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東京都の「介護休業取得応援奨励金」とは?対象企業・要件・申請の流れ

介護休業取得応援奨励金

日本では少子高齢化社会が進んでおり、介護を理由に退職する労働者が増えている現状があります。介護は労働者にとって、経済的、肉体的に負担が大きいため、介護休業などが法律によって整備されています。

しかし、厚生労働省の資料によれば、「介護休業等制度の利用あり」の者は15.7%ですが、このうち「介護休業」を取得した人の割合は3%台にとどまっています。そして、厚生労働省「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究(令和元年)」の結果によると、介護離職経験者が「手助・介護」を機に仕事を辞めた理由は、「仕事と「手助・介護」の両立が難しい職場だったため」が59.4%で最も多かったようです。

介護休業の取得と介護離職ゼロのためには、介護と仕事の両立支援へのサポートはもちろん企業による従業員の方へのアクションが望まれます。このような背景から、介護休業の取得促進に向けた支援があり、東京都でも介護休業の取得に向けて奨励金を用意しています。

介護休業取得応援奨励金とは

介護休業取得応援奨励金は、従業員の介護休業取得を推進する都内中小企業等を支援するものです。東京都の制度ですので、対象企業も対象となる従業員の方も東京都の方に限られています。

都内在勤の従業員(雇用保険被保険者)の方が、合計15日以上の介護休業を取得し継続雇用されていれば、奨励金として25万円または50万円が支給されます。

概要

介護休業取得応援奨励金が支給されるのは、従業員が合計15日以上の介護休業を取得し、原職に復帰して3ヶ月が経過している必要があります。その上で、職場環境を整備したことも要件です。介護休業の取得を促進し、就業継続を後押しすることが制度の狙いとなっています。

東京しごと財団が行っている奨励金ですので、都内中小企業等が対象となります。従業員も都内勤務である常時雇用する従業員を2名以上、かつ申請日時点で6ヶ月以上継続して雇用している必要があります。

なお、中小企業とは常時雇用する従業員の数が300人以下の企業です。企業等奨励対象期間は令和3年4月1日(木) ~令和4年3月31日(木)とされていますが、予算の範囲を超えた場合は、終了日より前に申請受付を終了します。

介護休業とは

介護休業取得応援奨励金では、育児・介護休業法に定める取り組みを上回る制度を定め就業規則に定める必要があります。そのため、現状の介護休業についても把握しておくと良いでしょう。

介護休業は、労働者が要介護状態にある対象家族を介護するために取得できる休業です。負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある場合に利用できます。

雇用期間が1年未満や、1週間の所定労働日数が2日以下の場合などは介護休業を取得できないことがありますが、正社員の方は取得することができます。介護休業を取得することができる日数は、対象家族1人につき通算して93日に達するまで3回を上限として分割取得可能です。

実際の介護はこの期間だけで終わることは少ないことから、さらなる休業が求められることでしょう。

奨励金の金額

奨励金の額は、介護休業取得日数により2段階にわけられています。

  • 合計15日以上:25万円
  • 合計31日以上:50万円

なお、申請は1事業者につき、今年度中1回までとされています。実際の休業取得日数は事業主側が決められるものではなく、従業員が介護をする対象家族の状態によって変わります。会社として努力できることは、従業員の方が介護休業を長く取りやすい環境を作ることにとどまります。

介護休業取得応援奨励金に向けた制度の整備

介護休業取得応援奨励金の要件には、既存の制度を変更して介護休業を取得しやすくする必要があります。そのため、奨励金の申請前までに、就業規則を作成して労働基準監督署に届出を行っていることが求められます。

労働関係法令の遵守も必要で、最低賃金額や年次有給休暇について年5日を取得させる義務に違反していないかチェックしましょう。

この奨励金では、「セクシュアルハラスメント等を防止するための措置をとっている」ことも要件の一つですので、まだの事業者の方は対策を取りましょう。

対象企業

対象企業として主な要件は、次の①~⑩のすべてを満たしていることです。

  • ①都内で事業を営んでいる常時雇用する従業員の数が300人以下の中小企業等であること
  • ②都内勤の常時雇用する従業員を2名以上、かつ申請日時点で6か月以上継続して雇用していること
  • ③都税の未納付がないこと
  • ④過去5年間に重大な法令違反等がないこと
  • ⑤労働関係法令を遵守していること
  • ⑥風俗営業、性風俗関連特殊営業、接客業務受託営業およびこれに類する事業を行っていないこと
  • ⑦暴力団等でないこと
  • ⑧雇用保険の被保険者として雇用される従業員が介護休業を開始し、合計15日以上取得したこと
  • ⑨⑧の従業員が、支給申請日時点で都内の事業所に所属し、都内事業所に勤務していること
  • ⑩⑧の従業員が、介護休業に引き続き原職に復帰し、継続雇用されていること

奨励金取得の環境整備要件

育児・介護休業法に定める取り組みを上回る制度を、令和3年4月1日以降に就業規則に定めることが求められます。そのため、次の①~④のいずれかの制度を新設しましょう。現状の介護休業で定められた内容を上回るためには、( )内の取り組みが必要です。

  • ①介護休業期間の延長(対象家族1人につき通算93日を超える介護休業)
  • ②介護休業の取得回数の上乗せ(3回を超える取得)
  • ③介護休暇の取得日数の上乗せ(1人の場合6日以上、かつ2人以上の場合11日以上)
  • ④時間単位の介護休暇導入(中抜けを認めるもの)

なお、育児・介護休業法を上回るか否かは、作成した就業規則の施行日時点で施行されている法律を基準として判断されます。

介護休業取得応援奨励金の申請の流れ

介護休業取得応援奨励金の申請の流れは次のとおりです。

  • ①介護休業取得(合計15日以上)
  • ②元職復帰(3ヶ月)
  • ③申請(2ヶ月以内):申請書を元に審査が行われます。
  • ④奨励金請求書兼口座振替依頼書:奨励金が振り込まれます。

申請可能な期間に限り受付することができます。

申請可能な期間とは、合計15日以上の介護休業を取得した後、介護休業に引き続き原職に復帰し、3ヶ月が経過した日の翌日から2ヶ月以内です。ただし、令和3年4月1日(木)~令和4年3月31日(木)でなければなりません。

まとめ

介護休業の取得を促しながらも、同時に介護離職をできるだけ減らすため、東京しごと財団では介護休業取得応援奨励金を実施しています。

合計15日以上の介護休業を取得した後、原職に復帰し、3ヶ月以上継続雇用されている都内在勤の従業員がいる、育児・介護休業法に定める取り組みを上回る制度を就業規則に定める、などの要件を満たすことで奨励金が支給されます。奨励金の額は、介護休業取得日数により、25万円または50万円です。

この奨励金に興味があるものの、法令遵守や社内制度の整備がネックになる事業主の方は多いでしょう。そんなときには、当社補助金バンクの活用を検討してみてください。補助金バンクは無料で専門家とマッチング・相談をすることができるプラットフォームです。奨励金や補助金、助成金に強い専門家が多数在籍していますので、貴社にぴったりな専門家を探すことができます。

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この記事を書いた人
安田 史朗
この記事を書いた人
安田 史朗
社会保険労務士法人イージーネット 副代表 社会保険労務士 中小企業診断士
事業者には区別しづらい「助成金」と「補助金」の両方に精通しており、多くの中小企業に助成金・補助金の提案~支援を行っている。補助金の審査員経験もあり、士業向け「補助金コンサルタント」養成講座の講師として後進の育成にも力を注ぐ。

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