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【2022】小規模事業者持続化補助金の「賃上げ枠」とは?要件や申請の流れを解説

小規模事業者持続化補助金 「賃上げ枠」とは?

2022年における小規模事業者持続化補助金の公募要領が公開されています。小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者にとって非常に使い勝手の良い補助金であるため、要件を満たせそうな場合にはぜひ獲得に向けチャレンジすると良いでしょう。

今回は、小規模事業者持続化補助金の特別枠である「賃上げ枠」に焦点をあてて解説します。

小規模事業者持続化補助金とは

小規模事業者持続化補助金とは、要件を満たした取り組みについて、経費の一部を国が補填してくれる補助金制度の一つです。採択されて補助金の交付を受けた場合、原則として補助金を返還する必要はありません。

補助金にはそれぞれ異なる目的がありますが、小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等が行う販路開拓などの取り組みにかかる経費の一部を補することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としています。

小規模事業者持続化補助金自体は数年前から存在していますが、毎年少しずつ内容や特別枠がマイナーチェンジされていますので、情報収集をする際には最新の情報かどうかに注意して確認するようにしましょう。

2022年における小規模事業者持続化補助金の6つの枠

2022年における小規模事業者持続化補助金では、6つの枠が設けられています。基本となる通常枠と、5つの特別枠です。ここでは、それぞれの枠の概要について解説しましょう。

通常枠

通常枠は、小規模事業者持続化補助金のもっとも基本となる枠です。多くの事業者は、この枠で申請をすることになるでしょう。通常枠の補助金額は50万円、補助率は3分の2です。

賃金引上げ枠(賃上げ枠)

賃金引上げ枠(賃上げ枠)とは、補助事業実施期間に事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とした事業者に対して、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。

すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上を達成している場合であっても、現在支給している事業場内最低賃金より+30円以上とすることで要件を満たすことができます。

この枠が設けられている目的は、最低賃金の引き上げが行われた中、それに加えてさらなる賃上げを行い、従業員に成長の果実を分配する意欲的な小規模事業者に対し政策支援をすることです。

なお、賃上げ枠の要件を満たす事業者のうち、業績が赤字の事業者については、補助上限引き上げに追加して補助率が4分の3へと引き上がるとともに、政策加点による優先採択が実施されることとなっています。

卒業枠

卒業枠とは、補助事業実施期間中に常時使用する従業員を増やし、小規模事業者として定義する従業員の枠を超え事業規模を拡大する事業者に対して、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。さらなる事業規模拡大に意欲的な小規模事業者に対して、政策支援をするために設けられています。

なお、小規模事業者として定義する従業員の枠を超える従業員数とは、業種に応じてそれぞれ次のとおりです。

  • 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):6人以上
  • サービス業のうち宿泊業・娯楽業:21人以上
  • 製造業その他:21人以上

後継者支援枠

後継者支援枠とは、中小企業庁が主催する「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者を対象に政策支援をするため、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。

アトツギ甲子園とは、「アトツギ」と称される全国各地の中小企業の後継者や後継者候補が新規事業のアイデアを競うピッチイベントです。

創業枠

創業枠とは、創業したばかりの事業者を重点的に政策支援するために設けられている特別枠です。次の2つの要件をいずれも満たす事業者を対象に、補助上限額が200万円へと引き上げられています。

  1. 産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を、公募締切時から起算して過去3か年の間に受けていること
  2. 過去3箇年の間に開業した事業者であること

インボイス枠

インボイス枠とは、免税事業者が適格請求書発行事業者への転換に伴う事業環境変化に対応することに対して政策支援をするために設けられている特別枠です。

2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間に、一度でも免税事業者であった事業者または免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書(インボイス)発行事業者に登録した事業者を対象に、補助上限額が100万円へと引き上げられています。

適格請求書(インボイス)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。

従来、請求書の発行主体を問わず、消費税の仕入税額控除の対象とすることができていました。これが改正され、令和5年10月1日以降は、適格請求書(インボイス)でなければ仕入税額控除の対象とすることができなくなります。

そのため、仕入れ代金をすべて仕入税額控除の対象としたい事業者としては、インボイスを発行できない事業者からの仕入れをできるだけ避けることとなるでしょう。つまり、これまでどおり取引を続けてもらうためには、インボイスを発行することができる事業者となっておく必要があるということです。

インボイスを発行するためには登録申請が必要となり、インボイス発行事業者として登録を受けるためには消費税の課税事業者とならなければなりません。このような環境変化に対応する小規模事業者を支援する目的で、インボイス枠が設けられています。

小規模事業者持続化補助金の「補助対象者」の要件

小規模事業者持続化補助金を受けるには、補助対象者としての要件を満たさなければなりません。補助事業者としての要件は、次のとおりです。

小規模事業者であること

小規模事業者持続化補助金を受けるには、その名称どおり「小規模事業者」でなければなりません。小規模事業者とは、常時使用する従業員の人数が、次の人数以下である事業者を指します。

  • 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):5人以下
  • サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下
  • 製造業その他:20人以下

また、個人事業主の他、株式会社や合同会社、合名会社、税理士法人などの営利法人は要件を満たすものの、次のような事業者は小規模事業者持続化補助金の対象とはなりません。

  • 医師、歯科医師、助産師、医療法人
  • 統出荷による収入のみである個人農業者(個人の林業・水産業者についても同様)
  • 協同組合等の組合(企業組合・協業組合を除く)
  • 一般社団法人、公益社団法人、一般財団法人、公益財団法人
  • 宗教法人
  • 学校法人
  • 農事組合法人
  • 社会福祉法人
  • 申請時点で開業していない創業予定者
  • 任意団体 等

大会社の100%子会社でないこと

その法人単体で見れば小規模事業者に該当する場合であっても、資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有されているのであれば、小規模事業者持続化補助金を受けることはできません。

このような法人は、実質的に見れば小規模事業者とは言えないためです。

課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと

確定している直近過去3年分の各年(または各事業年度)の課税所得の年平均額が15億円を超えている事業者は、小規模事業者持続化補助金を受けることができません。

これほどの所得がある事業者を支援することは、小規模事業者持続化補助金の本来の目的から外れてしまいかねないためです。

過去一定期間内に採択を受けた事業者でないこと

下記2つの事業において、本補助金の受付締切日の前10ヶ月以内に採択を受けて補助事業を実施した者である場合には、小規模事業者持続化補助金を受けることはできません。

なお、この「10ヶ月」は、補助金の採択日から起算するものとされています。

  • 令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>
  • 令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>

同じ事業者にばかり、短期間で何度も補助金が交付されることのないよう、このような制限が設けられています。

小規模事業者持続化補助金の「補助事業」の基本要件

小規模事業者持続化補助金は、申請をした「補助事業」に対して交付がなされます。ここで挙げる4つは基本の要件であり、原則として通常枠の他、賃上げ枠を含むすべての枠への申請で満たすべき要件です。

補助事業についての基本要件は、次のとおりです。

販路開拓等または業務効率化のための取り組みであること

小規模事業者持続化補助金の補助事業は、次のいずれかの取り組みに該当する必要があります。

  • 策定した経営計画に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取り組み
  • 販路開拓等の取組とあわせて行う、業務効率化(生産性向上)のための取り組み

商工会や商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること

小規模事業者持続化補助金の補助事業は、商工会や商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であることが要件の一つとされています。具体的には、次のようなことが必要です。

  • 地域の商工会や商工会議所へ「経営計画書」と「補助事業計画書」を提出して事業支援計画書の発行を受けること
  • 補助事業実施における助言などの支援を受けながら事業を実施すること
  • 一定の事業に該当しないこと

次の事業に一つでも該当する事業は、その事業を小規模事業者持続化補助金の対象事業とはなりません。

  • 同一内容の事業について、国から助成金や補助金などを受けている事業
  • 本事業の終了後、おおむね1年以内に売上につながることが見込まれない事業(たとえば、機械を導入して試作品開発を行うのみであり、本事業の取り組みが直接販売の見込みにつながらない事業や、そもそも売上につながることが想定されていない事業)
  • 射幸心をそそるおそれがある事業または公の秩序もしくは善良の風俗を害することとなるおそれがある事業など、公的な支援を行うことが適当でないと認められるもの(たとえば、マージャン店、パチンコ店、ゲームセンター店、性風俗関連特殊営業など)

行おうとしている事業がこれらに該当するかどうかの判断が難しい場合には、あらかじめ補助金事務局などへ問い合わせて確認しておくと良いでしょう。

共同申請なら全ての小規模事業者等が関与する事業であること

小規模事業者持続化補助金は、複数の事業者で共同申請をすることができます。ただし、共同申請の場合には、連携するすべての小規模事業者等が関与する事業であることが必要です。

ただし、賃上げ枠の場合には、そもそも小規模事業者持続化補助金の共同申請を行うことはできません。

小規模事業者持続化補助金を賃上げ枠で申請する場合の追加要件

賃上げ枠で小規模事業者持続化補助金を申請する場合には、先ほど解説した共通要件の他、次の要件も満たす必要があります。

事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とすること

賃上げ枠の追加要件は、補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とすることです。

ただし、すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である場合には、現在(申請時点において直近1ヶ月)において、現在支給している事業場内最低賃金より+30円以上とすることで、要件を満たすことができます。

なお、補助事業の終了時点でこの要件を満たせていない場合は、たとえ交付決定後であっても、補助金の交付は行われないことには注意が必要です。

小規模事業者持続化補助金(賃上げ枠)の申請から受給の流れ

小規模事業者持続化補助金を賃上げ枠で申請する場合、申請から受給までの流れは次のとおりです。

補助金については「採択さえされたらすぐにお金が振り込まれる」などの誤解も少なくありません。誤解をしたまま進めてしまえば、途中で計画がズレてしまうリスクがありますので、あらかじめ補助金が公布されるまでの全体の流れをよく確認しておきましょう。

申請書類を作成する

はじめに、申請書類を作成します。作成は自分で行うこともできますが、小規模事業者持続化補助金に詳しい専門家にサポートを依頼することも一つの手です。

専門家のサポートを受けることで、時間や労力の短縮につながるとともに、不備などで採択の可能性が下がってしまうリスクを下げることが可能となります。

商工会または商工会議所から事業支援計画書の交付を受ける

小規模事業者持続化補助金では、地域の商工会または商工会議所の支援を受けることが必須要件となっています。具体的には、「経営計画書」と「補助事業計画書」の写しなどを地域の商工会または商工会議所窓口に提出のうえ、「事業支援計画書」の作成と交付を受けなければなりません。

この事業支援計画書の発行申請には、補助金自体の申請締切とは別で期限(補助金申請締切のおおむね1週間前)が設けられています。そのため、申請期限直前になってから商工会や商工会議所へ連絡するのではなく、期限に余裕をもって発行申請をするようにしましょう。

補助金を申請する

申請書類が整い申請の準備ができたら、いよいよ補助金の申請をします。

小規模事業者持続化補助金の申請方法は、郵送もしくは電子申請です。事務局などへ直接持ち込んでの申請はできないことには注意してください。

電子申請の場合には、デジタル庁が管轄するGビズIDプライムアカウントが必要となります。

小規模事業者持続化補助金は郵送申請の選択肢もあるものの、最近では電子申請のみでしか申請できない補助金が少なくありません。電子申請を利用する補助金のほとんどで、Gビズ ID プライムアカウントが必要となるため、まだ取得していない場合にはこれを機にアカウントを取得しておくと良いでしょう。

郵送の場合の送付先は、それぞれ次のとおりです。

  • 商工会地区の場合:都道府県ごとの、都道府県商工会連合会地方事務局
  • 商工会議所地区の場合:全国同一の小規模事業者持続化補助金事務局

事業を行っている地区によって送付先が異なりますので、送付先を誤らないようあらかじめ確認しておいてください。

採択か不採択かが通知される

公募期間の終了後、応募事業者全員に対して、採択または不採択の結果が通知されます。事務局からの連絡を見落とさないよう、注意しましょう。

採択案件については、補助事業者名や代表者名、補助事業名、事業概要、住所、業種、補助金交付申請額などが公表されることがあります。

補助事業を実施する

採択がされたら、まずは申請をした補助事業を実施します。この段階ではまだ補助金は交付されていませんので、自己資金もしくは一時的な借り入れ(つなぎ融資)など、他の方法で調達した資金で補助事業を実施しなければなりません。

補助事業実施の実績報告をする

補助事業を実施したら、事務局に対して事業の実績報告を行います。

報告に際しては、補助対象としたい経費の領収証など、所定の証拠書類が必要となります。書類を紛失したり発行の省略をしたりしてしまうことのないように、報告の際に必要となる書類についてもあらかじめ確認しておきましょう。

なお、賃上げ枠の場合、補助事業終了時点において事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上であることなどの要件を満たせていない場合には、たとえ採択がされていても補助金の交付を受けることはできません。

補助金が交付される

実績報告に問題がないと判断されれば、ようやく補助金が交付されます。小規模事業者持続化補助金は、このとおり「後払い」となりますので、この点をよく理解しておいてください。

まとめ

小規模事業者持続化補助金は対象となる経費が幅広く、多くの小規模事業者にとって使い勝手の良い補助金です。また、賃上げ枠など特別枠では補助上限額も引き上げられていますので、要件を満たせそうな場合には、ぜひチャレンジしてみると良いでしょう。

ただし、本業の業務を行いながら自社のみで補助金申請の準備をすることは、容易ではありません。慣れていなければ、申請の準備や申請書類の作成などに多大な手間と時間を要するものです。そのため、補助金の申請は、専門家のサポートを受けて行うことをおすすめします。

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この記事を書いた人
野竿 健悟
この記事を書いた人
野竿 健悟
株式会社トライズコンサルティング 代表取締役 中小企業診断士
補助金に精通しており、自ら申請をご支援し、高採択率の実績を持つ。元システムエンジニアであり、知見を活かしたシステム開発の補助金申請の支援実績多数。

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