申請をおすすめします。
また、小規模事業者持続化補助金では、商工会議所または商工会の支援を受けることが応募要件になっています。会員になっていなくても良いので、最寄りの商工会議所または商工会に行き、相談に乗ってもらうことで、「事業支援計画書」を発行してもらえます。
項目 | 内容 |
Jグランツのアカウント申請 | 電子申請に必要なJグランツのアカウントを取得する(郵送で申請する場合は不要)。 |
申請書類の作成 | 応募書類となる事業計画書を作成する。事業計画書はA4サイズ8枚以内で、自社の強みや特長、補助事業で行う取り組みなどを記載する。 |
商工会議所または商工会の支援 | 最寄りの商工会または商工会議所に申請書類を持参して事業支援計画書の交付を受ける。 |
電子申請または郵送で申請 | 事業計画書および決算書などの添付資料をJグランツシステムに登録して電子申請する。または郵送でも申請可能。 |
補助金を申請するメリット・デメリット
最後に、補助金を申請するメリット、デメリットについて触れておきましょう。
メリット
まずは、メリットとして次の3点が挙げられます。
返済不要の資金調達
メリットは、なんといってもお金がもらえること、これに尽きるでしょう。補助金は返済不要の資金調達です。当然ながら利息もかかりません。申請手続きなどに手間はかかりますが、手間を上回る以上の価値があるといえるでしょう。
経営力向上
補助金申請では、申請書類として事業計画の作成が求められます。事業計画など金融機関に融資を受けるとき以外は作成したことがない……そんな事業者も多いと思いますが、事業計画を作成することによって自社の強みや弱みをしっかり見つめ直すことができます。
自社の資源をどのように使っていくかを考える機会になり、経営力の向上につながります。
信用力の向上
採択されたということは、公的機関がお金を出しても良いと認めた事業といえます。補助金の獲得で公的機関のお墨付きが得られたとアピールすることができ、取引先や金融機関等からの信頼度が上がることが期待できます。
デメリット
一方、デメリットとしては次の3点が挙げられます。
厳しい採択審査
いずれの補助金にも採択審査があり、申請したからといって必ずもらえるものではありません。しかも、そのハードルは決して低くはなく、採択率は3割~6割程度です。
補助金だけを当てにするのではなく、融資などその他の資金調達策も確保しておきましょう。
補助金は後払い
補助金は原則後払いです。採択されてすぐにもらえるのではなく、補助事業が完了してから支払われるため、1年近く先になることもあります。後から補填されるとはいえ、当面は立替払いが必要のため資金繰りにはくれぐれも留意しましょう。
膨大な手間
申請にはとにかく手間がかかります。事業計画書を中心とする申請書作成に始まり、採択後も実績報告書の作成など煩雑な書類作成があります。これらの書類作成には数十時間かかるともいわれており、簡単にお金がもらえるものではないと心得ましょう。
まとめ
中小企業におすすめの補助金を紹介しました。
気になるのは、やはり採択されるかどうかではないでしょうか?デメリットのところでも触れたように、補助金の採択率は3割~6割。膨大な手間暇かけて申請しても、半数程度は不採択となってしまうのが現実です。
少しでも採択の可能性を高めたいのならば、専門家の力を借りるのも一つの手でしょう。当社補助金バンクでは、補助金申請に精通した中小企業診断士等の専門家が多数登録されています。
ぜひ当社補助金バンクを活用して、専門家の助けも得たうえで、上手に補助金を獲得してください。