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サポイン事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)に採択されると、最大9,750万円の補助を受けられるなどのメリットがあるため、研究開発に取り組みたいのに資金面で悩んでいる中小企業等はぜひ申請を考えたいところです。
この記事では、どのような申請者が対象となるのかなど、サポイン事業の基礎知識を解説していきます。補助金以外にも、社外のネットワーク構築ができたり人材育成が期待できたりとメリットが大きい事業ですので、ぜひ申請をご検討ください。
※以下は2021年2月17日時点の情報に基づきます。
サポイン事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)とは
戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)とは、中小企業・小規模事業者が大学、公設試等の研究機関などと連携して行う、製品化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発等および販路開拓への取組に対して、経済産業省が支援する事業のことです。日本のものづくりの「競争力強化」と「新たな事業の創出」を目指す事業です。
サポイン事業に採択されると、最大3年間、合計で9,750万円の補助金を受給できるなど大きなメリットがあります。
サポイン事業の対象となる研究開発等は、「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に記載された内容に関するものです。申請を検討する前に、自社の事業が当てはまるのかホームページを見て確認しておきましょう。
サポイン事業の対象者
サポイン事業は、1つの企業が単独で申請することはできません。中小企業・小規模事業者を中心とした共同体を構成する必要があります。共同体の構成員は以下のとおりで、事業管理機関、研究等実施機関(同一者が担うことも可)を必ず含む2者以上で構成します。
- 事業管理機関(補助事業者)
- 研究等実施機関(間接補助事業者)
- 主たる研究等実施機関
- 従たる研究等実施機関
- アドバイザー
それぞれにどのような事業者が当てはまるか、詳しくはサポイン事業の公募要領をご確認ください。不明点があれば、お気軽に中小企業診断士などの専門家に相談しましょう。
また、サポイン事業の対象となるためには、中小企業者が「主たる研究等実施機関」として参画することが要件となります。アドバイザーを除く共同体の構成員は、日本国内において事業を営み、本社を置き、かつ、研究開発等を行うことが必要です。
サポイン事業の補助金
サポイン事業の補助事業期間は2年度または3年度で、期間によって補助金額の上限が異なります。単年度あたりの上限は4,500万円ですが、補助事業期間が2年度の場合は上限7500万円、3年度の場合は9,750万円となります。
補助率は3分の2以内です。大学・公設試等が事業管理機関として共同体に参加している場合、大学・公設試等に対する補助は定額となります。補助上限が高く、補助率も3分の2と高い補助金ですので、採択されると資金面の心配が無くなり、研究に集中できる環境を整えることができます。
なお、サポイン事業に採択されても、予算の都合等により申請書に記載された補助金額がそのまま認められないことがあります。その場合、補助金額が減額されることがあります。
対象の経費
サポイン事業の補助対象となる経費には、以下のようなものがあります。
- 補助事業の遂行に必要な機械装置の導入などにかかる物品費
- 補助事業に直接従事した研究者などの人件費
- 原材料等の再加工、設計、分析、検査などの外注費
他にも対象となる経費にはさまざまな種類があります。詳しくは公募要領で確認しましょう。ただし、補助対象となる経費は、補助事業の対象として明確に区分できるものであり、経費の必要性や金額の妥当性を証拠書類によって確認できるものに限ります。
サポイン事業の申請対象事業
サポイン事業の申請対象となる事業は、主に以下の3つの要件を満たしている必要があります。
- 中小企業要件
- 本事業の対象となる研究開発計画
- 特定ものづくり基盤技術高度化指針との整合性
どのような要件なのか解説していきますので、自社を含む共同体と照らし合わせながら確認していきましょう。もし不明点があれば、「補助金バンク」を使って中小企業診断士などの専門家に相談してみましょう。
中小企業要件
サポイン事業における「中小企業要件」とは、サポイン事業から補助金を受けた際、中小企業者が受け取る補助金額が、共同体全体の補助金額の3分の2以上という要件です。申請対象の事業となるには、必ずこの要件を満たす必要があります。
中小企業者以外の従たる研究等実施機関が購入した設備備品費であっても、中小企業者が3分の2以上使用する設備備品費(購入・改造等及びリース・レンタル)については、中小企業者が受け取る補助金額に含めることができます。
2年度目以降は、既に終了した年度の補助金額との合算で「3分の2以上」であれば、中小企業要件を満たすことができます。
②本事業の対象となる研究開発計画
サポイン事業における研究開発計画に関する要件は、以下のとおりです。
- 研究開発を伴わない販路開拓のみの事業等は、本事業の対象にはならない。また、研究開発計画のうち本質的な部分(研究開発要素がある業務)を共同体外へ委託、外注することはできない
- 製品化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組までが補助の対象となるが、事業化までの道筋が明確に描けているものが申請の対象
- 研究開発プロジェクトの事業化のみならず、それに伴って、主たる研究等実施機関(中小企業者)自身の成長を目標として策定できる事業
中小企業者を中心に共同体が主体となって研究開発を行うことや、事業化までの道筋が描けている研究開発であること、研究機関自身が成長できることなどが必須となります。事業化に向けた取り組みや事業を通じた研究機関の付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の向上も求められる事業です。
③特定ものづくり基盤技術高度化指針との整合性
サポイン事業は、ものづくり高度化法第3条に定める「特定ものづくり基盤技術高度化指針」に記載された内容に関する研究開発等の事業が支援対象となります。デザイン、情報処理、精密加工など分野ごとに詳しい指針が定められているので、「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」から自社に該当するものを確認しましょう。
サポイン事業に採択された事例も掲載されているので、参考にしながら申請を進めていくと良いでしょう。
サポイン事業の申請手続き
サポイン事業の申請を行う際、事業管理機関は概ね以下の手順で申請手続きを進めていきます。
- 府省共通研究管理システム(e-Rad)における所属研究機関、研究者の登録
- 本事業の申請書類の作成
- 府省共通研究管理システム(e-Rad)による本事業の申請
申請書の提出は府省共通研究管理システム(e-Rad)のみで受付されており、窓口への持参やFAX、電子メールなどでの提出はできません。
府省共通研究管理システム(e-Rad)に登録する必要がありますが、登録までに日数を要する場合があるため、少なくとも2週間以上の余裕を持って登録手続きを行ってください。e-Radのホームページにアクセスし、登録の申請を行います。
「登録・手続き▼」のタブから「研究機関向け」の「新規登録の方法」をクリックし、サイトの指示に従って研究機関の登録を申請していきます。サイトから登録様式をダウンロードし、必要な書類を文部科学省のe-Rad運用担当に郵送します。
サポイン事業のメリット
サポイン事業に採択されると、補助金を受給できる以外にもメリットがあります。補助金以外のメリットについても理解を深め、申請する際の判断材料にしていただければと思います。
- ネットワークの構築や強化
- 人材育成
- 補助金以外の支援メニュー
ネットワークの構築や強化
サポイン事業は単独でなく共同体での申請となるため、大学や公設試験機関などと新たなネットワークを構築したり、これまで付き合いのある企業とのさらなる連携を期待したりすることができます。
他の団体と連携して研究開発を行うことで、サポイン事業にとどまらず、新たな研究開発につなげることもできます。サポイン事業を通じて構築したネットワークを基に、次の研究開発にも発展させることが可能です。
人材育成
サポイン事業を通じて、人材の成長も期待することができます。
サポイン事業では共同体を作って研究開発を進めていくため、社内にとどまらず社外とのコミュニケーションも必要になります。社内外とのコミュニケーションや調整を通じ、研究開発に携わるメンバーの成長が期待できます。
また、サポイン事業そのものが社員のモチベーションの向上につながり、成長できる側面もあります。新たな研究開発に取り組み、課題を解決していく中で社員が成長し、会社の成長にもつながります。
補助金以外の支援メニュー
サポイン事業に採択されると、中小企業基盤整備機構から支援を受けることができます。研究開発の実施や事業化の実現のため、例えば、以下のような支援メニューが設けられています。
- 研究開発の進め方や事業化に向けてのアドバイス
- 川下大手企業とのマッチング
- サポインで開発した技術等を対象とした展示会出展
- 専門家派遣事業
- 他機関の補助金や支援策等の活用
以上のようなサポートも受けられるので、サポイン事業への応募を前向きに考えていただければと思います。
サポイン事業に申請する際の注意点
サポイン事業は予算の上限が決まっている補助金であり、倍率も高いので、申請しても必ず採択されるわけではありません。そのため、中小企業診断士などの専門家と相談しながら、採択されるためのポイントを押さえた申請書づくりをしていきましょう。
採択状況
サポイン事業はどれくらい倍率が高いのかを確認していきましょう。直近の採択状況は年度別に以下の表のとおりとなっています。
年度 | 採択件数 | 申請件数 | 採択倍率 |
2019年度 | 137件 | 298件 | 約2.2倍 |
2018年度 | 126件 | 329件 | 約2.6倍 |
2017年度 | 108件 | 297件 | 約2.8倍 |
いずれの年度も採択倍率が2倍を超えており、半数以上の申請者が不採択となっていることがわかります。倍率が高い補助金であることはご覧のとおりですので、採択される確率を高めるためにも、中小企業診断士などの専門家にサポートしてもらいましょう。
「補助金バンク」にはサポイン事業について詳しい専門家が多数登録しています。補助金バンクを使って、身近で頼れる中小企業診断士などの専門家を探してみましょう。
採択されるためのポイント
サポイン事業に採択されるために、申請書を作る前に必ず公募要領の「審査基準」のページを確認しましょう。ここでは審査基準の一部を抜粋します。
I.技術面からの審査項目
- 技術の新規性、独創性及び革新性
- 研究開発目標値の妥当性
- 目標達成のための課題と解決方法及びその具体的実施内容
- 研究開発の波及効果
II.事業化面からの審査項目
- 目標を達成するための経営的基礎力
- 事業化計画の妥当性
- 事業化による経済効果
III.政策面からの審査項目
- 産業政策との整合性
- 中小企業政策との整合性
技術面のみならず、事業化面や政策面からも審査が行われます。
研究開発を専門にしている中小企業だと、「研究のことはいくらでも書けるけど、事業化や政策のことは分からない」と感じる方も多いと思います。また、反対に「事業化のイメージはあるけど、他の項目をどう書いたら良いか分からない」と悩んでしまう方も多いでしょう。
分からないことがあれば、中小企業診断士など補助金について詳しい専門家に相談するのがおすすめです。企業の現状や将来像を踏まえ、書類上でどのようにアピールすれば採択される確率がアップするのが、アドバイスをもらいましょう。
まとめ
サポイン事業について解説してきました。共同体で申請を行い、最大9750万円と高額な補助を受けられる補助金です。
新たな研究開発に取り組む中小企業等はぜひサポイン事業の申請を検討したいところですが、採択倍率の高さや申請書でのアピール方法がネックになると思います。採択される確率を高めるためにも、中小企業診断士などの専門家に相談し、サポートしてもらいましょう。
「補助金バンク」には、サポイン事業に強い専門家が多数登録しています。身近で頼れる専門家を見つけ、まずは相談してみましょう。