2020年10月26日、臨時国会の所信表明演説において、菅総理が2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)、脱炭素社会の実現を目指すと宣言しました。地方公共団体や民間事業者にとっても、温室効果ガスの抑制は必須の課題です。
しかし、優れた技術の開発や導入、促進には莫大な経費がかかります。必要となる資金に課題を感じている事業者の方も多いのではないでしょうか?
そこで、環境省が実施している補助事業を活用していきましょう。この記事では、環境省の補助金について解説していきます。
※以下は2021年3月13日時点の情報に基づいています。
環境省の補助金とは
環境省では、地球温暖化対策などを目標として再生エネルギーの利活用や脱炭素社会への移行を促進する事業者などへの補助金の交付といった事業を行っています。
なお、環境省の事業には補助事業と委託事業があります。この2つの違いについて詳しく解説していきましょう。
補助事業
補助事業は、環境省が特定の事業に対して公益性があると認め、実施のために経費の一部の補助を受けられる事業のことです。国から補助金という財政的な支援を受け、自社のビジネスを展開することができます。
補助事業には、「直接補助事業」と「間接補助事業」の2つがあります。
直接補助事業は、環境省が補助事業者に補助金の公募や交付を行う事業です。一方の間接補助事業は、環境省が非営利法人などに補助金を交付し、その法人などが補助金の公募や交付を行います。
いずれの場合も、環境省のホームページに掲載される公募情報から、申請方法や必要な書類などを確認して応募します。
なお、補助金は事業の実施報告を行った後に支払われます。後払いになるため、一旦は経費を立て替える必要があることは理解しておきましょう。
委託事業
委託事業とは、国からの委託を受け、国の業務を代わりに行う事業のことです。補助金ではなく、国から委託費の給付を受け、国の事業を行います。補助金は原則として経費の一部の支給となりますが、委託の場合は国の事業を請け負うため、100%の給付を受けることができます。
委託事業は、公募または一般競争入札(総合評価落札方式を含む)などによって、受託する事業者が決定されます。
エネルギー対策特別会計補助事業(エネ特)
環境省は、地球温暖化対策のためにエネルギー対策特別会計を活用し、事業の補助を行っています。エネルギー対策特別会計補助事業(エネ特)に採択されると、省エネや省エネ設備の導入などに対して補助を受けることができます。
エネ特の対象には補助事業と委託事業の2種類がありますが、この記事では多くの事業者にとって利用しやすい補助事業について、一部を解説していきます。
ご紹介する事業の他にも補助事業があるので、詳しくは環境省のホームページでご確認ください。
「気候変動×防災」(脱炭素でレジリエントかつ快適な地域とくらしの創造)
気候変動と防災の観点から、災害時や停電時にもエネルギー供給が可能な再生エネルギー設備の導入等によるレジリエンスの強化などの事業について、環境省の補助金を受給することができます。どのような補助事業があるのか、例を解説していきます。
地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業
例えば、「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」では、災害時の避難施設となる公共施設に再生可能エネルギー設備などを導入を支援します。平常時の温室効果ガスの排出を抑えるとともに、災害時にも円滑にエネルギー供給を行えることを目的としています。
事業形態は間接補助事業で、対象となるのは地方公共団体、民間事業者・団体等(エネルギーサービス・リース・ESCOなどを想定)です。
なお、補助率や上限は、対象となる事業の内容や地域によって異なります。公共施設(避難施設、防災拠点など)への再生エネルギー設備導入にかかる費用への補助率は、以下の表のとおりです。
補助対象 | 補助率 |
都道府県・政令市・指定都市 | 1/3 |
市区町村(太陽光発電又はCGS) | 1/2 |
市区町村(地中熱、バイオマス熱等)および離島 | 2/3 |
また、上記の再生エネルギー設備導入にかかる調査・計画策定を行う事業の費用については、補助率2分の1、上限500万円の補助を受けることができます。
脱炭素のための技術イノベーションの加速化
浮体式洋上風力発電、感染症対策と温室効果ガス排出抑制の両立など、脱炭素のための技術イノベーションを行う事業者も、環境省の補助金を受給できる場合があります。どのような補助事業があるのか、例を解説していきます。
CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業
例えば「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」では、脱炭素社会に向けて社会システム全体の最適化などによる省エネを目指す社会変革分野や、地域の特性を活かした自立・分散型の社会形成を目指す地域資源活用・循環型経済分野など、事業化の見込みが高く地球温暖化対策の強化につながる事業の補助を行っています。EVバッテリーやマイクロ水力発電の開発や実装などが活用イメージとして挙げられます。
補助の対象となるのは民間事業者・団体・大学・研究機関などです。補助事業と委託事業がありますが、補助事業の補助率は2分の1です。
グリーンファイナンスと企業の脱炭素経営の好循環の実現、社会経済システムイノベーションの創出
「グリーンファイナンス」とは、温室効果ガス排出量削減、再生可能エネルギー事業、エネルギー効率の改善など、環境に優しい事業への資金提供を指します。環境省ではグリーンファイナンスや企業の脱炭素経営などの促進も支援しています。どのような補助事業があるのか、例を解説していきましょう。
地域脱炭素投資促進ファンド事業
例えば「地域脱炭素投資促進ファンド事業」では、再生可能エネルギー発電事業などの脱炭素化プロジェクトへの出資を行います。ただし、国から補助金を得た基金設置法人からの出資となるため、元本の返済や配当の支払いが必要となります。
以下の3つが、補助対象となる事業の主な条件です。
- 二酸化炭素排出量の抑制・削減につながる
- 地域の活性化に資する
- 民間だけでは必要な資金を調達できない脱炭素社会の構築に資する事業
「気候変動×脱炭素移行ソリューション」(JCM、日本の優れた脱炭素技術によるビジネス主導の国際展開と世界への貢献)
JCMとは「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism)」のことで、優れた脱炭素技術やインフラなどの途上国への普及や促進を行い、途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、成果を分け合う制度です。脱炭素技術を用いて地球の課題解決に貢献する事業者が補助の対象となります。どのような補助事業があるのか、補助事業について解説していきましょう。
脱炭素移行促進に向けた二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業
この支援事業では、途上国の脱炭素社会の移行に向け、技術支援などを行うJCMプロジェクトを推進します。補助対象は民間事業者・団体などで、補助率は事業形態によって異なります。
事業形態は以下の3つに分かれます。
- 二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業(プロジェクト補助)
- コ・イノベーションによる脱炭素技術創出・普及事業
- 脱炭素に向けた水素製造・利活用第三国連携事業
1つめの「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業」では、途上国の脱炭素社会への移行を実現を目標に、高品質で優れた脱炭素技術などを導入するプロジェクトに支援が行われます。間接補助事業であり、補助率は2分の1以内となっています。
2つめの「コ・イノベーションによる脱炭素技術創出・普及事業」では、日本の優れた脱炭素製品・サービスを導入する国に合わせてリノベーションし、エネルギーマネージメントシステムや遠隔操作などのデジタル化やIoT化を促進します。間接補助事業であり、補助率は3分の2以内となっています。
3つめの「脱炭素に向けた水素製造・利活用第三国連携事業」では、途上国の脱炭素社会への移行などの次元のため、再生エネルギー資源が豊富な第三国と協力し、再生エネルギー由来の水素の製造、島しょ国などへの輸送や利活用などを促進します。間接補助事業であり、補助率は2分の1以内となっています。
補助事業の探し方
環境省の補助金は環境省のホームページに掲載されるので、その中から使える補助事業を探して申し込みを行います。
例えば、エネ特について詳しくは環境省のページで確認することができます。
ただし、環境省の補助金は種類が豊富であり、かつ専門用語が多いことなどから、調べる過程で挫折しそうになる方も大勢いらっしゃいます。補助金の知識が豊富な中小企業診断士などに相談した方が、効率よく自社に合った補助金を見つけられることが多いので、ぜひ専門家に相談してみましょう。
まとめ
環境省では、地球温暖化対策のために脱炭素社会への移行や再生エネルギーの利用などを促進する事業者などに対する補助事業を行っています。優れた技術の開発や導入、促進には莫大な費用がかかるので、補助金を活用して事業を進めていくのがおすすめです。
種類が豊富かつ専門用語が多く、申請するのが難しい補助金ですので、中小企業診断士などの専門家に相談することをおすすめします。「補助金バンク」には環境省の補助金に強い専門家も多数登録しているので、補助金バンクを使って身近で頼れるプロフェッショナルを探してみましょう。