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2022年度補正予算案が公表されました。中でも、補助金は2022年度分の予算規模や方針がわかることもあり、すでに話題となっています。
今回は、小規模事業者持続化補助金について、2022年度補正予算案で判明した情報をまとめてお伝えします。
小規模事業者持続化補助金など2022年度補正予算案が公表
補正予算案は、補助金を活用したい企業がぜひ知っておくべき情報の一つといえます。なぜなら、ここに来年度(2022年度)の補助金の方針や予算額が掲載されるためです。
補助金は、申請したからといって必ず採択されるものではありません。申請後、補助金の趣旨に沿ったものであるかどうかの審査がなされ、採択される必要があります。
こうした点からも、その年度においてそれぞれの補助金が重視するポイントを知ったうえで申請する必要があるのです。
令和3年12月に中小企業庁から新たに公表された「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業令和3年度補正予算案の概要」によれば、中小企業生産性革命推進事業に対する令和3年度補正予算案額は、2,001億円とされました。
中小企業生産性革命推進事業の中には、次の4つの補助金が含まれています。
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
- 小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)
- サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
- 事業承継・引継ぎ支援事業(事業承継・引継ぎ補助金)
2022年度補正予算案では、これらの4つの補助金に対して、合計2,001億円の予算が付されているということです。
2022年(令和4年)の小規模事業者持続化補助金の概要
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が直面する働き方改革などの制度変更などに対応するため経営計画を作成し、それらに基づいて行う販路開拓の取り組みにかかる経費の一部を補助する補助金です。
具体的な内容は、次のようになっています。
対象者
小規模事業者持続化補助金の対象者は、小規模事業者です。小規模事業者とは、業種ごとに常時使用する従業員数が次の人数以下である事業者を指します。
- 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):5人以下
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下
- 製造業その他:20人以下
また、申請時点で開業していない創業予定者の他、一般社団法人や公益社団法人、医師・歯科医師・助産師、医療法人、学校法人、宗教法人などは対象となりません。
対象経費
小規模事業者持続化補助金の対象経費になり得るものとしては、次のものが挙げられます。
- 機械装置等費:新商品を陳列するための棚の購入など
- 広報費:新たな販促用チラシの作成や看板作成、設置費用など
- ウェブサイト関連費:ウェブサイトや ECサイト等の構築など(補助対象経費の4分の1が上限)
- 展示会等出展費:国内外の展示会、見本市への出展、商談会への参加など
- 旅費
- 開発費:新商品の開発など
- 資料購入費:新商品の開発にあたって必要な図書の購入など
- 雑役務費:新たな販促用チラシのポスティングなど
- 借料:国内外での商品PRイベント会場の借り上げなど
- 専門家謝金:ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導や助言など
- 専門家旅費
- 委託費:新商品開発に伴う成分分析の依頼など
- 外注費:小売店の店舗改装にともなう陳列レイアウト改良や飲食店の店舗改修など(ただし、不動産の購入や取得に該当するものは不可)
- 設備処分費(補助対象経費総額の2分の1が上限)
ただし、これらのうち次の1から3のすべての要件を満たすもののみが補助対象となります。
- 使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 交付決定日以降に発生し、対象期間中に支払が完了した経費
- 証拠資料などによって支払金額が確認できる経費
- 補助金額
2022年度補正予算分の小規模事業者持続化補助金の補助金額と補助率は、次のとおりです。
- 通常枠:50万円、補助率は3分の2
- 卒業枠:200万円
- 賃金引き上げ枠:200万円、補助率は3分の2(赤字事業者は3/4)
- 後継者支援枠:200万円、補助率は3分の2
- 創業枠:200万円、補助率は3分の2
- インボイス枠(インボイス発行事業者への転換):100万円、補助率は3分の2
小規模事業者持続化補助金の2022年度補正予算の概要
2022年度補正予算案において、小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画を策定して取り組む販路開拓等を補助する制度であると位置づけられています。具体的には、次の3点の方針が示されました。
- 業況が厳しい中で賃上げ等に取り組む小規模事業者向けに特別枠を設け、補助率や上限額を引上げる
- 後継ぎ候補者が実施する新たな取組や創業を支援する特別枠を設け、上限額を引上げる
- インボイス発行事業者に転換する場合の環境変化への対応を支援する特別枠を設け、上限額を引上げる
なお、インボイスとは、売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるもので、2023年10月から導入される予定となっています。
免税事業者はインボイスを発行することができず取り引きの機会が減少してしまうおそれがあるため、多くの事業者が消費税の課税事業者への転換を迫られることとなるでしょう。これには、ソフトウェアの導入や税理士などの専門家への相談などの対応が必要となることから、これを支援するための特別枠が設けられる予定です。
2022年度(令和4年度)の小規模事業者持続化補助金の特別枠
2022年度(令和4年度)における小規模事業者持続化補助金では、通常枠の他、5つの特別枠が設けられています。ここでは、それぞれの枠の概要を解説します。
通常枠以外では、追加要件が課される代わりに補助上限額が引き上げられていますので、特別枠の要件を満たせそうな場合には、特別枠での申請にチャレンジしてみると良いでしょう。
通常枠
通常枠は、小規模事業者持続化補助金のもっとも基本となる枠です。
単に「小規模事業者持続化補助金」といった際にはこの枠を指すことが多く、もっとも多くの事業者が申請することとなる枠であるといえます。
賃金引上げ枠
賃金引上げ枠とは、補助事業実施期間に事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上(すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である場合は、現在支給している事業場内最低賃金より+30円以上)とした事業者に対して、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。
最低賃金の引き上げが行われた中、それに加えてさらなる賃上げを行い、従業員に成長の果実を分配する意欲的な小規模事業者に対し、政策支援をするために設けられています。
ただし、補助事業の終了時点において要件を満たしていない場合には交付決定後であっても補助金の交付はなされませんので、注意が必要です。
卒業枠
卒業枠とは、補助事業実施期間中に常時使用する従業員を増やし、小規模事業者として定義する従業員の枠を超え事業規模を拡大する事業者に対して、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。
さらなる事業規模拡大に意欲的な小規模事業者を、政策的に支援をするために設けられています。「小規模事業者として定義する従業員を超えた数」とは、業種ごとに次のとおりです。
- 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):6人以上
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業:21人以上
- 製造業その他:21人以上
後継者支援枠
後継者支援枠とは、将来的に事業承継を行う予定があり、新たな取組を行う後継者候補として「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者を対象に、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。
アトツギ甲子園とは、全国各地の中小企業の後継者・後継者候補(アトツギ)が新規事業アイデアを競うピッチイベントであり、中小企業庁が主催しています。
創業枠
創業枠とは、次の要件をいずれも満たす事業者を対象に、補助上限額を200万円へと引き
上げる特別枠です。
- 過去3箇年の間に開業したこと
- 産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受けたこと
創業した事業者を重点的に政策支援するために設けられています。
インボイス枠
インボイス枠とは、2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった事業者または免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書発行事業者に登録した事業者に対して、補助上限額を100万円へ引き上げる特別枠です。
インボイス(適格請求書)とは売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額等などを伝えるために発行するものであり、令和5年(2023年)10月1日からはインボイスの要件を満たさない従来の請求書では、消費税計算の際に仕入税額控除の対象とされません。
そのため、仕入対価を仕入税額控除の対象としたい事業者は、インボイスを発行できない免税事業者との取り引きを敬遠する可能性があります。
従来どおりの取り引きを続けるためには、売上高などの基準では免税事業者となることができる事業者であっても、インボイスを発行するために課税事業者へ転換せざるを得ないでしょう。
インボイス枠は、このような状況下で免税事業者が適格請求書発行事業者への転換に伴う事業環境変化に対応することに対し、政策支援をするために設けられています。
小規模事業者持続化補助金の申請から受給までの流れ
他の補助金と同様に、小規模事業者持続化補助金は申請して採択がされたからといってすぐに補助金が振り込まれるわけではありません。2022年度においても申請から受給までの流れはこれまでと同様と思われるので、申請前に全体の流れを知っておきましょう。
申請する
経営計画書や補助事業計画書を作成し、地域の商工会議所で確認を受けます。
無事に確認が終わり支援機関確認書の作成の交付が受けられたら、補助金事務局である日本商工会議所へ申請書類一式を郵送またはJグランツから電子で申請します。
なお、社外の代理人のみで地域の商工会議所への相談や支援機関確認書の交付依頼などを行うことは好ましくないとされています。
採択・不採択が決定される
申請後、日本商工会議所から採択または不採択の通知がなされます。小規模事業者持続化補助金のうち一般型の採択率は回を追うごとに低下しており、当初は90%近くあったものの、2021年2月5日に締め切られた第4回締切分では44.2%、2021年6月4日に締め切られた第5回締切分では53.9%となっています。
回によってはかなり狭き門となっていますので、申請をしても採択がなされない可能性を踏まえ、補助金ありきで無理な計画を立てることのないようにしてください。
申請をした取り組みを実施する
申請が無事に採択されたからといって、すぐに補助金が振り込まれるわけではありません。先に、申請をした内容に沿って補助事業を実施する必要があります。
手持ちの資金が不足する場合には、金融機関から一時的な借り入れ(「つなぎ融資」といいます)も検討する必要があるでしょう。借り入れを申し込む予定の金融機関に、あらかじめ打診しておくと安心です。
また、取り組みにも期限が設けられていますので、申請の際に取り組み期限についても確認しておきましょう。
取り組み実施の報告書を提出する
事業の実施が完了したら、所定の期間内に実施の報告書を提出します。実施の報告には、支出を証明する書類など必要な資料を添付しなければなりません。
あらかじめ必要な資料を確認し、紛失したり相手方から受領しそびれてしまったりすることのないように注意しましょう。
補助金が交付される
提出された報告を日本商工会議所が確認し問題ないと判断されれば、ようやく補助金を受領することができます。
小規模事業者持続化補助金の申請スケジュール
2022年度における小規模事業者持続化補助金の公募スケジュールは次のとおりです。
- 第8回締切:2022年6月3日(金)(事業支援計画書発行の受付締切:原則2022年5月27日(金))
- 第9回:2022年9月中旬(事業支援計画書発行の受付締切:原則2022年9月上旬)
- 第10回:2022年12月上旬 (事業支援計画書発行の受付締切:原則2022年12月上旬)
- 第11回:2023年2」月下旬(事業支援計画書発行の受付締切:原則2023年2月中旬)
申請を希望する公募回の締切に合わせて、計画的に準備を進めるようにしましょう。
まとめ
小規模事業者持続化補助金は対象となる経費の幅が広いため、小規模事業者にとって活用しやすい補助金の一つです。これまで補助金の申請をしたことがないという事業者様も、申請をすれば経費の一部が補填される可能性がありますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
とはいえ、補助金の申請には多くの資料が必要であり、自社のみで完結させることは容易ではありません。特に、小規模事業者持続化補助金の対象となる事業者では人手が限られていることも多く、補助金の申請に時間を割くことが難しい場合が少なくないでしょう。
補助金の申請でお困りの際には、ぜひ当社「補助金バンク」までご相談ください。「補助金バンク」には十分な知見を備えた専門家が多く登録されており、充実したサービスを提供しています。
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