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2021年11月30日(月)に、中小企業庁が「事業再構築補助金」の第3回公募の採択結果を発表しました。「jGrants(Jグランツ)」上で受け付けられた申請件数は、第2回公募であった前回より493件減少した20,307件となっています。
今回は、過去3回にわたって公募された「事業再構築補助金」の採択結果を基に、採択の傾向や結果の比較を解説します。事業者のみなさまの事業計画策定の参考にして頂ければ幸いです。
事業再構築補助金の過去3回公募の採択結果
2021年9月21日(火)に申請受付を終了した第3回公募では、新しい類型の創設や補助上限の見直し、申請要件の緩和など、過去2回の公募から大幅な運用の変更が行われました。
これらは2021年10月の最低賃金引上げへの影響を考慮したもので、長引く「コロナ禍」でも前向きに新しい事業に取組み、売上高が増加または維持されていたとしても利益が圧迫されている事業者に配慮した変更と考えられます。
第1回公募の結果
第1回公募の結果は、2021年6月18日(金)に発表されました。
- 応募件数:22,231件
- 申請要件を満たしたもの:19,239件
となっており、13.4%もの申請が審査に俎上にのることなく不採択となっています。厳正な審査の結果、
- 申請要件を満たしたもののうち採択となったもの:8,016件
となり、採択率は36.0%となりました。
件数(単位:者数) | 中小企業等 | 中堅企業等 | 合計 | ||||
通常枠 | 特別枠 | 卒業枠 | 通常枠 | 特別枠 | V字回復枠 | ||
①システムで受け付けた件数 | 16,897 | 5,167 | 80 | 71 | 14 | 2 | 22,231 |
(応募件数) | |||||||
②うち、書類不備がなく、申請要件を満たした件数 | 14,783 | 4,315 | 69 | 60 | 11 | 1 | 19,239 |
(申請件数) | |||||||
③採択件数 | 5,092 | 2,859 | 45 | 12 | 7 | 1 | 8,016 |
申請類型別に見ると、応募件数の少ない「卒業枠」と「V字回復枠」を無視すれば、「緊急事態宣言特別枠」の採択率55.3%に全体が引き上げられた形であり、補助事業のメインである「通常枠」は30.0%と3~4社に1社が採択という結果でした。
第2回公募の結果
第2回公募の結果は、2021年9月2日(火)に発表されました。応募件数は第1回公募より1,431件減った20,800件、そのうち申請要件を満たしたものが18,333件あり、9,336件が採択という結果になっています。
件数 | 中小企業 | 中堅企業 | 合計 | ||||
通常枠 | 特別枠 | 卒業枠 | 通常枠 | 特別枠 | V字枠 | ||
①システムで受け付けた件数(応募件数) | 14,800 | 5,884 | 48 | 59 | 9 | 0 | 20,800 |
②うち、書類不備等がなく、申請要件を満たした件数(申請件数) | 13,174 | 5,071 | 36 | 45 | 7 | 0 | 18,333 |
③採択件数 | 5,367 | 3,919 | 24 | 21 | 5 | 0 | 9,336 |
またしても、応募件数のうちの11.8%の申請が審査以前で不採択となっていますが、採択率は44.9%と第1回公募と比較して8.9ポイント向上しています。「緊急事態宣言特別枠」の採択率66.6%と第1回公募同様、高い水準にあったことに加え、メインである「通常枠」も36.3%と向上が見られました。
第3回公募の結果
第3回公募の応募総数、は第2回公募より493件減った20,307件と、下がり幅は前回と比較して減少しています。第3回公募から「事業再構築補助金」の必須要件である「売上高10%減少」の対象期間が2020年10月以降から2020年4月以降に拡大され、事業再構築のために新たに取組む事業の「新規性」の判定においても、「過去に製造等した実績がない」から「コロナ前に製造等した実績がない」に変更されたため、これまで応募を断念していた事業者にも門戸が開かれました。
採択件数は9,021件、採択率44.4%という結果になっており、44.8%であった第2回公募と比較して0.4ポイント減とほぼ同水準となっています。
件数 | 通常枠 | 大規模賃金引上枠 | 卒業枠 | 緊急事態宣言特別枠 | 最低賃金枠 | 合計 |
①システムで受け付けた件数(応募件数) | 15,423 | 20 | 44 | 4,351 | 469 | 20,307 |
②うち、書類不備等がなく、申請要件を満たした件数(申請件数) | 14,103 | 18 | 37 | 3,933 | 428 | 18,519 |
③採択件数 | 5,713 | 12 | 20 | 2,901 | 375 | 9,021 |
申請枠別に見ると、「通常枠」と「特別枠」についてはそれぞれ37.0%、66.6%と前回とほぼ同水準ですが、「卒業枠」については45.4%と前回と比較して4.6ポイント減少しています。
また、第3回公募から新たに創設された「最低賃金枠」と「大規模賃金引上枠」は79.9%と60.0%とかなり高い採択率となっています。さらに、過去2回の公募では10%を超える申請が書類不備等で計画の内容を審査されることなく不採択となっていましたが、第3回公募ではそれが8.8%となっています。事務局よりの注意喚起や「よくある電子申請の不備」の資料提供により、申請者自身や認定支援機関のチェックにも力が入ったと考えられます。
第4回公募の結果
第4回公募の応募総数は、第3回公募より634件減った19,673件となりました。採択件数は8,810件、採択率は約44.8%という結果になっており、第2回公募や第3回公募とほぼ同水準となっています。
なお、第4回公募から、第3回公募までは公表されていた「うち、書類不備等がなく、申請要件を満たした件数(申請件数)」は公表されなくなっています。
1 | 通常枠 | 大規模賃金引上枠 | 卒業枠 | 緊急事態宣言特別枠 | 最低賃金枠 | 合計 |
①システムで受け付けた件数(応募件数) | 15,036 | 12 | 17 | 4,217 | 391 | 19,673 |
②採択件数 | 5,700 | 6 | 8 | 2,806 | 290 | 8,810 |
採択率を申請枠別に見ると、「通常枠」で約37.9%となっており、前回や前々回とほぼ同水準です。「大規模賃金引上枠」は50%、「卒業枠」で約47.1%となっていますが、これらはそもそも応募件数自体が少ないため、割合の推移を論じることにさほど意味はないでしょう。
また、「緊急事態宣言特別枠」と「最低賃金枠」の採択率はそれぞれ約66.5%と約74.2%となっており、いずれも通常枠よりも高い水準となっています。
参照元:事業再構築補助金第4回公募の結果について(事業再構築補助金事務局)
第5回公募の結果
第5回公募の応募総数は、第4回公募より1,362件増えた21,035件となりました。これは、従来は新事業の売上高が総売上高の10%以上となる事業計画を策定することが必須要件であったものについて、総付加価値額の15%以上でも認めることとなった変更が影響しているものと思われます。
第5回公募における全体の採択件数は9,707件、採択率は約46.1%となっており、前回までの公募よりやや高くなっています。
なお、「グローバルV字回復枠」が第5回公募から新たに登場していますが、受付件数は1件のみであり、その1件さえ採択されていません。申請要件のハードルが高く、そもそも申請要件を満たすことが難しかったためであると考えられます。
通常枠 | 大規模賃金引上枠 | 卒業枠 | 緊急事態宣言特別枠 | 最低賃金枠 | グローバルV字回復枠 | 合計 | |
①システムで受け付けた件数(応募件数) | 16,185 | 13 | 21 | 4,509
|
306 | 1 | 21,035 |
②採択件数 | 6,441 | 8 | 9 | 3,006 | 243 | 0 | 9,707 |
採択率を申請枠別に見ると、「通常枠」で約39.8%となっており前回より2%ほど増加しているものの、ほぼ同水準といえる範囲でしょう。「大規模賃金引上枠」は約61.5%、「卒業枠」で約42.9%となっていますが、これらは前回同様そもそも応募件数自体が多くありません。
また、「緊急事態宣言特別枠」の採択率は約66.7%、「最低賃金枠」の採択率は約79.4%となっており、いずれも通常枠よりも高い水準となっています。
参照元:事業再構築補助金第5回公募の結果について(事業再構築補助金事務局)
事業再構築補助金の過去5回公募の業種別の採択結果
続いて、過去3回の公募の採択結果を業種別に比較してみましょう。
第1回公募の結果
日本標準産業分類による業種別で見ると、第1回公募では、応募割合・採択割合いずれも
- E製造業
- M宿泊業、飲食サービス業
- I卸売業、小売業
の順で多く、この3業種で全体の約60%を占めています。特に、「E製造業」については、採択件数ベースで全体の30%以上を占めており、「事業再構築補助金」と申請難度の近い「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の主たる対象業種であることから、こうした補助事業への申請に慣れた事業者も多いと考えられ、公募開始までの期間に十分に応募の準備もできたものと推測されます。
第2回公募の結果
第2回公募においても、第1回公募同様、応募割合・採択割合いずれも
- E製造業
- M宿泊業、飲食サービス業
- I卸売業、小売業
の3業種で過半数以上を占めています。3業種内での序列は、第1回公募では「E製造業」が応募割合・採択割合いずれも最も多かったですが、第2回公募では「M宿泊業、飲食サービス業」が多くなっています。これは、「コロナ禍」で「不要不急の外出」自粛が長期化し、特にダメージの大きかった観光関連業種の申請が増加したためと考えられます。
第3回公募の結果
第3回公募では、応募件数ベースでは前回の第2回公募同様「M宿泊業、飲食サービス業」が最も多く、次いで「E製造業」、「I卸売業、小売業」となっていますが、採択件数ベースでは「E製造業」が「M宿泊業、飲食サービス業」を1.1ポイント上回る結果となりました。
また、「E製造業」と「M宿泊業、飲食サービス業」の2業種については、第1回公募時には応募件数ベースで合計41.2%、採択件数ベースでは合計53.5%を占めていましたが、第2回公募ではそれぞれ38.1%・47.0%、そして第3回公募では35.5%・42.5%と減少しています。
「コロナ禍」の「不要不急の外出」自粛で特にダメージの大きかった飲食業種及び観光関連業種や所得低下に消費低迷で既存商品の販売量の落ちた製造関連業種の事業者が早い段階で経営改善に取り組んだためと考えられ、その分だんだんと「D建設業」や「I卸売業、小売業」などその他の業種の比率が高まっており、公募回数を重ねるごとに業種の幅が広がっていることがわかります。
第4回公募の結果
第4回公募における応募件数は、「E製造業」が全体の17.7%を占め、最も多くなりました。次いで、「M宿泊業、飲食サービス業」の17.0%、「I卸売業、小売業」の16.3%、「D建設業」の11.7%となっています。
採択件数ベースでも「E製造業」が22.7%と最も多く、次いで「M宿泊業、飲食サービス業」の19.5%でした。
第3回公募まででは「M宿泊業、飲食サービス業」が最大であったものの、第4回公募で初めて「E製造業」が「M宿泊業、飲食サービス業」を上回っています。
第5回公募の結果
第5回公募における応募件数は、第4回に引き続き「E製造業」が全体の17.0%を占め、最も多くなっています。次いで、「I卸売業、小売業」が16.4%、「M宿泊業、飲食サービス業」の16.3%です。
採択件数ベースでも「E製造業」が22.3%と最も多くを占めています。次いで「M宿泊業、飲食サービス業」の18.4%、「I卸売業、小売業」の15.2%でした。
採択件数ベースにおける業種ごとの順位は第4回公募と同じである一方で、応募件数においてはわずかながらも、はじめて「I卸売業、小売業」が「M宿泊業、飲食サービス業」を上回る結果となりました。
事業再構築補助金の過去5回公募の都道府県別の採択結果
※第5回公募のデータです。
各都道府県の応募件数を見ると、第1回公募から第5回公募まですべて①東京②大阪③愛知④兵庫の順に多い結果となっています。
これらはいわゆる「三大都市圏」の都府県であり、これらの地域は、単純な事業者数の絶対値が多いことに加え、人口や観光流入量の多い地域でもあることから、「事業再構築補助金」で想定されている飲食業者や観光関連業者などのコロナで特に業績に影響を受ける業種の割合が高いためといえます。
また、採択率で見ると、
- 第1回公募:秋田、岡山、高知
- 第2回公募:山梨、富山、高知
- 第3回公募:富山、鳥取、岡山
- 第4回公募:高知、秋田、岩手
- 第5回公募:高知、新潟、京都
がいずれも高い値となっています。東北や中部、山陰、四国地方に属する県が名を連ねており、県内の応募件数が比較的少なく、競合がさほど多くないためと考えられます。
事業再構築補助金の過去5回公募の応募金額別の採択結果
第5回公募においては、前回までに引き続き「100~1,500万円」が全体の41%を占め、最も多くなっています。次いで、「1,501万円~3,000万円」が全体の28%、「3,001~4,500万円」の21%となっており、比較的高額の申請も少なくありません。
また、応募金額の分布を500万円単位で見ると、第5回公募では「4,000万円まで」が3,476件と最も多くなっています。次いで、最も小さい枠である「500万円まで」が3,390件、「1,000万円まで」が3,024件です。
なお、金額が大きくなるにつれて件数も減っていく中で、「6,000万円まで」と「8,000万円まで」では件数が伸びています。これは、通常枠の補助上限額が従業員数に応じてそれぞれ4,000万円、6,000万円、8,000万円とされていることの影響であるといえるでしょう。
事業再構築補助金の過去5回公募の認定支援機関別の採択結果
認定支援機関別で応募状況を分析すると、第1回公募から第5回公募まで変わらず、「地銀」などの金融機関が最も多く、次いで「税理士」「税理士法人」などの税理士関係、「商工会」・「商工会議所」の順番になっています。
応募数は次のようになっています。
- 金融機関:約8,300件
- 税理士関係:約4,000件
- 商工会・商工会議所:約2,800件
この結果を見ると、日頃から付き合いのある支援先に相談するという傾向にあるといえるでしょう。
特に、金融機関については採択された場合、設備投資資金を相談する必要があるため、それと併せて補助事業計画策定の支援を依頼するものと考えられます。
税理士関係についても「売上高等減少要件」の確認や申請時の各種添付書類の整備などでスムーズですし、「商工会」「商工会議所」は「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大による「月次支援金」をはじめとする国や県・市等の自治体の提供する給付金メニュー申請の延長から相談を依頼したパターンも多いと思われます。
事業者の気になるところは認定支援機関別の採択率ですが、こうした補助金申請の専門家である「中小企業診断士」や「民間コンサルティング会社」が高い傾向にあります。
「中小企業診断士」は次のようになっており、毎回約半数前後が採択となっています。
- 第1回公募:43.0%
- 第2回公募:47.9%
- 第3回公募:51.1%
- 第4回公募:48.9%
- 第5回公募:52.9%
「民間コンサルティング会社」は次のようになっており、半数前後の採択率です。
- 第1回公募:42.0%
- 第2回公募・第3回公募:48~49%
- 第4回公募:49.2%
- 第5回公募:50.7%
特筆すべき点は、この2機関を通した応募件数に対する申請件数(書類不備等がなく、申請要件を満たした件数)の割合が全体の平均と比較して0.5~2ポイントほど高くなっており、結果として僅かではありますが、採択率を上げることにつながっていることです。
過去5回の採択結果からみる事業再構築補助金を申請する際のポイント
事業再構築補助金の採択率を上げるためのポイントはどこにあるのでしょうか?過去5回分の採択結果を踏まえた主なポイントは、次の3点です。
特別枠での申請を検討する
過去の採択結果を見ると、通常枠以外の特別枠での採択率は、通常枠よりも高い傾向にあります。そのため、仮に特別枠での申請要件を満たすのであれば、特別枠での申請を検討するとよいでしょう。
なお、特別枠で申請した場合、仮に特別枠として採択がされなければ、通常枠での申請として再審査されることとなっています。このように、採択のチャンスが実質的に二度もらえることも、特別枠で採択をするメリットの一つです。
公募要領をよく読み込んで申請する
事業再構築補助金を申請する際には、公募要領をよく読み込んで申請しましょう。なぜなら、事業再構築補助金の公募要領には、審査ポイントや加点項目が明記されているためです。
事業再構築補助金の申請数は非常に多く、これらを補助金事務局が1件1件確認して採択か不採択かを決定しています。そのため、審査ポイントや加点項目をわかりやすく記載した申請書を提出したほうが、採択の可能性が上がりやすいといえるでしょう。
専門家に補助金申請のサポートを依頼する
事業再構築補助金の申請は、自社のみで行わず、専門家へサポートを依頼すると良いでしょう。なぜなら、補助金の申請サポートを受けている専門家は、事業再構築補助金の審査ポイントや加点項目を熟知しているためです。
これらを踏まえて申請書類を作成すべきことは先ほど解説したとおりですが、これを自社のみで行うことは容易ではありません。事業再構築補助金の申請サポートを専門家へ依頼して審査ポイントなどを踏まえた申請書類を作成してもらうことで、採択の可能性を上げることへとつながるでしょう。
まとめ
「事業再構築補助金」の第1回公募から第5回公募までの採択結果を分析してお伝えしました。
前述もしたように、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」に匹敵する申請難度の補助事業であり、「コロナ禍」で既存の事業も行いながら、自力での計画策定は大変困難です。
また、そもそも採択率の低い補助金ですから、よしんば多くの時間を割いて策定に至ったにも関わらず審査に落ちてしまったり、特に補助事業に詳しくない事業者の方の場合は、必須の記載項目や添付書類が抜けていると審査されることもなく門前払いとなってしまったりする可能性も少なくありません。
当社補助金バンクでは、そういった前向きに頑張る事業者の方の補助金申請をサポートする体制があります。補助金申請の経験豊富なプロが過去の結果を分析・データを蓄積し、採択率の高い申請書の作成をサポートいたします。
応募を希望される事業者の方は、ぜひ当社補助金バンクへお問い合わせください。
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