目次
日本の商店街は、東京都内を含め、かつてのような活気を失っているところも少なくありません。商店街には、経営者の高齢化による後継問題をはじめとして、集客力が高い・話題性のある店舗や業種が少ない、店舗等の老朽化、大型店との競合などの問題が指摘されています。
そこで用意されたのが、「若手・女性リーダー応援プログラム」です。概要や助成内容、申請の流れについて詳しく解説していきます。
若手・女性リーダー応援プログラムの概要
プログラム名からもわかるように、女性または若手男性が対象となった助成金です。実店舗を持っていない方が、東京都内の商店街で実店舗を新規開業する際に、必要な経費の一部が助成されます。これにより、商店街におけるリーダーとなり得る人材に対して開業を支援し、都内商店街の活性化を図ります。
対象となる人(応募資格)
若手が対象とされていますが、ここでは令和4年3月31日時点で39歳以下の男性を指しています。女性については、年齢を問わず申請することができます。「創業予定の個人」もしくは「個人事業主」が対象とされており、法人や法人代表者は対象となりません。法人の場合で商店街進出を考えている場合は、「商店街起業・承継支援事業」の利用を検討してください。
この他、次の①〜③のすべてを満たす必要があります。
- ①申請予定店舗が「都内商店街」であること
- ②開業が各回交付決定日以降であること(第1回:令和3年8月1日、第2回:令和 4年1月1日)
- ③申請時点で実店舗を持っていないこと
助成対象となる業種
都内商店街において開業する業種は、公社が定める業種に該当しなければなりません。
日本標準分類の「大分類」の、卸売業・小売業、不動産・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉業、サービス業(他に分類されないもの)の一部が対象です。
助成対象となる業種は、大分類だけでは不十分であり、日本標準分類の「小分類」で該当する必要があります。
なお、開業までに申請業種の実施に必要な許認可等も取得しておく必要があります。
若手・女性リーダー応援プログラムの申請要件
応募資格と開業しようとする業種が助成対象であることを確認したら、もう少し詳しく申請要件を確認しましょう。経営能力に関する要件、助成対象の事業、その他の要件に分けて解説していきます。
経営能力に関する要件
まず、次の①〜③のいずれかにより、経営に関する知識を有していることが要件の一つです。
- ①1年程度の経営実務経験を有していることを職務経歴書等で証明できる
- ②経営等に関する資格を有していることを証明書等で証明できる。
- ③申請日から過去3年以内に経営知識の習得研修を受講している、または開業までに受講できる
③の習得研修は、たとえば、TOKYO起業塾、女性起業ゼミ、 商店街起業促進サポート事業、創業塾・創業ゼミナールなど、経営者となる上で必要となるスキルを習得する研修です。研修内容が会計・経理等の財務、 IT スキル、人事管理、人材育成、マーケティング、コスト管理、販促活動となっているものです。
次に、次の①〜③のいずれかにより、申請する事業に関する実務知識を有していることが要件の一つです。
- ①開業する業種と同業他社で1年程度就業したことを職務経歴書等で証明できること
- ②申請する事業に必要な資格を資格証等で証明できること
- ③申請日から過去3年以内に開業する業種の店舗運営に係る実務研修を受講している、または開業までに受講できること
③の研修とは、たとえば商品知識、申請する業種のスキルアップ講習などであり、資格とは、たとえば食品衛生責任者、ソムリエ、美容師、宅地建物取引士などの資格が該当します。
助成対象の事業
開業予定者の方が、都内商店街で新規に実店舗を開設する事業が対象なり、実店舗を持っていない場合に限り対象となります。つまり、実店舗を持たずにネットショップ等の運営をされている方が、新たに店舗を開設する場合は対象となります。
この助成金は、商店街の活性化が目的でした。そのため、申請時点で当該商店街組織の代表者等から出店に関する承諾を受けており、開業等を行うまでに商店街に加入し、助成事業終了後も加入し続ける必要があります。商店街組織の代表者の承諾を受けた証として、申請までに出店予定の商店街を決め、承諾書を取っておきましょう。
また、大企業が実質的な経営等に参画していないことが要件とされており、大企業のフランチャイズ加盟業者などは対象となりません。
その他の要件
その他の要件として、主なものに次の①〜⑤があります。
- ①暴力団関係者でないこと
- ②諸税を滞納していないこと
- ③「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」と「商店街起業・承継支援事業」の2事業に併願申請し、2事業とも採択基準に達した場合は、「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」での採択となることに同意していること
- ④同一テーマ・内容で公社・国・都道府県・区市町村などから助成を受けていないこと
- ⑤過去に公社・国・都道府県・区市町村等から助成を受け、不正等の事故を起こしていないこと
若手・女性リーダー応援プログラムの助成内容
若手・女性リーダー応援プログラムでは、都内の商店街で開業をする際に必要な「事業所整備費」「実務研修受講費」および「店舗賃借料」の一部が助成されます。
経費区分 | 助成率 | 助成限度額 |
事業所整備費(交付決定日から開業日の翌々月末までの、最長1年間) | 助成対象と認められる費用の3/4以内 | 400万円 |
実務研修受講費(交付決定日から開業日の翌々月末までの、最長1年間) | 助成対象と認められる費用の2/3以内 | 6万円 |
店舗賃借料(交付決定日から2年間) | 助成対象と認められる費用の3/4以内 | 1年目:180万円(月15万円)
2年目:144万円(月12万円) |
事業所整備費
店舗事業所整備費は、大きく「店舗新装 ・改装工事費 」「設備・備品購入費」「宣伝・広告費」の3つに分けることができます。
「店舗新装 ・改装工事費 」とは、商店街で開業等するために行う店舗の新装または改装に要する工事費用のことです。事業所整備費に係る経費は、助成対象期間内(交付決定日から開業日の翌々月末まで)に契約・納品又は受講・支払の完了をしなければなりません。
次に「設備・備品購入費」とは、商店街で開業等するために行う店舗の設備・備品(1点で税込10万円以上)の購入に要する費用のことです。
最後の「宣伝・広告費」は、商店街の開業等する店舗の広報のために、宣伝や広告を外部の事業者等へ委託するときに要する費用です。上限は150万円とされています。「宣伝・広告費」はさらに、次の①〜③に分類することができます。
- ①店舗の周知・PRを図るためのホームページ制作費(ホームページ制作費の助成対象経費の上限は 50万円とされています。)
- ②新規オープンに関するチラシの作成費
- ③新聞、雑誌等紙媒体への広告掲載費
これらに該当する経費であれば、助成金の対象となります。ここからは、それぞれの項目で助成の対象外となる経費を中心に解説していきます。
「店舗新装 ・改装工事費 」の対象外となる経費の代表例は、次のア〜オです。
- ア:交付決定日より遡って3ヶ月以降に契約、着工し支払った工事代金の内、交付決定日より前に支払った着手金、中間金等の代金
- イ:店舗の購入費、建物躯体の解体撤去費用(内装等の解体撤去は除く)
- ウ:原材料を調達して自らが工事を行った場合の経費
- エ:業務の全てを第三者に再委託された工事費用
- オ:工事に係るデザイン費・設計費
注意事項もあります。交付決定日より前に契約、着工した工事は、交付決定日以降に支払う工事代金の税込残額が総額の30%以上であること、かつ申請書に記載した工事業者による工事に限り対象となります。
また、住居兼店舗については、店舗専有部分に係るもののみが対象となります。「設備・備品購入費」の対象外となる経費の代表例は、次のア〜キです。
- ア:中古品購入費
- イ:車両の購入費
- ウ:汎用性が高く、使用目的が本助成事業の遂行に必要なものと特定できないもの(例:パソコン、カメラ等容易に持ち運びができ、他の目的に使用できるもの)
- エ:税込 10 万円未満の設備・備品
- オ:設備・備品等に係るデザイン費・設計費
- カ:設備のリース料・レンタル料
- キ:消耗品の購入費(例:食器、ハンガー、文房具、工具等)
「設備・備品購入費」にも注意事項があります。住居兼店舗は、店舗専有部分で必要となる設備・備品のみが対象です。ダイニングテーブル、イス等を組み合わせたものや、レジシステム等の複数のもので構成される場合は、そのセットの合計金額を「1点あたりの購入単価」と考えます。
「宣伝・広告費」の対象外となる経費の代表例は、次のア〜ウです。
(1) 店舗の周知・PR を図るためのホームページ制作費
- ア:デザイン費等の制作費
- イ:ホームページの維持管理費(サーバー費用含む)
- ウ:店舗の周知を図る目的以外のもの(ネット販売や予約システムの構築費等)
(2) 新規オープンに関するチラシの作成費
- ア:ダイレクトメール、名刺、商品タグ、ノベルティ、メニュー表、パンフレット等
- イ:DVD、CD 等紙媒体以外で配布するもの
- ウ:開業にかかる実績報告時点での未使用残存品
- エ:店舗開業後に発注したチラシ
(3) 新聞、雑誌等紙媒体への広告掲載費
- ア:代理店経由の契約
- イ:全国紙
- ウ:一般消費者向けではない業界専門誌
- エ:Web サイトへの広告掲載費
実務研修受講費
商店街で開業等するにあたり、店舗運営管理実務を習得することもあるでしょう。経営者またはこれに準ずる経営幹部となる者が研修を受講する費用は、助成の対象とされています。
実務研修受講等は、助成対象期間内(交付決定日から開業日の翌々月末まで)に契約・納品又は受講・支払の完了をしなければなりません。開業する業種と直接関係のある研修を、開業までに修了する必要があります。
なお、従業員の研修受講費や合否がある研修・受講に伴う受験料、受講料は対象外となります。また、実務研修受講費のみの申請はできないことが注意事項として挙げられます。
店舗賃借料
助成事業の遂行に必要な店舗等を、新たに借りる場合の賃借料が対象です。対象外となる経費の代表例は、次のア〜ウです。
- ア:賃貸借契約に係る敷金、礼金、仲介手数料、保証金、管理費、共益費等
- イ:火災保険料、地震保険料等
- ウ:申請者本人又は三親等以内の親族が所有する不動産等に係る店舗賃借料(本人、親族が経営する法人が所有する場合も含む)
店舗賃借料にも、注意事項があります。
まず、店舗賃借料のみの申請はできません。次に、住居兼店舗については、店舗専有部分に係る賃借料のみが対象です。そして、助成対象期間内に発生・支払した部分のみが助成対象となります。
ただし、助成対象期間外に支払いをしても、賃貸借契約締結時等に前払いする必要がある場合や、賃貸借契約に基づき前月に前払いする場合の助成対象期間内の賃料は助成対象です。
若手・女性リーダー応援プログラムの助成事業申請の流れ
若手・女性リーダー応援プログラムは、商店街での家賃補助を含め、大きな金額を助成してくれます。ただし、採択され、その助成金を活用してビジネスを始めようとすれば、申請した商店街で長期間にわたって経営をすることになります。
まずはビジネスモデルをしっかりと考え、客層などを含め商店街で経営をすることにメリットがあるかしっかり把握しましょう。
申請方法
若手・女性リーダー応援プログラムの助成事業申請は、まず申請エントリー期間内に公社ホームページからエントリーをすることから始まります。この期限内にエントリーがない場合は、申請を受け付けてもらえません。
申請エントリー後、公社より5営業日以内にメールにて案内があります。この案内に沿って、申請書類の提出に進みましょう。
申請書類提出には、提出期間が定められています。公社が指定する期日の17:00までに公社に必着で郵送してください。申請書の提出は、簡易書留、レターパック、宅急便等、記録が残る方法での郵送で行います。持参、FAX、電子メール等による提出はできないことには注意が必要です。
申請の手順
第二回の申請の流れは、次の①〜⑦のとおりです。
- ①申請エントリー
- ②申請書類提出
- ③一次審査(資格・書類審査)
- ④二次審査(面接審査)
- 審査をもとに助成対象者決定(交付決定)されます。
- ⑤事前支援を受ける
- ⑥事業実施
- ⑦実績報告
完了検査が行われ、助成金が交付されます。
申請スケジュール
申請のスケジュールも公表されていますので、確認しておきましょう。特に、①申請エントリーと②申請書類提出の日程が重要です。なお、令和3年度の第一回の申請については、すでに終了しています。
①申請エントリー | ②申請書類提出 | ③一次審査 | ④二次審査 | 助成対象者決定 | |
第一回 | 4/7(水)~4/27(火) | 4/28(水)~5/14(金) | 6月上旬 | 7月上旬 | 8月1日(予定) |
第二回 | 9/15(水)~10/4(月) | 10/5(火)~10/15(金) | 11月上旬 | 12月上旬 | 令和4年1月1日(予定) |
申請書類
申請書類には、「申請者共通の書類」と「申請者区分毎に必要な書類」があります。
まず、申請者共通の書類(該当しない書類については提出不要)として、①〜⑨が求められます。
- ①申請前確認リスト
- ②商店街出店に関する承諾書
- ③申請書
- ④月次資金繰り表
- ⑤申請費用の根拠資料
- たとえば宣伝・広告費であれば、見積書やカタログ、ホームページ料金表など、価格の根拠がわかるものが必要です。また実務研修受講費であれば、研修内容、受講期間、研修費等がわかるものが必要です。
- ⑥開業する物件の詳細が分かる資料
- 次のア〜ウが必須です。
- ア:商店街地図に店舗をマーキングしたもの、もしくはWEB等で取得した地図に商店街エリアがわかるようにした上でマーキングしたもの
- イ:物件の内外装写真
- ウ:開業予定の店舗レイアウト図(サンプル資料2)
- 次のア〜ウが必須です。
- ⑦経歴書
- ⑧経営研修に関する書類
- ⑨実務研修に関する書類
次に、申請者区分毎に必要な書類一覧です。個人事業者または創業予定者に分かれます。
個人事業者の申請書類には、以下(1)〜(4)があります。
- (1) 開業届
- (2) 住民票
- (3) 納税証明書
- (4) 確定申告書(直近2期分)
創業予定者の申請書類には、次の(1)〜(3)があります。
- (1) 収入に関する書類
- (2) 住民票
- (3) 納税証明書
若手・女性リーダー応援プログラムの審査
採択されるためには、要件を満たしていることはもちろん、実現性や事業効果など助成金の趣旨に合った強みが求められます。公募要領には、若手・女性リーダー応援プログラムの審査の方法と審査の視点が掲載されています。採択されるための大切なポイントですので、必ずチェックしましょう。
審査の方法
申請審査方法は申請書類に基づき、一次審査(資格・書類審査)が行われます。一次審査を通過した申請者に対して、二次審査が行われ、助成対象者が決定されます。
二次審査は面接審査です。必要により、現地調査が行われることがあります。
審査結果は、書面にて通知されます。なお、審査の結果、助成金申請額と助成金交付予定額が異なる場合があります。
審査の視点
書類・面接審査での審査は、次の①〜⑥の視点で行われます。
- ①実現性:事業の実現可能性、継続性
- ②妥当性:資金繰り、収支計画、スケジュール
- ③事業効果:商店街活性化への貢献度、波及効果
- ④経営者の適格性:経営者としての資質・意欲、事業の経験・知識、人脈
- ⑤独創性:事業のオリジナリティ、創意工夫
- ⑥商店街におけるリーダーシップ:商店街におけるリーダーとしての資質・意欲、今後の展望
採択倍率の推移
令和2年度の若手・女性リーダー応援プログラム助成事業は、2回実施されています。申請者数が65件に対して、採択数が13件であり、採択倍率は5.0倍でした。
令和3年度は、2回のうち1回目が終了しています。申請者数が36件に対して、採択数が8件であり、採択倍率は4.5倍でした。採択率は低めですが、採択倍率にそれほど変化はないようです。
まとめ
若手・女性リーダー応援プログラムは、実店舗を持っていない女性や若手の方が、東京都内の商店街で実店舗を新規開業する際に、必要となる経費の一部を助成してくれるものです。対象となる業種や、経営に関する能力などのハードルもあり、公募要件をじっくり読んで内容を把握しなければならない助成金だといえます。
この難しさは、採択倍率の低さにも現れていますし、特にこれから開業される方々ですので、なおさら難しく感じられることでしょう。そんなときには、助成金の専門家に相談すると良いでしょう。
助成金の申請サポートをご検討の際には、補助金バンクをご活用ください。補助金バンクはマッチングプラットフォームであり、補助金バンクに在籍している多数の専門家とマッチングすることができます。これから長い付き合いとなる専門家と出会う場所として活用してみてください。