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助成金を受けるには?把握したい共通要件・申請方法のコツ

助成金を受けるには

よく耳にする「助成金」と「補助金」は、管轄による違いで区分されます。助成金は厚労省管轄の労働関係に関するものと、経済産業省管轄の研究開発関係のものがあります。一方で、補助金は中小企業庁や東京都など地方自治体が管轄し、その目的は事業(主に政策的事業の拡大や設備投資の支援)に関するものです。

助成金の申請をする前に確認すること

助成金は、事業主が所定の要件を満たしていれば、基本的にいつでも申請が可能で助成金を受給できるようになっています。 助成金を申請する前に主なポイントを確認しましょう。

  • 助成金の種類
  • 申請書類の入手先と提出方法
  • 添付書類(必要な場合)

助成金の種類

さまざまな目的の助成金が用意されていますので、どの助成金を申請できるか厚生労働省やハローワークのホームページなどで確認しましょう。

たとえば、休業手当を支払う計画があれば「雇用調整助成金」を、労働者の正社員化など処遇改善を行う予定があれば「キャリアアップ助成金」を検討できます。

申請書類の入手先と提出方法

申請書類は厚生労働省または所轄のハローワークのホームページからダウンロード可能です。所定の申請書類を作成し、都道府県労働局またはハローワークに提出します。

添付書類(必要な場合)

助成金によっては、複数の添付書類を必要とします。たとえば、「雇用調整助成金」で休業手当部分の助成金を申請する場合、就業規則や休業協定書などの書類を申請前までに整備する必要があります。キャリアアップ助成金では所定の申請書のほかに「キャリアアップ管理者」を選任する必要があります。

また、助成金の性質は、労働者の処遇改善や環境整備にかかった費用の一部を補填するものです。助成金を事前に受給し事業主の資金繰りを助けることはできません。

助成金を受けるための共通要件

厚生労働省が所轄する助成金の主な目的は以下のとおりです。これら助成金により事業者が労働者の待遇や処遇を積極的に改善していくことにあります。

  • 新たに雇用を増やす
  • 従業員を教育して生産力を向上させる
  • 労働環境の維持改善をする

そのため、助成金の多くは、資金力や経営体力が乏しいためこれらの目的を実現しにくい「中小事業者」を対象にしていることが多く、大企業では該当する助成金の一部受給額に減額されています。助成金の種類にもよりますが、中小企業者の定義はおおむね以下が目安になります。

参照元:「雇用調整助成金」中小企業者の範囲

共通要件①:雇用保険適用事業所である

助成金は事業主が支払う「雇用保険料」が財源となっているため、雇用保険適用事業所の事業主でなければ助成金を受給できません。

共通要件②:申請内容の書類が整っている

助成金の申請が適切かどうか、書類に不備はないかなどの審査がありますので、申請書およびその添付書類に漏れや間違いがないようにしましょう。

共通要件③:助成金には上限額がある

雇用の維持や機会の創出という政策的な目的である助成金は、それぞれの助成金の目的毎に上限額と補助率が定められています。

助成金を受けるための申請方法

助成金の支給を受けるためには該当する助成金ごとに申請書などを提出する必要があります。 申請書は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。直接ハローワークで入手することも可能です。助成金ごとの申請方法、概要は次のとおりです。

雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)の申請方法

雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)の目的は、新型コロナの影響で事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、「従業員の雇用維持を図るため」に雇用調整(休業を含む)を実施する事業主に対して、「休業手当などの一部を助成」するものです。

事業主が労働者を出向させることで雇用を維持した場合や、学生アルバイトなど雇用保険被保険者以外の方に対する休業手当なども対象になります。

助成金の支給額

助成金の基本的な支給限度額は次のように計算されます。助成金は、従来の雇用調整助成金(1年間で100日分、3年間で150日分)とは別に給付されます。

助成金は、「(1) 休業手当に相当する金額の算定」と「(2) 助成率の選択」を乗じて算出します。まず、(1)で助成金の計算対象を求め、次に(2)で企業規模などに応じた助成率を選択します。

(1) 休業手当に相当する金額の算定

下記1.から3.のいずれかを選択します。

  1. 前年度1年間における雇用保険料の算定基礎となる賃金総額を、前年度1年間における1ヶ月平均の雇用保険被保険者数及び年間所定労働日数で割った額に、休業手当の支払い率をかけた額
  2. 判定基礎期間の初日が属する年度または前年度の任意の月に提出した給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の支給額を人員及び月間所定労働日数で割った額に、休業手当の支払い率をかけた額
  3. 従業員20人以下の場合、実際に支払う休業手当の総額

(2) 助成率の選択

企業規模および解雇があるかどうかに応じた助成率を選択します。

  • 通常の助成率
    • 中小企業:4/5
    • 大企業:2/3(※4/5)
  • 解雇などを伴わず雇用維持を行う場合
    • 中小企業:10/10
    • 大企業:3/4(※10/10)

※大企業でも以下の要件に該当していれば、( )内の割合に補助率がアップします。

  • 緊急事態宣言対象区域の知事の要請を受けて営業時間の短縮等を行った飲食店等の大企業
  • 売上等が前年又は前々年同期と比べ3ヶ月の平均値で30%以上減少した全国の大企業

助成金受給までの手続きの概要

  1. 休業計画を作成し、労使協定の合意を得る
  2. 休業を実施し、休業手当を労働者に支給する
  3. 助成金を申請する(各種の申請書類作成と添付書類を用意する)
    ※雇用調整助成金はオンラインでも申請できます。
  4. 労働局(ハローワーク)の審査を経て助成金の支給が決定される(支給されるまで申請からおおむね1ヶ月間が目安です)

助成金受給までの手続きの概要

参照元:厚生労働省 雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)

助成金の申請書類などの準備

申請はいつでもできますが、申請期限は支給対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内です(例:8月1日~8月31日休業の申請期限は10月31日)。

申請書を作成する

  1. 様式特第1号「休業実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」を記載します(主に「はい・いいえ」を選択する。
  2. 様式特第2号(1)に、会社の概況を記載する。
  3. 様式特第2号(2)に、休業した実績を記載する。
  4. 様式特第3号「支給要件確認申立書」に、必要事項を記載します(主に「はい・いいえ」を選択する)
  5. 「雇用調整助成金 支給申請書」に必要事項を記載する。

添付書類を用意する

  • 売上の減少が確認できる書類(たとえば、会計帳簿、客数のデータ、客室の稼働率など)。
  • 労働者を休業させた日や時間がわかる書類(たとえば、タイムカードやシフト表など)。
  • 休業手当や賃金の額がわかる書類(たとえば、給与明細の写し、賃金台帳など)。
  • 助成金の振込先を確認できる書類(たとえば、通帳またはキャッシュカードのコピー)
  • 役員等がいる場合は役員名簿

 

キャリアアップ助成金の申請方法

キャリアアップ助成金の目的は、アルバイト、パート、派遣社員など「非正規雇用の従業員」のキャリアアップを促進するため、正社員化や、給与などの処遇を改善することです。

助成金の対象は7コース

これらのコースから、目的に合った助成金を選びます。

  • 正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 健康診断制度コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 諸手当制度共通化コース
  • 選択的適用拡大導入処遇改善コース
  • 短時間労働者労働時間延長でコース

主なコースの概要(正社員化コースの場合)

受給要件の概要は次のとおりです。

  • 事業主が雇用する、6ヶ月以上勤務する有期契約労働者や派遣社員がいること
  • キャリアアップ管理者」を配置し、所轄の労働局長から「キャリアアップ計画」の承認を受けること
  • 有期労働者を正社員として雇用し、雇用後に6ヶ月以上の賃金を支払うこと
  • 6月目の賃金支給月から2ヶ月以内に申請書類等を準備して管轄の労働局に申請をすること

「正社員化コース」では以下の区分毎に助成金が用意されています。支給申請上限人数は1年度に20人までです。

  • 有期契約から正規社員とした場合、ひとりあたり標準57万円
  • 有期契約から無期契約とした場合、ひとりあたり標準28万5千円
  • 無期契約から正規社員とした場合、ひとりあたり標準28万5千円

 

人材開発支援助成金の申請方法

人材開発支援助成金の目的は、労働者の職業能力開発を効果的に促進することです。
職業訓練などを段階的・体系的に実施する事業主に対して、「訓練に要した経費と訓練期間中に支払った賃金の一部」を助成金として支給しています。一部のコースは大企業でも適用可能です。

対象とする中小企業事業主の定義はつぎのとおりです。

「主たる事業」ごとに、「A 資本金の額または出資の総額」または「B 企業全体で常時雇用する労働者の数」において、AまたはBのいずれかの基準に該当すること。

ただし、資本金を持たない事業主は「B 常時雇用する労働者の数」によって判断します。

主たる事業 A 資本金の額または出資の総額 B 企業全体で常時雇用する従業員数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

出典:厚生労働省 人材開発支援助成金のご案内

主なコース

建設労働者向けや障害者向けなど7つのコースがありますが、ここでは主な2コースを下記の通りご紹介します。

特定訓練コース

若年者に対する訓練や労働生産性の向上のための訓練など、効果が高い10時間以上の特定の訓練を行った場合に支給されます。OJTとOFF-JTを組み合わせた場合も対象になります。

一般訓練コース

特定訓練コース以外で、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための訓練を20時間以上行った場合に支給されます。OFF-JTに限られます。

助成金の基本的な支給限度額

経費助成の支給限度額は、訓練時間・訓練コースに応じて、1人1コース当たり7万円~50万円です。助成対象となる訓練コース数は、1人当たり1年度で3コースまでです。なお、1事業所が1年度に受給できる助成額は、特定訓練コースを含む場合は1,000万円、一般訓練コースの見の場合は500万円が限度です。

申請方法

助成金受給までの手続き概要は次の通りです。

  • 事業者にて1コースあたりの所定時間を満たす「訓練計画」を策定する
  • 「職業能力開発推進者」を選任する
  • 訓練実施の1ヶ月前(実習併用職業訓練の場合は2ヶ月前)までにハローワークに計画書を提出する
  • 訓練を実施する
  • 訓練終了後2ヶ月以内に、申請書類などをハローワークに提出する
  • 支給審査を経て助成金を受給する

助成金を受けるためのコツ

  • 可能な限り多くの情報を集める
  • 申請が受理されやすい申請書にする
  • 客観的かつ具体的な計画書にする
  • 添付資料には注意を払う
  • 何度でも申請をする

助成金を受けるためにはこまめに情報を取得すること、助成金を申請する際には漏れなく間違いがないようにしっかりと準備することが大切です。押さえておきたいポイントを5つに分けて紹介しましょう。

可能な限り多くの情報を集める

助成金の多くは政策的な意味合いから、適用を受けることができる事業者であれば誰でも申請することが可能です。そのため、どのような助成金を受給できる可能性があるのか、厚生労働省のホームページや、「助成金」 などのキーワードでインターネット検索を積極的に進めましょう。

気になる助成金が見つかったら、 できれば専門家である社会保険労務士のアドバイスを求め、助成金を受給できる可能性や受給を受けるために必要な書類がどのようなものなのかを確認してください。

2020年度では新型コロナウイルス感染症の影響で雇用情勢が非常に厳しくなっており、助成金の支給限度額の引き上げや、助成金を受給するための要件の緩和などがありますので、できれば月に1回くらいの頻度で情報収集に努めましょう。

申請が受理されやすい申請書にする

厚生労働省によれば、雇用調整助成金は11月時点で191万件を超える規模になっています。書類を受理し審査する側の行政は限られた人員数で対応しているため、1回の申請で受理されるよう、申請書類の不備がないこと、添付書類の添付漏れを防止するために、書類の申請前に複数回チェックしましょう。

これらの助成金の申請書はホームページからWordファイルなどをダウンロードできます。Wordファイルの様式や行間などはできる限り変更せずに記載することが大切です。

客観的かつ具体的な計画書にする

助成金を受給するためにはあらかじめ定められた様式や内容に沿った計画書を作成する必要があります。

たとえば、小規模事業主以外が休業手当に関する雇用調整助成金の支給を受ける場合には、休業計画を策定し、休業協定書を作成する必要があります。休業計画の策定とは、休業とする予定期間、労働者の範囲(社員、アルバイトなど)および対象人数、労働者に支給する休業手当の算定基準を明確にします。

休業協定書の作成とは、休業計画を具体的に書面化し、事業主と労働者の代表がそれぞれ署名・押印をした文書です。この文書が助成金申請時の添付書類になりますので、所轄のハローワークから文書のひな形をダウンロードしましょう。

添付資料には注意を払う

助成金の申請にあたり、提出資料に不備があった場合は、通常はその不備を正すことで申請が受理されるようになります。

たとえば、雇用調整助成金では、どれくらいの給料を支払ったかという添付資料を見るための「賃金台帳」の提出が必要です。このような資料が見づらい手書きであったり、書いた人にしかわからないような内容であったりすると、書類を審査する側で内容を確認するための手間と時間をかける必要があります。

就業規則、労働者名簿、勤務日程表(シフト表)などが必要な場合、個人事業主や小規模零細事業ではこれら書類の整備が十分でない場合があります。

また、休業にあたっては誰をどれくらい休ませるべきか、休ませた後の復職が速やかにできるかなど検討すべきことは申請書以外の部分でもたくさんあります。このような労務関連について、できれば社会保険労務士など専門家の助言を得て対応する方が無難でしょう。

何度でも申請をする

助成金は受給要件を満たしていれば受給限度まで何度でも申請できる場合があります。

たとえば、雇用調整助成金について、従来の制度(原則として支給限度日数は1年間で100日間分、3年間で150日間分まで)とは別に、緊急対応期間中(2020年4月1日から2021年年4月30日まで)には、原則の支給限度日数とは別にさらに助成金の支給を受けることができます。

まとめ

助成金をもらうことにためらう必要はありません。厚生労働省は助成金により雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上を期待しているからです。積極的に助成金をいただき、労働者の就業環境や臨時休業時の給与補償に充てて、事業基盤を維持向上することにも努めましょう。

助成金の申請方法や申請手続きについて、個人事業主や中小企業では総務や人事関連の経験者が不在になっていることもあり、事業主自身で慣れない書類の準備に思わぬ時間を要する場合があります。

書類の申請書に不備があればその訂正が必要ですし、不足資料をどのように用意すればいいか悩むこともあるでしょう。専門家である社会保険労務士に協力を求めれば、よりスムーズな助成金の申請と受給ができるようになります。

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この記事を書いた人
安田 史朗
この記事を書いた人
安田 史朗
社会保険労務士法人イージーネット 副代表 社会保険労務士 中小企業診断士
事業者には区別しづらい「助成金」と「補助金」の両方に精通しており、多くの中小企業に助成金・補助金の提案~支援を行っている。補助金の審査員経験もあり、士業向け「補助金コンサルタント」養成講座の講師として後進の育成にも力を注ぐ。

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