コロナ禍で、急速にテレワークが普及しました。2020年春の緊急事態宣言下に急遽テレワークを導入した企業も多いでしょう。
一方で、「テレワークで生産性が落ちた」「テレワークでコミュニケーションがうまくいかない」などお悩みの声も聞かれます。テレワークでも生産性を維持しようとすれば、コミュニケーションツールの導入などある程度の環境整備が必要です。
今回は、テレワークに必要なツール等に使える補助金と助成金を紹介します。
テレワークについて
テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。緊急事態宣言下では、とにかく出勤を減らすことを最優先にテレワークを実施した企業も多かったでしょうが、本来は業務の洗い出し、対象者の選定、ツールの準備などきちんと手順を踏んで導入することが必要です。
以下、テレワーク導入のポイントについて解説します。
テレワーク導入のポイント
テレワーク導入にあたって、業務の洗い出しや労務管理の整備、情報通信機器・システムの準備が必要になります。
業務の洗い出しと対象者の選定
テレワーク導入にあたってまず必要なことが、業務の洗い出しです。業務単位で以下の3つに分類してみましょう
- 現状でもテレワークで実施できる業務:資料作成、企画立案など
- 現状ではテレワークで実施できない業務:資料の電子化が進めば可能な業務、コミュニケーションツールの改善で可能な業務など
- テレワークで実施できない業務:会社や工場などでしかできない物理的作業など
業務の洗い出しができたら次は対象者の選定です。緊急事態宣言下だけでなく、平時でも運用できるように対象者選定については一定の基準を設けたら良いでしょう。また、業務上の都合だけでなく、従業員本人の希望も考慮するようにしましょう。
テレワーク導入に必要な労務管理
テレワークにおいても、労働基準法等の各種労働法規は通常勤務と同様に適用されます。週1、2回程度のテレワークであれば、既存の労務管理方法を大きく変える必要はありませんが、テレワーク固有の事柄もあるので、以下のような規定を整理しましょう。規定については、就業規則そのものを改定する他、「テレワーク勤務規定」を別途設ける方法があります。
テレワーク勤務規定の設定例
- テレワークの定義
- テレワークの対象者
- テレワーク中の服務規律
- テレワーク勤務用の労働時間を設定する場合、その労働時間に関する規定
- ※テレワークの労働時間は、通常の労働時間のほか、一定時間働いたとみなす「事業場外労働みなし労働時間制」、「フレックスタイム制」、「裁量労働時間制」などいずれも可能。
- 通信費・光熱費の負担
在宅勤務時の光熱費や通信費を会社と従業員のどちらが負担するかあらかじめ取り決めをしておきます。一律で在宅勤務手当を支払う企業もあります。また、テレワーク勤務者が増えれば、人事評価の仕組みを見直す必要があるかもしれません。そんなときは、社労士など専門家の力も借りて上手に見直していきましょう。
テレワーク導入に必要な情報通信機器・システム
次に、情報通信機器の整備です。テレワークに必要なツールは以下のものが考えられます。
テレワーク導入に必要な情報通信機器・システム
- パソコン、タブレット、携帯電話等の端末など
- 各種ツール
- Web会議システム
- チャットツール
- タスク管理ツール
- 情報共有システム
- 勤怠管理ツール
- リモートアクセスツール
- 仮想オフィスツール など
会社のパソコンを貸与する場合は、データを端末のハードディスクに保存せず、サーバー上に保存するなどセキュリティの確保が欠かせません。自宅のパソコンを使用する場合は、ウィルス対策ソフトがきちんと最新の状態にアップデートされているかなどについて確認が必要です。
また、テレワーク用のさまざまなツール・システムがあります。Web会議システムだけでなくチャットツールなどコミュニケーションを円滑にするためのものも少なくありません。
とりあえずノートパソコンを社員に持たせて在宅勤務をさせているが、「何かうまくいっていない」と感じておられる経営者の方は、テレワークツールを活用されるのも一案です。補助金を活用してテレワークツールの導入を検討してみてください。
テレワークツール製品の詳細等について、下記をご参照ください。
- 中堅・中小企業におすすめのテレワーク製品(出典:一般社団法人日本テレワーク協会ホームページ)
テレワーク導入でもらえる国の補助金(助成金)
テレワークにはさまざまなツールが必要です。また、導入にあたっての規定の整備など、自社だけでは難しく、専門家にコンサルティングを依頼することもあるでしょう。そんなときに使える補助金(助成金)を紹介します。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
テレワークでもらえるお金としては厚生労働省の「助成金」が代表的ですが、毎年のように名称や内容が変更されます。昨年2020年度は「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」という名称で実施されていましたが、2021年度は「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」として実施される予定です。
ちなみに、昨年2020年度は応募者が多かったため、8月で募集が終了しました。2021年度の実施内容の詳細はまだ発表されていませんが、申請受付が始まり次第早めの申請をおすすめします。以下、概要を解説します。
対象の取り組み
まず、テレワーク導入・実施計画書を作成し、労働局に提出して認定を受けます。認定された計画に基づき以下の取り組みが助成対象となります。なお、就業規則等にテレワーク関する制度を規定することが必要です。
助成対象費用
- テレワーク用通信機器の導入※
- 労務管理担当者、労働者に対する研修
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則等の作成・変更
※令和3年度の公募要領はまだ出ていませんが、これまでの助成金の流れから考えるとパソコンやタブレット、携帯電話等の機器は汎用使用ができるため、助成対象とならない可能性が高いです。ただし、シンクライアントパソコン(ハードディスク装置を持たず、ファイルを端末内に保存しないパソコン型機器)は助成対象です。
支給金額
テレワーク導入の実績基準を満たした場合に支給される「導入助成」と、離職率が1年後に基準を超えた場合に追加で支給される「目標達成助成」の2段階になっています。最大で200万円交付されます。
導入助成
テレワーク実績基準 | 助成金上限額/助成率 |
---|---|
評価期間(3ヶ月)に1回以上対象労働者全員がテレワークを実施する。
又は 評価期間(3ヶ月)に対象労働者がテレワークを実施した回数の週平均を1回以上とする。 |
助成率30%
上限額100万円又は20万円×対象労働者数の低い方 |
目標達成助成
離職率目標 | 助成金上限額/助成率 |
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計画期間後1年間の離職率が、計画提出前2年間の離職率以下
かつ 計画期間後1年間の離職率が30%以下 |
助成率20%<35%>※
上限額100万円又は20万円×対象労働者数の低い方 |
※「生産性」が3年前と比較して6%以上増加していると助成率が35%にアップします。生産性とは、以下の営業利益等からなる『付加価値』を従業員数で割った数値です。
生産性 = 付加価値(営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷雇用保険被保険者数
厚生労働省の助成金は「生産性」をアップさせると助成金もアップするものが多数あります。営業利益が3年前より増えている、設備投資をして減価償却費が増えている、また従業員数が減ったなどのケースで生産性が向上している可能性があります。
一見複雑そうにみえますが、専用のエクセルシートに決算書の数値を転記するだけです。助成金を増やすチャンスなので見逃さないようにしましょう。なお生産性の伸びが6%未満でも事業性評価※を得られたらOKです。
※ 事業性評価とは
都道府県労働局が、助成金を申請する事業所の承諾を得た上で、事業の見立て(市場での成長性、競争優位性、事業特性及び経営資源・強み等)を与信取引等のある金融機関に照会を行い、その回答を参考にして、割増支給の判断を行うものです。
なお、本サイト記載の情報は令和3年度厚生労働省の予算概算要求に基づいて記載しています。応募にあたっては必ず最新の申請手引きやパンフレット等をご確認ください。
出典:厚生労働省 テレワーク関係の 主な概算要求状況について
IT導入補助金特別枠
テレワークでもらえる国の補助金(助成金)に経済産業省のIT導入補助金もあります。もともとはITツール導入のための補助金でしたが、コロナ禍を機にテレワーク環境の整備費用も対象に加わりました。
2021年度もIT導入補助金新特別枠のD類型として実施されます。採択審査があり、近年採択率は低下傾向にあります。申請しても必ずもらえるものではありませんが、離職率等で補助金額が左右されないので、厚生労働省の助成金よりも使い勝手は良いかもしれません。
対象の取り組み
中小企業のテレワーク環境の整備のための費用で、以下の要件を満たすITツールの導入が対象です。
- 導入するITツールが非対面・非接触に資するものであること
- 業務プロセスが2プロセス以上含まれるITツールを導入すること
- 導入するITツールがクラウドに対応していること
対象となる経費および補助率
対象経費 | 補助額および補助率 |
---|---|
ソフトウエア費、導入関連費、パソコン、タブレット等のレンタル費用 | 補助額:30万円~150万
補助率:2/3 |
申請方法
ITベンダー等のIT導入支援業者と導入ツールの選定、交付申請の事業計画を作成して申請します。2021年度の公募スケジュールはまだ発表されていませんが、公募期間が決まっていますのでタイミングを逃さないようにしましょう。
また、申請にあたっては、行政サービス申請サイトのGビズIDプライムアカウントが必要です。アカウントの取得には2週間以上かかるので、申請をお考えの場合は早めに取得申請しましょう。
GビズIDプライムアカウント詳細についてはこちらをご参照ください。
なお、本サイト記載の情報は令和3年度経済産業省の予算案概要等に基づいて記載しています。応募にあたっては必ず最新の公募要領をご確認ください。
出典:中小企業庁ホームページ
また、IT導入補助金詳細(2020年度版)についてはこちらをご参照ください。
テレワーク導入でもらえる自治体などの補助金(助成金)
テレワークの補助金は国だけでなく地方自治体も設定しているところがたくさんあり、国よりも補助率や金額が高いものもあります。以下いくつかの地方自治体等が実施しているものをご紹介します。
【東京都】テレワーク定着促進助成金
盲目 | 概要 |
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助成対象事業者 | 1. 常時雇用する労働者が2名以上999名以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等
2. 都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加していること |
助成内容 | テレワーク機器・ソフト等の環境整備に係る経費 |
助成金上限額 | 250万円 |
助成率 | 2/3 |
実施主体 | (公財)東京しごと財団 |
備考 | 2020年度の募集締め切りは2021年2月26日
2021年度の募集等詳細については発表されていません。東京しごと財団ホームページをこまめにチェックしてください。 |
【神奈川県横浜市】職場環境向上支援助成金
盲目 | 概要 |
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助成対象事業者 | 横浜市内に本社を置き、常時雇用する従業員が2名以上の中小企業、個人事業主 |
助成内容 | テレワーク導入にあたって利用する備品機器等の購入費、コンサルティング費用、システム構築費等 |
助成金上限額 | 30万円 |
助成率 | 3/4 |
実施主体 | 横浜市 |
備考 | 2020年度の募集締め切りは2021年3月31日
詳細は横浜市ホームページをご参照ください |
【埼玉県】テレワーク導入支援補助金
盲目 | 概要 |
---|---|
助成対象事業者 | 埼玉県内に事業所を有する従業員300名以下の中小企業
雇用保険適用事業所であること |
助成内容 | Web会議機器等の備品機器購入費、システム構築のための委託費、クラウドサービス利用料等 |
助成金上限額 | 20万円 |
助成率 | 2/3 |
実施主体 | 埼玉県 |
備考 | 2020年度の募集締め切りは2021年3月15日
詳細は埼玉県ホームページをご参照ください。 |
あなたの事業所所在地自治体の補助金・助成金
下記の独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21で、全国の自治体が実施する補助金・助成金が検索できます。ぜひあなたの事業所所在地の自治体がお得な補助金・助成金を公募していないか調べてみてください。
まとめ
テレワークでもらえる補助金・助成金を紹介しました。テレワークを始めるにあたっては、テレワーク規定の整備や人事制度の見直しなど社内規定の整備が重要になってきます。
「何か大変そう」そのように感じたら専門家の助けを借りるのも一案です。当社補助金バンクには、社労士などテレワークの社内規定整備等に経験豊富な専門家が多数登録しています。ぜひ当補助金バンクを活用して、専門家の力を借りながら上手にテレワーク導入を進めてください。