新型コロナウイルスの感染拡大を社会で一丸となって防止し、安全な経済活動を維持するためには、個人だけでなく企業の感染予防対策も重要です。たとえば、パーテーションやサーモグラフィーが設置されているのを街でも頻繁に見かけるようになりました。
もちろん、新型コロナウイルスの感染症拡大を防止しつつ経済活動を維持したいけれど、その導入にかかるコストに不安を抱える中小企業の経営者の方々も多数いらっしゃるでしょう。そこで検討したいのが、中小企業等による感染症対策助成事業です。
中小企業等による感染症対策助成事業とは
新型コロナウイルス感染拡大のため、業界団体や東京都等により、新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインが作成されています。この中小企業等による感染症対策助成事業では、東京都内の中小企業者等に対し、これらのガイドライン等に基づき行う取り組み費用の一部が助成されます。
この助成事業はまず、「(A)単独申請コース」と「(B)グループ申請コース」に分かれており、「(B)グループ申請コース」は、3者以上の中小企業者等で構成されるグループでの共同申請となります。申請するコースによって、対象となる取り組みや対象者、対象経費、助成限度額等に違いがあります。
さらに、「(C)飲食団体申請コース」「(D)コロナ対策リーダー配置飲食店等の申請コース 」があります。ご自身が希望する申請内容や業種が、申請コースと合致するか必ず確認しましょう。
なお、東京都中小企業振興公社のホームページには、「ただ今多数のご申請をいただいており、審査が込み合っております。いつから審査が行われるか、いつ頃審査結果がでるのか、などのお問い合わせに正確に回答することが困難となっております。」と案内されています。想定以上に申込みが多い助成事業となっていますので、興味がある事業者の方は、早めに申請するようにしましょう。5ヶ月経っても音沙汰がなく、問い合わせても答えられないというコンサルタントの声もありました。
単独申請
助成の対象は、政府が定める業種別のガイドライン等に基づく感染予防対策に係る経費の一部です。内閣官房ホームページ掲載の「業種別ガイドライン」、各省庁・東京都・都内区市町村等が作成する「感染予防対策」を目的としたガイドライン等がこれに当たり、 1点あたりの単価が税抜10万円以上の備品購入費、内装・設備工事費がその対象となります。業種別ガイドラインは日々更新されていますので、最新のものを確認しましょう。
主な申請対象者は次のようになっており、東京都内の事業に限られます。
- 中小企業者(会社及び個人事業者)
- 一般財団法人
- 一般社団法人
- 特定非営利活動法人(NPO法人)
- 中小企業団体等
助成率は3分の2とされています。助成限度額は、1店舗(事業所)につき備品購入費のみの場合は50万円、内装・設備工事費を含む場合には100万円(内装・設備工事のうち、換気設備の設置を含む場合200万円)です。
なお、申請下限額も定められており10万円となっています。つまり、助成率が3分の2なので、対象経費の合計は、税抜15万円以上が必要といえます。
グループ申請
「(B)グループ申請コース」の助成対象は消耗品の購入費であり、1点あたりの単価が税抜10万円未満のものです。新型コロナウイルス感染症対策に取り組むのに直接関係するものが対象であり、市販品に限定されています。
ガイドライン等に基づく感染予防対策に直接必要な備品の購入費が対象となりますが、ガイドラインは日々更新されていますので、最新のものを確認する必要があります。
主な申請対象者は、 3者以上の中小企業者等で構成されるグループ(共同申請)、中小企業団体等であり、東京都内の事業に限られます。
助成限度額は、グループ構成企業数に関わらず30万円です。なお「(B)グループ申請コース」では、申請下限額の設定はありません。
各コースの共通点
4つのすべてのコースに共通する部分は、実施・導入場所が東京都内であることです。各コースとも、申請受付期間と助成事業の取り組みの実施する助成対象期間が定められています。取り組みの内容はコースにより異なりますが、助成対象期間内に発注または契約、取得、実施、支払いまでを完了させる必要があります。
その他の共通点として、すべてのコースで郵送による申請が可能です。ただし、4つのコースのうち「(D)コロナ対策リーダー配置飲食店等の申請コース 」だけは、郵送だけでなく電子申請もすることができます。
「(A)単独申請コース」と「(B)グループ申請コース」に限っての共通点は、まず実施・導入場所が東京都内であり、助成率が助成対象経費の3分の2以内(千円未満切り捨て)である点も共通とされています。申請受付期間である令和3年1月4日(月)~令和3年10月31日(日)【当日消印有効】、助成対象期間の令和3年1月4日(月)~令和3年12月31日(金)も共通です。
各コースの違い
「(A)単独申請コース」と「(B)グループ申請コース」では、助成の対象とその金額、助成限度額に違いがあります。
「(A)単独申請コース」は内装・設備工事費がその対象であり、1点あたりの単価が税抜10万円以上です。
「(B)グループ申請コース」は消耗品の購入費がその対象であり、1点あたりの単価が税抜10万円未満のものです。
両者は被らない内容となっています。同一内容(経費)でなければ、各コースでの申請が可能(各コースにおいて、それぞれ1事業者1採択まで)となっています。助成対象の違いに注目して、「単独申請コース」と「(B)グループ申請コース」の両方の申請が可能です。
また、申請は郵送とされています。募集要項記載の送付先に申請書・添付書類を簡易書留等の記録が残る方法で送ることになりますが、コースによって送付先が異なるため注意してください。
単独申請コースの内容
内閣官房ホームページ掲載の「業種別ガイドライン」、各省庁・東京都・都内区市町村等が作成する「感染予防対策」を目的としたガイドラインから、「業種別ガイドライン」を確認できます。このガイドライン等に基づく感染予防対策に係る経費の一部が助成されます。
助成の対象となる取り組みは次のものです。
- 換気
- 対人距離の確保飛
- 沫感染防止
- 接触機会の低減
- 体温測定
- 衛生管理
したがって、次のようなものがその対象となります。
- 換気扇設置
- 対人距離が確保されるようになるレイアウト変更工事
- パーテーション設置
- 自動扉への更新
- サーモグラフィー・サーモカメラ設置
- 消毒のため床や壁を清拭できる素材に張替
1点あたりの単価が税抜10万円以上の備品購入費、内装・設備工事費がその対象です。
助成率は3分の2とされており、助成限度額は次の通りです。
- 備品購入費のみの場合:50万円
- 内装・設備工事費を含む場合:100万円(内装・設備工事のうち、換気設備の設置を含む場合は200万円)
たとえば、助成対象となる定価税抜30万円の備品を購入した場合、30万円の3分の2である20万円が助成金で支払われます。残りの10万円と消費税分の3万円は事業者が負担することになります。
グループ申請コースの内容
3者以上の中小企業者等がグループを形成し、新型コロナウイルス感染症対策に資する共通の取り組みを実施することで、基本的な感染症対策の面的広がりを促進する狙いがあります。そのため、申請した中小企業者等は、グループ内で共通して取り組む感染症対策(飛沫感染防止、換気、3密回避などの感染予防対策の取り組み)を各店舗や事業所で実践しなければなりません。
「(B)グループ申請コース」の助成対象は消耗品の購入費であり、1点あたりの単価が税抜10万円未満のものでした。具体例には次のものがあります。
- 消毒液
- マスク
- フェイスシールド
- ゴーグル
- 使い捨て手袋
- アクリル板
- 透明ビニールシート
- パーテーション
助成限度額は、グループ構成企業数に関わらず30万円です。同一内容(経費)でなければ、各コースでの申請が可能となっていますので、「単独申請コース」と「(B)グループ申請コース」の両方の申請を検討される方もいらっしゃるでしょう。この場合には、納税証明書や登記簿謄本もそれぞれ提出する必要があるため準備が必要です。
飲食団体申請コースの内容
「中小企業等による感染症対策助成事業」のうち、都内の法人格を有する団体等のみが申請可能です。主な助成対象経費は次のような指定された消耗品の共同購入費です。
- CO2濃度測定器
- アクリル板
- 消毒液
- ビニールシート
- 体温計
1点あたりの購入単価が税別10万円未満のものに限られます。助成限度額は、店舗数×10万円とされています。助成率は、助成対象経費の4/5以内(千円未満切り捨て)であり、「(A)単独申請コース」と「(B)グループ申請コース」と異なります。
申請受付期間である令和3年3月22日(月)~令和3年10月31日(日)【当日消印有効】、助成対象期間の令和3年3月22日(月)~令和3年12月31日(金)です。なお、実績報告は助成事業終了後、原則15日以内の提出なので、令和4年1月15日(金)が提出の最終締切日となります。
申請方法は郵送ですが、送付先はコースによって異なっているため注意が必要です。
コロナ対策リーダー配置飲食店等の申請コースの内容
東京都による研修を修了したコロナ対策リーダーを配置している店舗において、事業者が取り組む新型コロナウイルス感染防止対策に係る消耗品の一部の購入費用を助成し、感染症対策の取り組みをさらに推進することを目的としています。
助成対象経費は次の1~6の条件に適合する経費であり、1点あたりの購入単価が税抜10万円未満のものに限られます。
- 助成対象の消耗品購入にあたっての必要最小限の経費
- 購入した「消耗品名」「単価」「数量」「購入先」「購入時期」の確認が提出書類(領収書又はレシート)から可能な経費
- 助成対象の消耗品購入として明確に区分できる経費
- 生業かつ主要業務とする業者から直接購入するもの
- 申請対象となる店舗で使用する消耗品の経費(ポイントカード等によるポイントを利用した場合のポイント分は除きます。)
- CO2濃度測定器の購入費、アクリル板及びそれに類するものの購入費、消毒液及びそれに類するものの購入費
助成限度額は、店舗数×3万円とされています。1回当たりの申請可能店舗の上限は10店舗なので、1回あたりの助成限度額は30万円ですが、10店舗を超える場合は複数回に分けて申請することができます。助成率は、助成対象経費の4/5以内(千円未満切り捨て)であり、申請額に下限額はありません。
このコースだけ電子申請が可能となっており、郵送の場合とは申請受付期間の開始が異なります。郵送の申請受付期間は令和3年4月23日(金)~令和3年10月31日(日)【当日消印有効】、電子申請の申請受付期間は令和3年5月1日(土)~令和3年10月31日(日)とされています。助成対象期間は、電子申請の場合も郵送による場合も同じであり、令和3年4月1日(木)~令和3年10月31日(日)までとされています。
中小企業等による感染症対策助成事業の申請の流れ
「(A)単独申請コース」「(B)グループ申請コース」「(C)飲食団体申請コース」の申請の流れは共通しています。
- ①交付申請:書類審査が行われ、問題がなければ交付決定されます。
- ②取り組み実施
- ③助成対象経費報告(実績報告):完了検査が行われ、助成金額が確定します。
- ④助成金申請:助成金の振込が行われます
次に、「(D)コロナ対策リーダー配置飲食店等の申請コース 」の申請の流れです。
- ①コロナ対策リーダー研修
- ②助成対象消耗品の購入・対策実施
- ③助成金交付申請書類・領収書等の提出
これをもとに、申請書類の審査や審査結果の通知が行われ、助成金が交付されます。申請書に不備があった場合は申請書類が受理されません。不備が訂正された段階から審査開始となります。
まとめ
中小企業等による感染症対策助成事業は、東京都内の中小企業者等が、新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン等に基づき行う取り組み費用の一部が助成されます。
「(A)単独申請コース」「(B)グループ申請コース」「(C)飲食団体申請コース」「(D)コロナ対策リーダー配置飲食店等の申請コース 」の4つのコースに分かれており、内容が大きく異なっています。そにため、適切なコース選択が求められます。
この助成事業は想定以上に申込みが多くなっているようなので、ご興味をお持ちの方は早めの対応が必要です。また、コースが4つあり、2つ以上の申請をした方が有利なケースもあるため、専門家へご相談したほうが良いでしょう。
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